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①戦略ポジショニング論 他

競争戦略論  メモ

論述式
⓵戦略ポジショニング論
⓶情報的資源論
⓷資源ベース論
⓸能力ベース論
⓹能力ベース論の批判的研究
⓺ダイナミック能力論と両利き戦略論
⓻戦略ストーリー論
7問中4問選択

①   戦略ポジショニング論
競争戦略論
ポーター(1980)②
「戦略ポジショニング論」
市場ポジショニング論に対する批判と戦略ポジショニング論の展開(ポーター)
「魅力度が高い業界・市場に自社をポジショニングしたとしても、そこに所属する企業すべてのパフォーマンスが高いわけではない」(批判)
「どれほど恵まれた環境にあろうとも、そこで追求される戦略ポジショニングが不適切だと競争優位にはつながらない」(反論)
戦略ポジショニング(競争の基本戦略)
「なぜ同じ業界であっても企業間に業績格差が生じるのか」
ポジショニング論(ポーター)は
「戦略グループ」と「移動障壁」というコンセプトによってその理由を説明

戦略グループ(Strategic group)「類似の戦略を採用している企業の集団」

「業界はいくつかの戦略グループから成っており、優位に立つポジショニングをとっているグループと、そうでないグループに分かれている」

移動障壁とスタック・イン・ザ・ミドル
移動障壁(mobility barriers)
「戦略グループ間の移動を妨げる要因(特定の戦略グループへの参入障壁となるもの)」「移動障壁を無理に乗り越えようとすると、「スタック・イン・ザ・ミドル」(stuck in the middle:中途半端な戦略グループに所属するという罠)に陥り、競争優位を獲得することができない」競争優位につながるのは4つの戦略グループ
競争優位の戦略グループと戦略ポジショニング
「同一業界で成功する戦略(ポジショニング)は1つではない」

戦略ポジショニング(競争の基本戦略)と移動障壁①
(1)標的顧客の違いによる移動障壁
「標的顧客の幅が広い戦略と集中戦略とは相互に矛盾する関係にあり、それゆえ、両方の戦略を同時に追求するのは困難」

戦略ポジショニング(競争の基本戦略)と移動障壁②
(2)顧客価値の違いによる移動障壁「低コスト戦略(コストリーダーシップ・コスト集中)と差別化戦略(差別化・差別化集中)は相互に矛盾している(2タイプ(戦略面と組織面)の移動障壁が存在する)ため、これらの戦略を同時に追求しようとすると失敗する」

戦略的移動障壁
「低コスト戦略と差別化戦略とでは、その基本的な志向(戦略志向)が異なっている(戦略的移動障壁が存在する)ため、同時追求は難しい』

組織的移動障壁
「低コスト戦略と差別化戦略に適合的な組織がそれぞれ異なっており、それが移動障壁となる」『組織は戦略に従う』(チャンドラー命題)

低コスト戦略と差別化戦略の組織的移動障壁
戦略ポジショニング論の基本的考え方
「トレードオフの認識と選択」~限られた資源をどの戦略に配分するか~

戦略ポジショニング論に対する批判
①    低コストと差別化の同時追求は困難ではあるが、実現可能

中間のポジショニングとブルーオーシャン戦略
②    企業間のパフォーマンスの違いが戦略グループ内にもみられる

資源・能力ベースの競争戦略論の台頭

サローナーたち(2002)によるアメリカのホテル業界の研究
「低コストと差別化は矛盾する関係にあるが、これらの戦略は同時追求可能である」
米ホテル業界における成功企業の戦略ポジショニング
Aリッツ・カールトン「差別化戦略」
Bシェラトン「ハイブリッド戦略」顧客が認識するクオリティ(差別化)
Cトラベロッジ「低コスト戦略」
低コスト出所:與那原建(2008)「ポーターの「スタックイン・ザ・ミドル」論再考」
『経済研究』(琉球大学)第75号, p.163

