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ウイリアム・フォークナー “A Rose for Emily”という短編小説 感想

「アメリカ文学概論」課題ガイド(7月27日正午提出期限)

次回は20世紀アメリカ文学を代表する作家のウイリアム・フォークナー(William

Faulkner)の短編小説を読み、散文(小説)におけるモダニズム的特徴を確認したいと思います。

7月20日の講義ではモダニズム詩をいくつか取り上げ、モダニズムの基本的な要素を視覚芸術との比較において確認しました。それぞれが特徴的な言葉やイメージの使い方をしており、内容よりはむしろ形式の多様性がモダニズム詩の重要な特徴であることを講義の説明では強調しました。

今回の課題は “A Rose for Emily”という短編小説です。フォークナーの代表的作品の一つであり、アメリカ短編小説作品の中でも評価が高い作品です。

大まかなあらすじは下記のとおりです。

----------------大まかなあらすじ--------------

話はエミリーの死(葬式)から始まります。彼女は10年間、町の誰とも交流が無かったのですが、彼女の葬式には町の多くの人々が好奇心を持って参列します。

【話は時系列に進むのではなく、エミリーの過去やその後の顛末をフラッシュバックしながら進行します】

名家の娘としてエミリーは30歳を過ぎても独身で厳格な父と生活をしていましたが、父親の死後、父親を埋葬することを拒み続けます。町の人々も同情心からエミリーを異常だとは思いませんでした。

ある夏、ホーマー・バロンという北部出身の男が町の舗装工事の為にやってきます。エミリーはホーマーと付き合いはじめ、周りの人々も二人が結婚するだろうと思っていました。

しかしながら、ホーマーは町を去り、その後、エミリーはネズミ駆除のために薬局から薬(ヒ素)を購入します。人々はエミリーが悲しみから自殺するのではないかと不安に思います。

その後、エミリーの家から悪臭が漂い始めるなど、少し不穏な状況が見え隠れしますが、そのうちにその件も一旦は解決し、人々はまた日常にもどります。エミリーはその後も独身を通し、髪の毛も灰色に変わり、老いていきます。

【話はエミリーの死後に戻ります】

エミリーの葬式の後、人々はエミリーの家の中を詮索し始めます。家の中にはまだ誰も入ったことが無い部屋があり、その部屋をこじ開けるとその中には・・・・。

----------------大まかなあらすじ 以上-------------

雰囲気は暗く、ホラー小説を思わせるような展開が待っています。ただし、本作品は必ずしも「恐怖」をテーマとしているのではなく、様々な読み方が可能になっています。今回の読み方として、1)本作品のモダニズム的特徴を探してみてください。モダニズム的特徴が探しにくいと思う人はこれまでの作品(例えばEdgar Allan Poeのホラー小説は比較しやすいかもしれません)との比較をしながら、2)作品の感想を述べてみてください。

上記1)と2)の両方についてコメントする必要はありません。

2)作品の感想

この作品の何が面白いのかよくわからない。言ってみれば、厳格な父に育てられた、男を知らない女(エミリー)が、不良っぽい男にたぶらかされ、そして、毒殺し、遺体とともに何十年も生活していたという話なのである。似たような物語を映画が漫画で見た記憶がある。元ネタは、本作品だとは思われる。男に虐げられた女の逆襲だけでなく、女性の気持ちを踏みにじると恐ろしいよという当時の男性社会に対する警告という意味合いがあったのだろうか。現代では、異性同士のたぶらかしあいの割合がどこかにデータで証明されているのだろうが、例えば、離婚率も4割に迫る勢いであり、純粋なというかロマンティック、単純な恋心で成立し続けている恋愛がどれほどあるのだろうか。という側面からも、一昔前の男女間の痴情のもつれがこの作品に対する感想である。

以上

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