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【忍語り】ミニットマンについて語る【凍京NECRO SMコラボ記念】

 2020年7月9日、ブラウザ/スマートフォンゲーム『凍京ネクロ SUICIDE MISSION』にてコラボイベント、『凍京NEO-SAITAMA』が始まった。完成度の高いシナリオ、ヌルヌル動くフジキドとヤモト、ソニックブーム=サンから無限にスシ回収が出来るシステムによりニンジャスレイヤーヘッズは大いに沸き立つ事になった。また、凍京で生きていく向こうのニンジャスレイヤーの活躍に、今後も目を離すことができないだろう。

 だが、忍殺未読の凍京プレイヤーは疑問を抱いたのではないだろうか?「バトルに出てきたラオモト・カンやソニックブームはいいとして、序盤に立ち絵だけ出てきたミニットマンというキャラは何者なのか?」と。Twitterを漁るとミニットマンの立ち絵に喜ぶヘッズの姿ばかり。重要キャラかと思いニンジャスレイヤーWikiを覗けど登場エピソードは僅か1話のみ。コラボシナリオ中でも、リビングデッドニンジャの1号であった事が明かされるが、あの場面は他のニンジャでも代用はできた筈だ。

 あのミニットマンというニンジャは一体何者なのか……?本記事では彼について述べると共に、立ち絵付きで登場した理由について考察するものである。

 なお、コラボイベントの詳細については以下を参照。


1.ミニットマンについて

※以下は公式イラストを参照して私が描いたウキヨエである。

ミニットマン

 改めて、ミニットマンというニンジャの特徴について記していこう。邪悪なニンジャ組織、ソウカイ・シンジケートに所属しており、ラオモト・カンの命令によって動く末端の兵士である。モータル(人間)としての名前は明かされていないが、元軍人であり、忍殺世界では2000年以降に発生した電子戦争に従軍している(向こうの日本に第9条は存在しない)。イクエイションというニンジャと組んでいるが、電子戦争時代からのコンビである。

 肝心のニンジャとしての実力だが、ニンジャスレイヤーに秒殺されるレベルである。コラボシナリオでは不意の登場から倒されていたが、小説内でも一瞬で倒されてしまっている。ソニックブームら幹部級のニンジャと比較しても実力差は歴然であり、いわゆるサンシタと呼ばれる実力下位者と同一視しても差し支えないだろう。

 そんな彼の強みだが、一つにはチーター並の速度を誇る匍匐前進が挙げられる。一般に匍匐前進状態ではただ走るよりも速度が劣るが、彼の鍛え上げた身体能力、ニンジャビリティがそれを可能とするのだ。レーダーによる追跡と併用することで、ミニットマンは高速の追跡者と化す。常人であれば、彼から逃れることは不可能なのだ。

 そしてもう一つ、ミニットマンに宿ったニンジャソウルが授けたジツ、シニフリ・ジツがミニットマン最大の特徴だ。ニンジャは死ねば爆発四散する。如何様にしてか、ミニットマンは死を偽造する事で「ニンジャが死んだように見せる」ことが可能なのである。コラボシナリオではすぐに見破られた奥の手だが、本編では1度はニンジャスレイヤーを欺いた強力なジツなのだ。

 こうしてニンジャスレイヤーの魔の手を1度は逃れた彼が、反撃に打って出るエピソード。それこそ彼の登場回、「ゼロ・トレラント・サンスイ」なのである。


2.ミニットマンの登場エピソード


 忍殺史上、あるいは最も読まれたかもしれないこの物語。何を隠そう、連載が始まって最初のエピソードがこの物語なのだ。「起承忍殺」などというコトワザがあるが、悪いニンジャが1人現れて、そいつがニンジャスレイヤーに殺される構成のエピソードだ。特撮好きな読者にとっては、その回に登場するゲスト怪人だと思えば理解しやすいだろう。

 さて、肝心の物語は「これまでのあらすじ」から始まる。相棒のイクエイションは既に真っ二つ、ミニットマンも既に奥の手のシニフリ・ジツを使った所から始まるのだ。お気づきかもしれないが、コラボシナリオ「ザ・シティ・コールド・コールド・トーキョー」の冒頭はまさにゼロ・トラレント・サンスイの再演だったのである。

 コラボシナリオとは違い、まんまとニンジャスレイヤーを騙し通したミニットマン。だが、相棒のイクエイションは既にこの世にいない。帰還する選択もあっただろうが、ミニットマンは相棒の復讐のため、ニンジャスレイヤーを殺す選択を取るのである。つまるところニンジャスレイヤーとは、ニンジャスレイヤーに復讐するニンジャの物語から始まっていたのだ。

 最後にミニットマンが爆発四散するまで、物語はミニットマンの視点で描かれる。降りしきる酸性雨、汚い地下通路、満員電車――今更だが、この小説は群像劇である。ヤモトのような主要キャラクターだけでなく、時にはその回で死ぬ悪役の視点でも物語が進行するのだ。その作風を初っ端から切り開き、まさに匍匐前進の速度で生き、死んでいった彼の物語を、多くのヘッズは胸に刻んでいる。


3.なぜ彼は凍京に招かれたのか?