ハイブリッド戦略の有効性

競争優位につながるのは、ポーターの言う「低コスト」戦略と「差別化」戦略だけではない。両者を同時に追求する「ハイブリッド」戦略も有効な競争戦略

低コストと差別化の同時追求:ブルーオーシャン戦略

ブルーオーシャンとレッドオーシャン
ブルーオーシャン戦略とレッドオーシャン戦略の比較

バリューイノベーションとブルーオーシャンの開拓

バリューイノベーションのための4つのアクション

ブルーオーシャン戦略の成功事例➀
任天堂wii
任天堂Wiiの戦略キャンバス
Wiiのバリューイノベーションのための4つのアクション

ブルーオーシャン戦略の成功事例➁カーブス

カーブス
カーブスの戦略キャンバス

カーブスのバリューイノベーション➀
ターゲット「50歳以上の主婦(必要性は感じているが、実際は運動していない人)」
取り除く(低コスト)
①    3つのM(ノーメン、ノーメイクアップ、ノーミラー)
②    シャワー・風呂・プールなどの設備
③    夜間・休日の営業
減らす(低コスト)
①    トレーニング時間(1回30分)
② トレーニングのスペース(40坪ほど)
③    トレーニングマシン(12機)

カーブスのバリューイノベーション➁
増やす・付け加える(差別化)
①    立地(通いやすいよう、主婦が生活する場の近くに立地)
②    教室では、コーチは会員を下の名前で呼ぶ
③    コーチは運動指導能力だけでなく、人と接するのが好きな人、コミュニケーション能力の高い人を優先的に採用
④    1週間来店しない会員にはコーチが電話をかける
⇒「口コミ」が最大の販促チャネル(低コスト)
「ブルーオーシャンの開拓に成功(運動していなかった主婦層を掘り起こした)」

ブルーオーシャン戦略の留意点
ブルーオーシャンはすぐにマネされる
そんなに儲かるならうちもやる
ヤマト運輸による宅急便の発明 当時はブルーオーシャン

⑤   能力ベース論
競争戦略論

資源のVRIN分析

能力ベース論
8.グラント(1991)
「競争優位の資源ベース論」
グラントの貢献「資源と能力の区別」
資源(resources)
「生産過程へのインプット」
能力(capabilities)
「諸資源を組み合わせ、活用する力」
資源と能力の関係
複数の資源が1つにまとまって協同するとき、価値を生み出す能力(組織能力)になる
「経営資源は組織能力の源泉で、組織能力が企業の競争優位の源泉になる」

戦略策定の能力ベースモデル
この図では、戦略を通じた情報的資源の蓄積による組織能力のグレードアップがもたらされ、そのことが持続的競争優位につながることが強調されている。なおグラントもそのための具体的な戦略として、伊丹のいう「オーバーエクステンション」を重視している。

資源×組織ルーティン⇒組織能力⇒競争優位⇒戦略
資源の蓄積・組織能力のグレードアップ

プラハラド=ハメルのコア・コンピタンス論(1990)

コア・コンピタンスとは
「組織内における集団的学習能力、特に多様な生産スキルを調整し、複雑多岐にわたる技術の流れを統合する方法についての集団的学習能力」がコア・コンピタンスであり、この定義から明らかなように、それは組織能力を意味している

コア・コンピタンスのコンセプト

多様なスキルや技術を統合したもので、単なる資産(資源)ではなく、顧客への価値提供と競争相手との差別化を可能にし、さらに新規参入の基盤となるもの、それがコア・コンピタンスという組織能力

企業のコア・コンピタンスのクオリティ=ストック(特定のスキルを保有している人の数)×速度(新しい事業機会を追求するため有能な人材を異動させるスピードと容易さ)80年代の日本企業の躍進コア・コンピタンス(プロジェクトチームの有効性)による

戦略設計図
かつてのNECはシステム化とデジタル化という2つの新局面を理解することからスタートして戦略設計図をつくり上げ、コンピュータと通信(C&C)の合流点にあるビジネスチャンスを切り開くために必要な経営資源を洗い出した

