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#4ふたりのわたし

みんなも知っての通りわたしは風俗嬢だ。


そんな身体を売るわたしが居る一方で、普段の日常をおくっているわたしもいる。

水と油のような対比の日々を送るふたりのわたしが、わたしの中には存在している。


そんな2人のわたしを切り替えるための言わばスイッチのようなものがある。

それは


【名前】


風俗嬢にはだいたい源氏名が与えられる。


自分で決めたり、お店から決めてもらうパターンがあって、わたしはお店に決めてもらった。


その源氏名をわたしは数年名乗っている。



名乗り初めは違和感だった。


だけど今では、全く違和感を感じない。



なぜなら風俗嬢は日々この源氏名を口に出す。



はじめまして、〜と申します。


わたしは少なくともこのセリフを仕事の日は3回以上は言っている。


お客様やスタッフさんから「〜さん」「〜ちゃん」そうやって日常的に声をかけられる。



そんなことを数年繰り返したわたしは、本名よりも源氏名の方が馴染んでしまった。


そんな2つの名前をもつわたし、ふと思う事がある。



本当のわたしはどっちだろう?




本名のわたしなのか?
源氏名のわたしなのか?



そりゃ本名だろ。




と思うだろう。


じゃあ源氏名のわたしは、本名のわたしが女優さんのように風俗嬢としてのわたしを演じているのだろうか。



恐らくわたしは演じていない。




#2 でも話した通り、わたしは今のわたしに憧れていた。

源氏名のわたしにリスペクトすらある。


過去から抱いていた、理想や夢を具現化したのが風俗嬢としてのわたしだから。


派手な格好して街をねり歩く、そんな姿こそ昔からの憧れだだった。


じゃあ、本名のわたしって何者なんだ?



普通に学生をして、風俗嬢になる前は普通の仕事もしていた、結婚を機に辞めたが、当たり障りない人生だったと思う。


だけど今思えばどこか物足りなかった気がする


学生時代は孤立しないように好きでもない友達と群がって、社会人では色々な人に気を使う毎日だった。


それが当たり前と言われればそれまでだけど、少なくとも【本当のわたし】だったかというとそうでは無い。


わたしのようになりたい自分を我慢して生きている人は少なくないのではないだろうか。


日常の中で叶えられるなりたい自分ならいいだろう。


ただ、少し非現実的な理想の自分がいた場合、現実という壁が立ち塞がることは間違いない。


わたしの場合はそうだったと今感じている。



でも今は理想のわたしになれる瞬間がある。

それはなぜか。


そう。


風俗嬢だからだ。


源氏名としてのわたしがいるから。



派手な格好、露出度の高い服を着て、周りからどんな目で見られようとわたしは【風俗嬢】だから。


職業ヘイトなんて聞き飽きる程聞いてきた。


この仕事を正当化しようとは思っていない。


だけど周りがなんて言おうと、この仕事がわたしの理想を叶えてくれた。


そして今も叶え続けさせてくれている。


わたしにとって源氏名とは理想と現実を自由に行き来できる秘密道具のようなものだ。


そんな本名とも言える源氏名はわたしにとって宝物だ。


そして、この宝物を手に入れるきっかけをくれた人にも感謝してる。


長くなりますので、そのことは#5で書こうと思います。


指宿真里

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