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アパレルメーカー社長が国家資格を取ろうと思った3つの理由

岡山県でちいさなアパレルメーカーを運営している岩崎です。
風景をつくっていく野良着「SAGYO」と、
生活に折り目をつける寝間着「みんふ」のふたつを
協力会社や経営パートナーと協力しながらひとりで運営しています。

更に別事業として、年2回行っている、各家庭の古着を集めて代わりに染工場に出して差し上げる「黒染め友の会」と、クリエイションを始めたばかりの方に向けた貸ギャラリー「n=1(エヌイコールイチ)」も同時進行で営んでおり、既に多動気味の仕事人生なんですが、ここでまた更にひとつやりたいことが出来てしまいました。

それは、中小企業診断士の資格取得です。

<中小企業診断士とは>
経営コンサルティング領域唯一の国家資格。中小企業の経営者等からの依頼に応じて企業の経営内容を診断し、改善方法を提案して支援する。依頼された企業の希望に沿って診断方針を作り、経営状態を判断するために、貸借対照表、損益計算書などの財務諸表やその他の経営に関する資料から経営内容や問題点など判断し改善に導く仕事です。

芸大を卒業して、最初のキャリアはアパレル会社のグラフィックデザイン職でした。

そこから商品企画、生産管理と一連のことを会社で学び、独立したのですが
経理は社長の奥さんがやっていたし、経営はもちろん社長が担っていたため、経営や財務に関することは一切学んでないわけです。

知識がなくてもなんとかなった10年。

元居た会社があまりにもニッチでユニークな会社だったため、大企業アパレルやメゾン出身者は体験できないような泥臭いノウハウを得ることが出来、なんとか10年やってこれました。
商品企画やブランディングに関しては、これだという理論が出来上がったものの、経営となると独学過ぎて未だに不安しか無い状態にあります。
知人からの紹介で優秀で理解力のある税理士さんに巡り合うことが出来たんですが、こちら側にある程度のリテラシーがないと効果測定が出来ないことにも気付きました。
理解力も質問力もない状態だと、ただおまかせするしか無いんですよね…。
(それでいいんだけど、宝の持ち腐れのような気がして。)

今までは体力、無知の知、ビギナーズラックでどうにかなった10年ですが、これからの10年そう簡単に行かないことは重々わかっています。
体系的な知識をつけて地に足を付けた経営をしたいというのが中小企業診断士資格を取ろうと思った最初の理由です。

工場に選ばれるメーカーになるために

もうひとつは、コロナ禍以降、国内における衣類の生産環境が大きく変わったことです。

私が独立した11年前の時点で国内の繊維産業すべてに高齢化の波が押し寄せており、労働条件が悪すぎて若者が寄りつかない・入社してもすぐやめてしまうという問題は顕著でした。
それでも東日本大震災後にリテラシーの高い若者を中心に仕事や労働に対する価値観が大きく代わり、若者が産地に入り始め、小さな循環が出来始めたところにコロナ禍がやってきました。

コロナをなんとか乗り越えても、その後の急激な円安や物価高により廃業を決める工場が続出。

弊社が生産をお願いしていた各工程の工場もこの1年で3社が廃業、事業縮小されました。
今までのように、プロダクトやサービスを買うだけでは支えることなんて出来ないと自分の非力さを痛感した1年でした…涙

とはいえ、SAGYOやみんふを通して実現したいことはまだまだあります。
ブランドの事業を継続しながらお世話になっている工場に還元できることっいてなんだろうと考えた時、私が出来ることは経営の効率化を一緒にしていくことかもしれない、と思いました。
仕事を出す立場のメーカーがやることではない、と言われそうではありますが、そんな考えはもう古いかもしれません。

既に、メーカーは工場を選ぶのではなく、選ばれる立場になっています。
それはこの数年でもっと顕著になっていくでしょう。
実際新規の取引では、試されるかのように見積もりが上がっていってます。
「大手さんの仕事が戻ってきたから」と突然取引停止を言い渡されたという話もよく耳に入ります。
そんな、「枚数出したもん勝ち」「お金を出したもん勝ち」の世界で年間数百枚しか発注出来ない私の仕事を受けて頂くためには、自分に選ばれる価値を付けていくのが手っ取り早い、そう感じました。
大企業と大工場の取引状況は知らないんですが、弊社の場合は1型の枚数が少ない分、なるべく多くの型をひとつの工場で生産するやり方を採用しています。
そうなると、工場担当者(多くの場合が社長です)とのコミュニケーションも多くなります。会話の中で、私の仕事をどう効率よく回して頂くかという話によくなるので、その時に有意義かつ他のことにも応用が効くような改善提案が出来たらきっと喜んで頂けると思うんです。

癒着を連想される方もおられるかもしれませんが、前の会社で学んだ「勤務中は仲良く尊敬を持って接するが、勤務外はノータッチ(会食禁止)」を今も守っています。

人生100年時代対策

最後の理由は、先の人生を見据えた時、ブランドを移譲するか仕舞うという選択も出来るよう働き方の選択肢を増やしたいと考えたからです。

生涯現役でブランドを運営するには、時代や顧客に合わせて常に中身を更新していかねば継続できません。
自分の軸がファッションである場合、生涯意欲的に取り組むことが出来るかもしれませんが、私の場合、軸はあくまでも国産繊維の価値化と持続化であり、服を作り続けることがゴールではないのです。

資格を得て視野を広げることで、出来上がったものを使うことだけでなく、経営戦略やオペレーション改善から繊維産業を支えていくこともできそうだなと考えています。
士業は若さや体力よりも経験や視野の広さが尊重される仕事です。
歳を重ね、時代の空気や最新のリテラシーをキャッチアップしづらくなってきたら、仕事のウエイトを柔軟に変えられるよう3年計画で準備したいと思ってます。

いろいろとキラキラしたことを書き連ねましたが、中小企業診断士はちょっとやそっちじゃ受からない膨大な勉強時間を要す資格なことは重々承知です。
大学は推薦入試、入社試験が無い程の小さい会社に面接だけで入社した私にとって試験勉強は高校受験ぶり…。
勉強時間を確保しつつも、仕事と家庭の安寧を保つことが2024年最大の目標となります。

カタチから入るタイプなので、1mmも勉強を始めてないのに先にnoteを書いてしまいました。
先が思いやられますが、試験勉強自体がビジネススキルを上げるものなので、合格にこだわりすぎず適度に勉強時間をつくっていこうと思ってます。


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