成功の罠(サクセス・トラップ)とストレッチ戦略と経営資源のレバレッジ
成功という果実の中には、失敗という種子が身を潜ませている
成功の罠に陥らないためには、野心的な戦略目標に挑もうというストレッチ戦略を通じて自社の資源をレバレッジしていく必要がある

ストークほかのケイパビリティ論(1992)
ケイパビリティとは「戦略的にとらえられた(持続的競争優位を獲得するように設計された)一連のビジネスプロセス(ビジネスシステム)を有効に機能させる組織能力」

ウォルマートのケイパビリティ分析
ウォルマートは顧客価値(低コストなど)を実現すべく、クロスドッキング(物流システム)を構築注目すべきは、同社が戦略的な投資を行い、クロスドッキングを支える多様な支援システム(情報システム、輸送システム、管理システム、会議システム、報酬システム)を構築したこと

ウォルマートのケイパビリティウォルマートのビジネスシステムを支える各種のシステムが組織メンバー一人ひとりの仕事のやり方を規定し、それが同社の経営資源をケイパビリティ(組織能力)に転化させている
同社が構築した物流システムと支援システムからなるビジネスシステムとそのマネジメントを行う組織能力が持続的競争優位に寄与

組織能力の構成要素としての組織ルーティンと資源

組織ルーティン(organizational routine)
「組織メンバーの定型化された仕事のやり方、行動のパターン」

「資源」はこの「組織ルーティン」を通じて「組織能力」に転化される

能力ベース論の結論

組織能力は
「有価値性」「希少性」「模倣困難性」「代替困難性
という属性を併せ持つため、持続的競争優位の源泉となる」

組織ルーティンの形成要因
・企業カルチャー(文化)(企業組織内で共有されたものの見方・考え方)
・組織構造(組織における分業と調整の仕組み)
・管理システム(例えば、評価制度など)
・業務システム(マニュアルなど)

例:セブンイレブンの「仮説検証型発注」と呼ばれる仕事のやり方➀
本部から提供されるデータと自身の経験を組み合わせて、店舗の発注担当者が自ら立てた仮説に基づいて発注量を決定実際の販売データにより、担当者はその仮説が正しかったかどうかを確認し、そこでの学習が次の発注に反映される

例:セブンイレブンの「仮説検証型発注」と呼ばれる仕事のやり方➁
情報のやり取りが本部と店舗の間で双方向的かつ頻繁に行われる

店舗からは成功した仮説にかかわる情報が本部に伝えられ、本部からも成功事例が店舗にフィードバックされる

この仮説検証型発注という仕事のやり方により、セブンイレブン各店舗の仮説設定能力や発注の精度が高まり、本部にも成功事例の情報が蓄積

セブンイレブンの組織能力
仮説検証型発注という仕事のやり方が組織ルーティンとなり、それがセブンイレブンの人的資源(リソース)を組織全体の能力に転化している。この組織能力がセブンイレブンの競争優位の持続可能性を高めている

能力ベース論に対する批判的研究
1 コア・リジディティ論
2 イノベーターのジレンマ論
組織能力は企業の競争優位の源泉になるが、自社を取り巻く環境が大きく変化すると、既存の組織能力では競争優位の持続が難しくなるのではないか

いずれの研究も新たな組織能力を構築する重要性を強調している

⑤能力ベース論の批判的研究
戦略ポジショニング論に対する批判
①    低コストと差別化の同時追求は困難ではあるが、実現可能

中間のポジショニングとブルーオーシャン戦略
②    企業間のパフォーマンスの違いが戦略グループ内にもみられる

資源・能力ベースの競争戦略論の台頭

資源・能力ベースの競争戦略論
資源・能力ベース戦略論の先駆的研究
伊丹敬之(1945‐)の情報的資源論

伊丹敬之『経営戦略の論理』(1980)
『新・経営戦略の論理』(1984)
伊丹の情報的資源論
経営資源(リソース)とは
「ヒト」(人的資源)
「モノ」(物的資源)
「カネ」(財務的資源)
「情報」(情報的資源)

