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自粛続きで心が疲れている人に見てほしい、美しく癒されるロシアの風景画

こんにちは、イスクーストバです。

自粛続きで心が少し疲れてしまった人が多いことでしょう。天気が晴れやかな日に遠出して自然に触れ合うことも中々難しい時期です。そんな方々の為に、観るだけで癒される美しきロシアの風景画をいくつかピックアップしてご紹介します。

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イーゴリ・グラーバリ 『冬の朝』 (1907年)

木々の隙間から眩しい朝日の光が差し込み、地面の雪と反射することで幻想的な色彩のグラデーションが生まれています。グラーバリはロシアの冬景色を好んで描いており、印象主義を思わせる色彩の妙でひんやりとした空気感を見事に表現しています。


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イリヤ・レーピン 『芝生のベンチで』 (1876年)

自然のベンチで一家団欒の時を過ごす、微笑ましい瞬間を捉えた作品。
レーピンというと『ヴォルガの舟曳き』や『イヴァン雷帝とその息子イヴァン』などおどろおどろしくちょっと怖い作品で知られていますが、家族の穏やかな日々を題材とした作品などもたくさん描いていたりします。


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ワシーリー・ポレーノフ 『モスクワの中庭』 (1878年)

モスクワは今や1200万人以上の人口を誇る大都市ですが、19世紀にはこんなのどかな光景もありました。この作品では晴れ渡る空の下に佇む人々の和やかな生活の一部が切り取られています。アップにしないとわかりづらいですが、草っ原で遊んだり、泣きじゃくったりしている子供たちの姿を見ることができます。


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イヴァン・シーシキン 『森の散歩』 (1869年)

シーシキンは世界でも稀に見る「森ばかりを描き続けた画家」です。雄大で豊かなロシアの自然に魅せられたシーシキンは生涯を通じてひたすら森林の風景画を描き続けました。極端な言い方をすると、シーシキンの作品において主役は木々や草花の姿であり、人物はその添え物にすぎなかったりします。ただ『森の散歩』では森をゆったりと歩く身なりのよい男女の姿や、自然に囲まれてはしゃいでいるワンちゃんの様子がしっかりと描かれています。実際にシーシキンの作品を眺めていると、森林の香りや風が木々揺らす音まで聞こえてくるような錯覚を覚えるのです。まさに「観る森林浴」。それがシーシキンの技。

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イサーク・レヴィタン 『夕べの鐘』 (1892年)

初めてロシアを訪れた時、行ったことがないはずなのに何故だか「懐かしい」という感覚を覚えました。この感覚、行ったことがある人なら分かると思うのですが、ロシアって不思議なノスタルジーを感じるんですよね。
このレヴィタンの作品ももしかしたらそんな感覚があるかもしれません。静まりかえった世界で教会の鐘のみが鳴り響く。夕焼け空を眺めながら、そろそろ帰ろうか、それともこの余韻にもっと浸っていようか…。レヴィタンの『夕べの鐘』を眺めているとそんな詩情あふれる光景がなんだか思い浮かんできませんか。今の時代はノイズに溢れ過ぎていることもあり、心静かにいられる時間がとても懐かしく、恋しくもなります…。


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アルヒープ・クインジ 『白樺林』 (1879年)

印象派の画家たちが空間における光や色の見え方を科学的に研究し、絵画の表現に大きな変化をもたらした時代に、ロシアの画家クインジは本当に光って見える絵画を描いています。ネットの図版では一ミリも伝わらないので何のことかと思われるかもしれませんが、これ、光ってるんですよ、本気で…。
クインジは遅咲きの画家でアカデミーの試験に落ちてしまった経験もありました。しかし持ち前のストイックさで自然の光を徹底的に研究し、絵画上で再現することに成功したのです。

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『海。クリミア』 (1898〜1908年)

眩しい陽光に当てられて美しいブルーの光を放つクリミアの海。暖かな黒海を思いっきり泳いだらきっと気持ちいいでしょうね。


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イヴァン・アイヴァゾフスキー 『黒海』 (1881年)

同じクリミアの海でもアイヴァゾフスキーの作品は毛色が違います。
ここに描かれているのは海と空のみと、とてもシンプルな構図。
さて、この作品がなぜアイヴァゾフスキー屈指の名画とされているか?
その理由の一つは移り変わりいく雲や波の表情をまるで写し取ったかのように生き生きと描いたことにあるでしょう。波の小さなしぶき、光が海面に当たることでできる水の透明感など、細部にわたってリアルに表現されていますね。アイヴァゾフスキーはこれをスケッチもなしに自身の記憶を頼りに描いていたのですから本当に驚きます。


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コンスタンチン・コロヴィン 『パリ。カプシーヌ通り』 (1906年)

19世紀までのロシア絵画はリアリズムが隆盛を誇っていましたが、20世紀に入り西欧の印象主義などが入り込んでくるとロシアの画家たちも新しい表現を求めるようになります。ロシア印象主義の画家コンスタンチン・コロヴィンもその一人。1885年にパリで出会ったフランス印象派の作品に衝撃を受け、その後印象主義に傾倒します。コロヴィンはパリの夜の街並みを好んで描いており、むしろ昼間の光景を描くことはあまりなかったとか。外灯が煌めく夜のパリはとても色っぽいですね。



絵画には時間や空間を超えて私たちを別世界に誘ってくれる不思議な力があります。トレチャコフ美術館でロシアの風景画を目の前にした時、私はまるで自分が絵の世界に入り込んだような不思議な感覚を覚えました。シーシキンの絵を観れば鬱蒼とした森林を彷徨い歩いているような気がするし、アイヴァゾフスキーの海の絵を前にすれば波しぶきが眼前に迫ってくるような錯覚を覚え、クインジの描く月は本当に眩い光を放っているかのように感じるのです。ロシア絵画の魅力はスケールの大きさと、そこから放たれる溢れんばかりの臨場感、これに尽きるのではないでしょうか。

もどかしいかな、こんな記事ではロシア絵画の魅力が1%しか伝わらない…

私たちの日常が戻り、海外へ自由に行き来できるようになった時には是非ともロシアの美術館を訪れてこの名画の数々を味わい尽くしてみてください。

そしてまたいつの日か日本でロシア絵画の展覧会が開かれることを願って…。


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トレチャコフ美術館で出会ったシーシキンの作品(筆者撮影)



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