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磯森照美のエッセイ集

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投稿したエッセイをまとめています。
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#友人

エッセイ | 祝うの不得手

友人とLINEでメッセージのやり取りをしていた時に「今日誕生日なんだ」とメッセージが届いた。大学時代からの付き合いであるが、友人の誕生日をこの時初めて知った。 2月や3月、8月や9月のように、長期休暇中に誕生日がある人はお祝いをする機会がないために知らないこともあるのだが、その友人は長期休暇に当たらない月の生まれだった。 「初めて知った! おめでとう!」とメッセージを送ると、喜んでいるスタンプが返ってきた。 メッセージのやり取りがひと段落ついた時に、「これでいいのだろう

エッセイ | そんな日

私が注文したメニューと同じものが、私より後から来た人に提供されている。私はまだ待っているのに。 スタッフが間違えたまま提供しているのではなかろうかと思うが、その後すぐ私にも提供されたため、タイミングの問題だったのだと思った。 斜め前方に座っている人も私と同じメニューを注文していたようだ。そうなると、私たちにはもう1皿料理が届くことになる。きっと同じタイミングで出てくるのだろうなと思いながら、届いた料理を口に運ぶ。 届いた料理を半分ほど食べた頃に次の料理が届く。先に提供さ

エッセイ | マキネッタのサイズが変わるということ

朝日新聞の「天声人語」に掲載されたコラムにステキな一文があった。 そのコラムは『コーヒーと人生』というタイトルで、イタリアで暮らす友人からの手紙に「コンロに新品の小さなマキネッタを置いたときに涙が出た」という一文が冒頭に登場する。 この記事については朝日新聞を購読している母から存在を聞いたのだが、この一文の力はすさまじい。 私はこの記事をまだ読めていないが、この一文は朝日新聞デジタルにてギリギリ無料で読めた。ここから先は実家に戻ってから読みたいと思っている。 マキネッ

エッセイ | 偶然が当然

「奇遇だね、何しているの?」私の目の前に、そんなことを言っている友人が立っている。 「待ち合わせ場所なんだから当然でしょ。それよりも遅れたことの謝罪を聞こうか」私はなるべく表情を変えずに口を動かした。 「それがさ、偶然乗っていた電車が一つ前の駅止まりでさ、まいっちゃったよ」友人はまだヘラヘラとしている。 「電車は決まったダイヤで動くんだから偶然ってわけはないでしょ」まったく困ったものだ。 別の日に出かけていると、バッタリと友人に出くわした。 「こんなところで会うなん

エッセイ | 好かれづらく嫌われにくい私は、熱しやすく冷めやすい

「なんで付き合えないんだろうね」食事に行くたびに友人はこう言ってくる。 一足先をいく友人は地に足をつけた生活を送っているため、浮いた話を提供してほしいのだろう。しかし、私に浮いた話などないため友人の発言は迷宮入りしてしまう。 そもそも交際できない理由がわかっているのであれば、どうにかして対応している。 「こっちはずっと考えているんだよ。既婚者の視点で俯瞰して見たときの意見をちょうだいよ」私は少しだけ友人にあたる。 「人に無関心なところがダメなんじゃない? もっと能動的

エッセイ | わりと日常を愛している

社会人になってから中学校時代の友だちや、高校時代の友人と出会うことがある。地元で就職する人や、地元へ帰っていく人が多い中、いまだに上京したままの人は珍しい。 こんなことを言う私も珍しい人の一人だ。 別に地元が嫌いなわけでも、上京した先が魅力的なわけでもない。いや、魅力的ではあるのだが、地元ではダメな理由は見つからない。どちらに住んでいても十分生活を楽しめただろう。 出会った友人も最初のうちは東京に住み続けたいと思っていたようだが、コロナのおかげなのか在宅ワークが主流とな