伊丹の第一の貢献
「持続的競争優位の源泉になる資源の属性について論じていること」
事業活動への必要性のタイプの違いによる経営資源の分類
①    「物理的に不可欠」な資源
⇒事業活動の結果に関わりなく、「とにかく必要」な資源
②    「うまく活動を行うために必要」な資源
⇒事業活動の成果をあげるために必要な資源

時間とコストならびに、外部からの調達の容易さの程度による経営資源の分類
①    「可変的」な資源
⇒比較的簡単に入手できる資源
②    「固定的」な資源
⇒カネを出しても買えないことが多く、したがって自分でつくるしかなく、また作るのに時間がかかる資源

持続的競争優位の源泉になる資源の属性
(属性1)「うまく活動を行うために必要」な資源
⇒競争優位の獲得
(属性2)「固定的」(その増減に時間やコストがかかり、外部からの調達が困難)な資源
⇒競争優位の持続
「属性1と2を併せ持つのは無形資源(見えざる資産)」

伊丹の第二の貢献
「持続的競争優位の源泉になりうる無形資源を「情報的資源」として統一的に捉えていること」

情報的資源の分類:情報の流れと3種類の情報的資源
A 環境情報
B 企業情報
C 内部情報処理特性

A 環境情報
「環境に関する情報の社内蓄積量とその情報を企業に取り込むチャネル(経路)の性能」
環境情報の例
①    技術
②    顧客情報(情報の対象が「顧客ニーズ」)
③    市場情報の獲得チャネル

B 企業情報
「企業に関する情報の環境における蓄積量とその情報を環境に流出させる能力」

企業情報の例
①    ブランド
②    企業の信用
③    企業イメージ
④    広告のノウハウ

C内部情報処理特性
「企業内部での情報処理のパターンと処理能力(組織内の情報処理についての望ましい特性)」
内部情報処理特性の例
①    組織文化(社風)
②    経営管理能力
③    現場のモラール
④    製品開発能力

事業活動の生みだすもの

情報的資源の重要性
1.持続的競争優位の源泉になる属性を備えている
2.「利用と蓄積」の二面性をもつ
これら2つの理由から、情報的資源は経営戦略のうえで特に重要

伊丹の第三の貢献
「情報的資源の蓄積に基づく企業の成長戦略の明示」

オーバーエクステンション戦略
「自社の情報的資源を部分的にオーバーする事業活動をあえて行うという戦略」
モノやカネが不足していれば戦略は失敗するが、情報的資源(見えざる資産)を多少欠いた戦略を選んでも、一応の実行は可能

カニはおのれの甲羅に似せて穴を掘る
「企業の持つ資源(能力)に合わせた戦略をとれ(限られた資源を効率的に配分せよ)」
<カニの甲羅理論の問題点>
「甲羅(資源)に合った穴(戦略)」は企業を現状維持という枠をはめることになりかねない
⇒オーバーエクステンションの必要性

オーバーエクステンションのマネジメント主要ポイント
②    大きな戦略ビジョンの提示
③    自社の財務体力のチェック
「一見不安定に見える企業が実は安定している」
持続的な成長を実現している企業は、オーバーエクステンションにより短期的な不安定をあえてつくりだす
『企業のジグザグ成長』

伊丹の結論
『オーバーエクステンションを通じた情報的資源の蓄積による低コストと差別化のトレードオフの解消が持続的競争優位につながる』

ジェイ・B・バーニー(Jay B. Barney、1954-)
バーニー「経営資源と持続的競争優位」(1991)
バーニーの貢献
「持続的競争優位の源泉になる経営資源の属性の整理」
VRIN ① ②
(1)有価値性(Value)「顧客価値創出力を持つ資源」
(2)希少性 (Rarity)「入手困難で希少な資源」
(1)+ (2)⇒競争優位の獲得
VRIN ③
(3)模倣困難性(In-imitability)
⇒競争優位の持続
②    経路依存性
③    因果曖昧性
④    社会的複雑性

