クルアーン学摘記 第3課
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名によって
アーヤトッラー・ムハンマド=ハーディー・マアレファト
アッバース・デフカーニー教授
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イスラームの学問 イスラームを知るとは?
第3課
啓示がくだることについて
クルアーンが段階的にくだるとはどんな意味か?
くだるنازلの3つの意味に注目:
①上から下へ降る 例:10階から3階へ降る
②地位が降る 例:取締役から清掃社員へ降格
③理解可能な形態をとる 例:クルアーンは至高なるアッラーから被創造物である人間に理解可能な形態でくだされた=啓示された。
クルアーンが段階的にくだされる形で、くだされるに相応しい出来事、質疑応答、困難や問題の解決について、預言者様の生存された期間にくだされた。
وَقُرْآناً فَرَقْنَاهُ لِتَقْرَأَهُ عَلَى النَّاسِ عَلَى مُكْثٍ وَنَزَّلْنَاهُ تَنزِيلاً
あなた(預言者)がゆっくりと人々に読唱するために、〔これは〕われらが分割〔して啓示〕したクルアーンであり、完全なものとして啓示した。
17.夜の旅章106節
クルアーンが段階的にくだされた叡智とは?
クルアーンから論証されるクルアーンの啓示が段階的である叡智とは、常に偉大なるアッラーが気にかけてくれていることを預言者様と信者たちが感じることである。このようにクルアーンの節が啓示されるその多くの場合、それは預言者様を励ます原因となった。
啓示وحیがくだる始点はいつから?
明白なクルアーンの原文を根拠にクルアーン啓示の始まりは祝福されたラマダーン月のガドル(定め)の夜である。根拠となる節:
شَهْرُ رَمَضَانَ الَّذِيَ أُنزِلَ فِيهِ الْقُرْآنُ هُدًى لِّلنَّاسِ وَبَيِّنَاتٍ مِّنَ الْهُدَى وَالْفُرْقَانِ
ラマダーン月こそは、人々の導きとして、また導きと〔正邪の〕識別の明らかな証としてクルアーンが下された月である。
2.雌牛章185節
إِنَّا أَنزَلْنَاهُ فِي لَيْلَةِ الْقَدْرِ
まことに、われらはそれ(クルアーンを)を定めの夜に下した。
97.定め章1節
ガドルの夜は祝福されたラマダーン月19、21、23日のいづれかの夜である。
ガドルの夜の可能性は21、23日が19より濃厚である。
・イマーム・サーデグعلیه السلامが仰った:ガドルの夜を21、23日の夜のひとつから探しなさい。
・イマーム・サーデグعلیه السلامが仰った:19の夜は運命の夜、21は確認の夜、23は署名の夜である。
・シャイフ・サドゥーク曰く:我々の長老たちは23の夜がガドルの夜であるという見解で一致している。
啓示وحیは預言者様にどの期間くだされたのか?
神託的啓示وحی رسالیはラジャブ月27日聖遷هجرت(ヒジュラ、マッカからマディーナへの移住)の13年前に始まった。しかし天啓の書についてのクルアーン啓示は3年間遅れた。この3年間を空白期فترتという。この期間、預言者様は自身のイスラームへの招待を内密に行った。
次の節がくだるまで
فَاصْدَعْ بِمَا تُؤْمَرُ وَأَعْرِضْ عَنِ الْمُشْرِكِينَ
だからあなたが命じられたことを公然と伝えなさい。そして多神教徒たちに背を向けなさい。
15.アル・ヒジュル章94節
この節がくだり、公然とイスラームへ招待することが預言者様に命じられた。
クルアーン啓示がくだされた情況に関する幾つかの質問
1.もしクルアーン啓示がガドルの夜だったならば、なぜ預言者召命はラジャブ月27日に凝血章で始まったのか?
解答:クルアーン啓示の始まりは預言者召命の3年後である。凝血章の最初5節はクルアーンの形態を保持しておらず、凝血章が完全にくだされた後にクルアーンの形態が見出された。
2.もし最初にくだされた節が凝血章だったならば、ではなぜ開扉章(ハムドحمد章)をクルアーンの序章فاتحة الکتابと言うのか?
解答:何故なら開扉章は完全な形態で預言者様にくだされた初めての章である。そしてまさに預言者召命初日、ジブラーイールは礼拝とウズーوضوء(小浄)を預言者様に伝えた。いかなる礼拝も開扉章抜きでは正しくない。であるから、開扉章は預言者様にくだった初めての完全な章である。
3.どのようにクルアーンの啓示はガドルの夜に行われ、同時にクルアーンは20年間くだされたのか?
解答:3つの主要な考えがある
①クルアーン啓示の始まりがガドルの夜であり、クルアーン全てがその夜くだったのではない。
②ガドルの夜の度に、毎年その必要な分量だけクルアーンがくだった。
③クルアーンは2つのくだりかた、一度にと、段階的の2つがある。ガドルの夜に全てのクルアーンが預言者様にくだり、その後20年の間に段階的にクルアーンがくだった。
⇒この本(クルアーン学凡論)の著者は①を採用している。
一度にクルアーン啓示がくだった目的は?
3つの主要な考えがある。
① シャイフ・サドゥーク:一度にくだったのは預言者様がクルアーン全てを把握するためであり、これにより預言者様は概略的にクルアーンの本文全体を知った。
②アブーアブドゥッラーザンジャーニー:クルアーンはガドルの夜、預言者様の心にくだりそこで明るみを得て、20年の期間をかけて彼の口から流れ出た。
③アッラーマ・タバータバイー:クルアーンは2つあり、それは表面的なものと内面的なものである。内面的なものとはいかなる詳細からもかけ離れており、それは部分で区分けされるものでもなく節や章でもない。むしろひとつの真理であり、ありとあらゆる手にできるものからかけ離れている。そして表面的なものとは言葉や節や章を持ったものである。ガドルの夜に内面的なものが預言者様の心にくだり、表面的なものは20年をかけてくだった。
この本(クルアーン学凡論)の著者:クルアーン啓示が始まったのはガドルの夜である。一度にくだったことを容認しない。
以上
※クルアーン日本語訳は「聖クルアーン日本語訳 澤田達一」より引用
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