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認知症と診断された39歳の丹野さんを描いた映画『オレンジ・ランプ』。6月30日から各地で公開です。

以下は、丹野さんを良く知る佐々木淳Dr.のFacebook転載です。

有吉佐和子の『恍惚の人』から50年。
固定化された認知症に対するイメージが180度転換する。
そう確信させる素晴らしい作品だった。

オレンジランプ。

丹野智文さんとご家族の体験を、それぞれ一人称で描き切った、これまでにない切り口の映画だ。

徘徊や不潔行為、性的逸脱行為など、いわゆる「異常行動」がクローズアップされ、認知症は人格が崩壊する恐ろしい病気、という偏見が一般市民の間に定着した。医学教育においてさえ、2000年代まで「痴呆」「ボケ」という表現が普通に用いられ、「認知症は病識がないのが特徴」、異常行動に対しては「行動を制限する」「閉じ込める」などの対応が提案されていた。

認知症に対する「常識」は徐々に塗り替えられている。

本人が不安を感じて、一人で物忘れ外来を受診するようなケースも増えてきた。病識がないどころか、記憶障害・見当識障害という強い不安の中で生活をしていること、本人にとっての不安や恐怖からの逃避や防御が異常行動として周囲から見えていること、などが徐々に理解されるようになってきた。

一番困っているのは、当事者本人。

当たり前のことなのに、残念ながら、メディアにおいては、認知症に対するイメージはいまだにステレオタイプだ。そして、その主役は、認知症の人の「異常行動」に振り回される不幸な家族や社会の負担だ。

そうじゃない。
本人が困らない社会であれば、家族も社会も困らない。

確かに記憶力の低下は不便だが、これだけ進化した社会だ。いまではスマホを脳みその外部メモリとして使用することもできる。

あとは、インターフェイス=認知症の人と関わる私たちの態度だけの問題だ。

丹野さんが語り続けてきた体験が、映像作品として多くの人に届くことで、きっと日本の社会の認知症に対する理解は5割増し、おもいやりの総量は8割増しに、そしていずれ認知症になるすべての人にとって快適で安心で住みやすい社会に大きく近づくのではないか。

そんなことを思った。

山国さん。
本当に素晴らしい仕事です。
そして丹野さんの勇気ある一歩を改めて称えたいと思います。

本当にありがとうございました。
一般公開は6月30日。
ぜひみなさん劇場に足をお運びください!

https://www.orange-lamp.com/

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