①    経路依存性
「過去のある時期に生じた事象がそれ以降の時期に生じる事象に大きな影響をおよぼすこと」
経路依存性の例
QWERTY(クアーティー)配列のキーボード
経路依存的資源の例
建設重機メーカー、キャタピラーのグローバルなサービス・供給網

②    因果曖昧性
「競争優位(結果)がどのような資源(原因)からもたらされているか、という因果関係がよくわからないこと」
例)企業の「総合力」
(製品開発力、製造技術や販売力など、競争優位の獲得に貢献している要因が多数あり、それらが複雑に関係し合っている)

③社会的複雑性「企業で働く人々の関係を通じて形成される資源」
a.企業内の良好な人間関係
b.企業文化
c.企業の評判
↑「意識的・計画的に創り出すことが難しい」

VRIN ➃
(4)代替困難性(Non[1]substitutability):競争優位の持続
「自社の競争優位の源泉になっている資源の代わりになるものが存在しないこと」
(自社の競争優位の源泉になっている資源を競争相手が他の資源によって代替できないこと)

資源のVRIN分析

⓺ダイナミック能力論と両利き戦略論
競争戦略論競争戦略論の新展開
-ダイナミック能力論と両利き戦略論-(第5章)
能力ベース論に対する批判的研究
1 コア・リジディティ論大きな環境変化によって、組織能力を解体する必要性が生じたとしても、自社に競争優位をもたらした組織能力は「慣性」を持ち、解体が難しい
2 イノベーターのジレンマ論顧客の声に耳を傾け、イノベーションを実行し続けたリーダー企業は、新興企業による破壊的イノベーションを実行するための組織能力を構築できず、その地位を失ってしまういずれも新たな組織能力を構築する必要性・重要性を強調している
レオナード‐バートン(1995)のコア・リジディティ論
90年代の日本自動車メーカーの「オーバーシューティング」による失速

組織能力の硬直性(リジディティ)により新たな組織能力の構築はきわめて難しいが、競争優位の持続にはそれが不可欠

クレイトン・クリステンセン(1952‐2020)クリステンセン(2000)
「イノベーションのジレンマ」
クリステンセンの貢献
「2つのタイプのイノベーションを峻別し、それにより既存の優良企業が新興企業に敗れ去るメカニズムを明らかにしたこと」
持続的イノベーションと破壊的イノベーション
持続的イノベーション(sustaining innovation)
「市場の主要顧客がこれまで高く評価してきた製品の性能水準を向上させる新製品をつくり出すこと」

破壊的イノベーション(disruptive innovation)
「市場の主要顧客が求める指標では弱いが、それとは異なる指標について別の顧客層から高く評価される新製品を生み出すもの」

ハードディスク業界における二つのイノベーション
同業界におけるリーダー企業
「主要顧客がこれまで評価してきた性能指標(例えば、「記憶容量」や「処理速度」)を向上させる持続的イノベーションを追求」

同業界の新興企業

「少数の(新しい)顧客に高く評価される性能指標 (「小型」、「使い易さ」)をもつ破壊的イノベーションを実現 」

短期的には「棲み分け」が成立
リーダー企業は持続的イノベーションを追求して市場の主要顧客を相手に事業を発展破壊的イノベーションに成功した新興企業は新しい顧客層を開拓することによって成長「ところが、やがてリーダー企業は新興企業に敗れ去る」

「顧客の声に耳を傾けること」の弊害
顧客の声に耳を傾け、彼らの要求に応えるようにイノベーションを実行し続ける既存のリーダー企業(持続的イノベーター)はそれが災いし、やがて新興の破壊的イノベーターに敗れ、その地位を失ってしまう

