東京の思い出

上京した日私は、ロフトに登るハシゴに腰掛けてTBSラジオを聴いていた。

学生時代に借りていた田舎のアパートよりもずいぶんせまいアパートは段ボールで埋まり座る場所もなくなったが、ラジオからは新生活特集番組が流れ私もそれなりに気持ちが高揚していた。

いい歳して貧乏で、何も持ってなくて、将来のことなんか心配していなくて、ただ目の前のことが新しく無敵だった。
いつも池袋のジュンク堂で本を買って時間を潰し、お金がないからマルエツのもやしを食べてた。遊び方も知らないし友達もいないから、高田馬場、目白、池袋、大塚の裏路地を毎日歩き回った。電車で遊びに行く場所がわからなかった。なぜだかいつもお酒を飲んでいた。

私の思い出の東京はなんでもある大都会ではなく、裏路地ばかりだけど、特別なものがあったわけじゃなかったけれど、若かったから最強だった。

#上京のはなし

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