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野﨑まどのココが好き!(好きゆえの敬称略バージョン)

 私は10年以上の「野﨑まど狂」で、初めて野﨑まどに触れたときに私には読書革命が起こり、以来野﨑まどの物語に完全屈服させられ続けています。

 今回は、そんな野﨑まどの面白さを具体的な本の紹介を交えながら説明したいと思います。

『パーフェクトフレンド』

 私が初めて野﨑まどに出会った作品です。
 小学四年生の女の子たちが不登校の同級生のために「友達はなぜ必要か」「そもそも友達の定義とは何か」を考えていく物語で、表紙のイラストや物語の前半部分はラノベ的で少しギャグ要素もあるほのぼの系ストーリーです。しかし、後半の定義の核心に近づくストーリーは力業な部分もあり、本当に同じ話かと思うほどでした。
 ただ、この力業のシーンこそが、私に読書革命を起こした重要シーンなのです。物語の方向を変えるのは途中のほんの1行なのですが、その1行から「ほのぼの」という雰囲気から奇怪な雰囲気へと移ります。(あえて例えるなら、『魔法少女まどか☆マギカ』のような裏切られ方に少し近い気もします。)しかし、読後にはこの展開も「友達の定義」というゴールにたどり着くために必要なパーツだったと感じられるでしょう。
 この本を全国の小学校にこの本を配布して、ラノベのノリでうっかり読んでしまった小学生を生粋の「野﨑まど狂」にさせたいものです。

『独創短編シリーズ 野﨑まど劇場』

 これは、私が1年前に「夏川椎菜のCltureZ」という深夜ラジオ番組へ生電話出演した際に紹介した1冊です。
 ジャンルで言えば「シュール」なコチラは、キャッチコピーとして「編集部の正気を疑う一冊」「この本を許せた時、君はひとつ大人になる」という、この本のふざけ具合を象徴する言葉が並びます。
 実際に、ガンマンが出てくるお話で「--⊃」という記号を用いて小説とは思えないレベルで視覚的に弾丸を表現しつづけたり、裏表紙のあらすじを書く欄に裏表紙vs背表紙の短編を書いてみたりと、「これも許されるんだ……」という展開のオンパレードです。
 でも、著者名に「野﨑まど」と書かれていれば、許したくなるから不思議です。

『バビロン』

 『野﨑まど劇場』同様にキャッチコピーを紹介するなら、「読む劇薬」。
 これは言い得て妙で、1人の自殺の事件を解明する中で、「自殺をほう助する法律を認めても良い」のか、「そもそも良い悪いとはどのように判断するのか」という、ショッキングであり納得感のある言語化が難しい問いを考えろと銃口を突き付けられているような作品です。これを読むと、自分の頭の中がこの議論で埋め尽くされてしまうような力があります。
 しかも、どんな人間も思いのままに操れるほどの悪魔的魅力をもつ女がキーパーソンで、彼女の言動がより劇薬と化させているように思います。
 続編の執筆が進んでいるようなので1秒でも早く「野﨑まど」成分を摂取して、自分の人生にさらなる刺激を加えたいものです。

『タイタン』

 近年、野﨑まどのおススメを聞かれたら必ず答えている1冊。  
 ほぼ全ての労働を「タイタン」というAIが肩代わりしている社会を舞台にしているとっつきやすさと、タイタンの不調の原因を直すという物語の明確な目的がある分かりやすさが勧めやすい理由です。しかし、その不調を直す方法や話の結末はAIものとは思えないほど物理的にダイナミックで、後半部分は自分を想像もつかない結末へ導いてくれる確信を持ちながら読み進めることができます。
 総じて「野﨑まど」の長編作品は後半の畳みかけが凄まじく1行でも読み飛ばせば振り落とされるみたいな感覚があるのですが、今作は特に「多分、今大事なシーンだ!!」というページが長かった印象です。そのため、早く物語の続きが知りたいけれど、丁寧に読まないとせっかくの「野﨑まど」がもったいないというジレンマに襲われたことも良い思い出です。

終わりに

 最後に、「野﨑まど」の良さを総括しようと思ったのですが、まだまだ上手く言語化できなかったので止めておきます。
 ただ、過去に「中盤のどんでん返しは、話が180度変わったように見せかけて、実はたどってきた軌跡が正180角形の輪郭だったと気づくほど世界が変わる」「どんでん返しがあったとしても、その前後で表現したいテーマが一貫していることが、読後のしてやられた感につながる」と言ったことがあるので、こういう部分の虜になっていることは間違いありません。

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