「イノベーターのジレンマ」エクセレントカンパニーがエクセレントであり続けることができなかった理由の一つ

リーダー企業はなぜ新興企業に敗れるのか①
リーダー企業の持続的イノベーションの成果はある段階で主要顧客のニーズを超えてしまう

それ以降彼らはこれまでとは異なったニーズに目を向け始め破壊的イノベーションが無視できない力を持つようになる

リーダー企業はなぜ新興企業に敗れるのか②
新興企業が破壊的イノベーションをさらに推進

やがて新製品の性能が主要顧客の重視する性能指標においても、彼らの要求水準を満足させるようになる
↓リーダー企業は主要顧客を新興企業に奪われ、衰退していく

持続的イノベーターのジレンマ
既存のイノベーター(リーダー企業)が破壊的イノベーションに対応できない理由
リーダー企業は持続的イノベーションを実現するのに有効な組織能力を構築しているが、それは破壊的イノベーションに求められる組織能力とはまったく違うものだから

クリステンセンによる組織能力 の三要素組織能力=「資源+プロセス・価値基準(組織ルーティン)」

組織能力の構成要素としてのプロセス
プロセス「特定の仕事を反復的に遂行することによって形成された、その仕事を上手にやる方法」
~その仕事にとっては有効だが、他の仕事に対してはその保証はない

組織能力の構成要素としての価値基準
価値基準
「事業展開にあたって何がよいかを判断する基準」
~破壊的イノベーションに基づく事業は、利益率が低く、売上規模も小さい

リーダー企業は持続的イノベーションに積極的になる

イノベーターのジレンマ
「プロセスと価値基準から成る組織ルーティンが 破壊的イノベーションのための組織能力構築の妨げとなる」

「ダイナミック能力」(dynamic capability)
破壊的イノベーションを実現し、新しい組織能力を構築する能力
:最新の競争戦略論のキーワードの一つ

リーダー企業が破壊的イノベーションに成功する(ダイナミック能力を実現する)方法

破壊的イノベーションにあたっては既存の組織ルーティン(プロセスや価値基準)から隔離し(別会社を設け)、有能な人材(資源)にそれを任せる

クリステンセンの隔離論の問題点
①    既存組織の資源の活用ができなくなってしまう
②    実用性に乏しく、成果につながらないアイデアが量産される危険がどうしても付きまとう
⇓「隔離論は万能の策ではない」

「両利き」(ambidexterity)の必要性
「隔離せずとも、持続的イノベーション(知の活用)

破壊的イノベーション(知の探索)は同時に実現可能」

「両利きであることが競争優位の持続可能性を高める」

ダイナミック能力
ダイナミック能力(DC)
「環境変化に適応すべく、既存の組織能力(OC)とは異なる新たなOC を構築する企業としての能力」
DCは持続的競争優位の源泉になり得る
DCとは具体的に何か。どういう要素で構成されているのか

ダイナミック能力の3要素
サクセス・トラップ(成功の罠)
ひとたび成功すると、経営トップはこの成功体験を学習(ラーニング)し、「自分たちのやっていることは正しい」との確信を持ち、そこから抜け出せなくなってしまう(フォードの挫折)
求められるは過去の成功体験の棄却(アンラーニング)、それがないとセンシングは上手く行えない

コンピテンシー・トラップ
「新規事業の探索はコストがかかる割に、成果を得られるかどうかは不確か。一方で既存事業には精通しているから、新規事業よりも圧倒的に確実性が高く、コストも少なくて済む。その結果、どうしても既存事業に注力しがちになってしまう。

ダイナミック能力の3要素
感知・変容・捕捉

両利きの経営(2021)
両利きのリーダーシップ
・明確なビジョンと戦略意図の提示(企業ドメインの重要性)
・両利き組織の設計(新規事業部門には既存事業部門とは異なる組織ルーティンを許容する)
・経営陣の関与と支援(両部門が互いに協力し合えるようにする)

ハイパーコンペティションと持続的競争優位の実態(終章)
「持続的な競争優位は誤解で、競争優位は一時的なものにすぎない」(マグレイス 2013)

