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クルアーン学摘記 第4課

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慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名によって

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アーヤトッラー・ムハンマド=ハーディー・マアレファト(ره)

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アッバース・デフカーニー教授

はじめての方必見です↓
イスラームの学問 イスラームを知るとは?

前回までのおさらい↓
第1課
第2課
第3課

第4課 
啓示のاسباب(諸理由)とشأن(事項)とは?

クルアーン啓示における啓示のاسباب(諸理由)とشأن(事項)とは?

多くの節は、出来事や事件が発生したとき、問題や困難が提起されたとき、預言者様に対して行われた質疑応答のときにくだされた。これらの背景や条件を啓示のاسباب(諸理由)、شأن(事項)という。

إِنَّ الصَّفَا وَالْمَرْوَةَ مِن شَعَآئِرِ اللّهِ فَمَنْ حَجَّ الْبَيْتَ أَوِ اعْتَمَرَ فَلاَ جُنَاحَ عَلَيْهِ أَن يَطَّوَّفَ بِهِمَا وَمَن تَطَوَّعَ خَيْرًا فَإِنَّ اللّهَ شَاكِرٌ عَلِيمٌ

2.雌牛章158節

サファーとマルワ(の往復)はアッラーの儀式である。だからハッジもしくはウムラ(小巡礼)を行う者は誰でも、もしその2つ山(サファーとマルワ)の間をタワーフ(往来)しても罪にならない。だからあらゆる善い行いをすすんで行いなさい。アッラーはあらゆる感謝を受け入れ、全知であられる。

訳者註:これは多神教徒がマッカそしてカーバ神殿を統治していた頃、マディーナのムスリムたちが小巡礼する際の出来事である。巡礼者のうち先頭から遅れをとった者たちがいた。彼らは巡礼の法令を熟知しておらず、遅れをとったためにサファーとマルワの往来を行うかどうか躊躇していた。何故ならそこには多神教徒たちの偶像が散在しており、往来することでそれらを崇拝したことになるのではと疑念があったからである。そこでこの節がくだり、サファーとマルワの往来を行うことは巡礼者にとって義務であり、たとえそこに多神教徒の偶像があろうが、意図がアッラーへの崇拝行為であれば罪とならないことが明らかとなった。

啓示のاسباب(諸理由)とشأن(事項)の違いは?

啓示のشأن(事項)はاسباب(諸理由)を含む。個人に関する(クルアーンが示す教訓として適当な)出来事、過去・現在・未来の出来事、たとえばイスラーム法令に関する節、もしくは何かしらの節が啓示されるなど、これらすべてを啓示のشأن(事項)という。しかし啓示のسبب(理由)は啓示がくだる理由や原因となった事件や出来事を言う。

なぜ啓示のاسباب(諸理由)を追跡することが容易ではないのか?

理由
①記録されておらず、啓示のاسباب(諸理由)の形にならない。それほど伝わっている数が少ない。

訳者註:預言者様が伝えたことを当時の情況や事件の概要、誰に対して語られたのか、詳細に背景全てを記録していなかった。当事者にとって明白なことは省略され逐一記録されなかった。しかし、後世の者にとってその省略箇所は解読困難であり、不明箇所は謎のまま残された。そのため啓示のاسباب(諸理由)の質に達せず、不完全な伝承のまま残された。


②多くの啓示のاسباب(諸理由)の伝承が戦争や為政者の手による焚書により消失してしまい、我々の手に届いていない。

訳者註:預言者様逝去後、1)ヤマーマの戦い(偽預言者との戦い)により多くのクルアーン暗記者や伝承暗記者を失った。また戦いに伴う資料の紛失や焼失もあった。2)初代カリフの座についたアブーバクルそして二代目カリフのウマルの指示で、それまで蓄積された多くの伝承が焚書された。


③啓示のاسباب(諸理由)の背景における偽造や嘘の伝承が多数作成された。

訳者註:ときの為政者による偽書や嘘の伝承が巷にばらまかれた。一部のサハーバ(預言者様存命時の信徒、教友)は金品や役職により懐柔され偽書を大量に産み出した。


啓示のاسباب(諸理由)の背景における信頼できる本とは?

1.ジャーミウルバヤーン:タバリー 
جامع البیان طبری
2.アッドゥッルルマンスール:ジャラールッディーン•スユーティー
الدر المنثور جلال الدین سیوطی
3.マジュマウルバヤーン:タバルスィー
مجمع البیان طبرسی
4.トゥビヤーン:シャイフ・トゥースィー
تبیان شیخ طوسی
5.アスバーブルヌズール:ワーヒディー•ニーシャーブーリー
اسباب النزول واحدی نیشابوری
6.ルバーブルヌクール:ジャラールッディーン•スユーティー
لباب النقول جلال الدین سیوطی


伝承の正誤を判別する方法とは?

1、伝承は必ずمعصومين無謬なる方たち:預言者様、ファーティマ・ザフラー様、イマーム・アリー様~お隠れのイマーム・ムンタザル様までのイマーム12人の合計14人、あるいは信用できる教友に遡ること。

信用できる教友の例:イブン・マスウード、イブン・アッバース、アビー・ブン・カアブなど…

訳者註:最初の発信者が間違いを犯さない、もしくは確実に信用できて、人を導く役割を担っていなければならない。


2、十分な、あるいは多数の伝承者の存在が確証されていなければならない。

訳者註:1)多くの者たちが伝えており、2)またそれが伝承経路、内容とも正しいものであること、その両方が立証されなければならない。


3、伝承は、問題点や曖昧なものを明確に解き明かさなければならない。

訳者註:伝承とは有益でなければならない。何の役にも立たない情報は伝承として正しくない。何故なら、伝承とは人間を完成へ至らせる導きであるから。

以上

※クルアーン日本語訳はアッバース・デフカーニー教授の摘記を訳した。

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