「グローバル化の進展、規制緩和、急速なITの発展・デジタル化により事業環境の変化スピードが格段に速くなっている。その結果、多くの市場では、競争優位が持続しにくい「ハイパーコンペティション」とよばれる競争環境に移りつつある」

図20 持続的競争優位と一時的な競争優位の連鎖のイメージ(p.140)

ジグザグ戦略
「不安定な企業は安定であり、安定した企業は不安定である」(小林宏治NEC元会長)
長期的に成長している企業は不均衡ダイナミズムを繰り返す(伊丹 1984)

企業の長期的戦略経路と一時的競争優位の連鎖

⑦戦略ストーリー論について
 <優れた戦略ストーリーで競争優位の持続は可能なのか?>
 ダイナミック能力論にしたがえば、環境の変化(ハイパーコンペティション)により、自社に競争優位をもたらしたビジネスモデルと組織能力は有効に機能しなくなってしまう。だから、新たな組織能力とビジネスモデルが必要になる。戦略ストーリーについても、同じことがいえる。

クリティカル・コアとしての直営方式クリティカル・コア(直営方式)とコンセプト(第三の場所)が縦に並んだ4つの構成要素をがっちりと挟んでおり、これがスターバックスの戦略ストーリーを太くし、一貫性を確固たるものにしている

ストーリーの戦略論の考え方
ポジショニング論と組織能力論の相互補完性を重視する

ストーリーの戦略論における業界の競争構造の評価
ほとんどの業界において星の数(魅力度)は時間とともに減っていくのが普通で、増えることはあまりない

理由①「競争」
多くの企業にとって魅力的な業界であれば、時間とともに立て込んできて、だんだん住みにくくなってくる

理由②
「マクロレベルの競争環境の変化」
競争の圧力を強め、業界の魅力度を低下させる方向に作用する

インターネットに代表されるITのインパクトEコマース(電子商取引)の急速な普及
①    参入障壁の低下
Eコマースは実際の店舗を持たなくても済むので参入障壁が飛躍的に低くなる
②    サプライヤーの交渉力の高まりサプライヤーはインターネットの出現で、小売業者を通さずに直接消費者に商品売る可能性を手に入れた
買い手の交渉力の高まり買い手である顧客も(価格.comなどの利用により)商品を(特に価格に関して)これまでよりも格段に広い範囲で比較検討できるようになった
③    業界内部の競争の激化新規参入が容易になり、差別化が難しくなった
戦略(ポジショニング)の必要性「インターネットという新しい技術の登場は、業界の競争構造をより利益の出にくい方向へと駆動することになった」

SP(戦略ポジショニング)の
戦略「何をやり、何をやらないか」をはっきりさせれば、他社との違いを持続させることができる
SPの代表例
デルの「ダイレクトモデル」
顧客からのオーダーを受け、その要望に合わせてカスタマイズした製品(PC)を流通/小売業者を介さずに
直接販売するビジネスモデル

デルのSPの戦略
「最先端の技術を追いかけず、コモディティになった製品分野しか手を出さない」
「見込み生産をしない」
「外部のチャネルを使わない」
OC
(組織能力)の戦略競争に勝つためには、他社が簡単にはまねできず、市場でも容易に
は買えない独自の強み(OC)を持とう」という考え方

OC戦略の焦点「時間をかけても、容易にはまねできない組織能力(資源と組織ルーティン)を構築していくこと」
競争優位の持続可能性
「厳しい競争構造に置かれた業界であっても、戦略(SP or OC)で差別化(違い)を構築できれば、持続的競争優位を実現できる」

(競争優位)
①コスト優位
「さまざまな無駄をなくしてコストを他社よりも低くすれば利益が出る」

②WTP優位
「顧客がより多く支払いたくなる(Willingness To Pay)状態をつくる」
④    ニッチ集中
「競争上の土俵を特定のセグメント に狭く絞り、事実上競争がないような状態をつくる」

クリティカル・コアの二つの条件
1)「他のさまざまな構成要素と同時に多くのつながりを持っている」こと
2)「一見して非合理に見える」こと

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