 そろそろ本題に入ろう。即ち、彼がわざわざコラボシナリオにおいて立ち絵付きキャラとして登場した理由の考察である。

考察その1:読者が最初に出会ったニンジャだから

 「ゼロ・トラレント・サンスイ」は初エピソードであるため、ミニットマンは記念すべき最初のニンジャと言ってもいいだろう。ある種のリスペクトとして、コラボ記念に呼ばれたというのは考えられる。ただし、地上波でも放送されたアニメ「ニンジャスレイヤーアニメイシヨン」の1話は「ボーン・イン・レッド・ブラック」というエピソードから始まっており、ミニットマンは総集編の一瞬にしか登場しない。

 また、ニンジャスレイヤーは3作品コミカライズを展開しているが、初話として「ゼロ・トラレント・サンスイ」が描かれたのは「グラマラスキラーズ」のみであり、「ニンジャスレイヤー殺(キルズ)」では「ボーン・イン・レッド・ブラック」が序章として描かれ、次の話に「ゼロ・トラレント~」が描かれる。また、いわゆる「無印」では「マシン・オブ・ヴェンジェンス」という別のエピソードから始まっており、「ゼロ・トラレント~」は描かれていない。

 纏めると、「ニンジャスレイヤーの第1話」が複数存在するため、ミニットマンと最初に遭遇していない読者・視聴者はたくさんいるのだ。「無印」「アニメイシヨン」のみを見た方は、そもそもミニットマンの存在自体を知らない、或いは印象が薄いのではないだろうか?これらの理由から、筆者はこの説には否定的であり、次の説を推している。

考察その2:象徴的な復讐者だから

 ニンジャスレイヤー1部「ネオサイタマ炎上」は復讐の物語である。ニンジャスレイヤー個人に対して復讐を企てるニンジャ、モータルは後に何人か登場する。だが、ミニットマンほど刹那的に散った復讐者はいないと言っていい。1部のニンジャスレイヤーは決断的な復讐者であり、ミニットマンは言わばその影法師なのである。

 繰り返しになるが、「ゼロ・トラレント・サンスイ」は復讐の物語である。そしてミニットマンは志を果たせずに死ぬ。連載順的に復讐者のバトンを紡がれたニンジャスレイヤーは、暗く重苦しい復讐の道を歩む事となるのだ。一歩踏み外せば、待ち受けるのはミニットマンと同じブザマな敗北。そんな彼を引き上げようとしてくれる仲間がいるのだが……それについては、是非とも本編を読んでいただきたい。


 さて、ここでコラボイベント「凍京NEO-SAITAMA」を見てみよう。このシナリオは復讐の物語であっただろうか?答えは否である。凍京に招かれたフジキドには復讐する対象がいない。凍り付いたマッポーの東京で、生きていかねばならないのだ。新生ソウカイ・シンジケートと激突するものの、戦う動機は復讐とは異なる。即ち、凍京に生きる一人の人間としての叛逆だ。

 復讐の物語でない以上、この物語に復讐者は不要である。復讐の否定。「ゼロ・トラレント・サンスイ」の否定。この本編との対比を描くために、ミニットマンは凍京の地に現れたのだ。ミニットマン自体は本編同様に死を迎えるが、「ゼロ・トラレント・サンスイ」がなかった事で、ニンジャスレイヤーは物語上の復讐者のバトンを受け取ることはなかった。ヤモト・コキにとってソニックブームの打倒が一つのテーマなのだとしたら、フジキドにとっては復讐の物語=ミニットマンの物語を断つ事が重要なテーマだったのかもしれない。

 纏めると、ミニットマンは復讐者の代表的なキャラクターで、彼の復讐を早々に挫く事が物語上の「復讐の否定」になっているのではないか?というトンデモ考察である。成否の程はともかく、ここまで考察の余地のあるシナリオを執筆していただいた凍京NECROシナリオライター=サンに改めて称賛とスシをお送りしたい。


5.未来へ


 いかがだったであろうか?こうした考察長文記事を書くのは初めてだが、少しでもミニットマンに、そしてニンジャスレイヤーに対して関心を高めてもらえたら嬉しい。

 そして膨大なエピソード数に足踏みしている読者諸兄へ。かつて私も「ニンジャスレイヤーアニメイシヨン」視聴後に参入し、似たような事になった経験がある。だが、どのエピソードにもこうした魅力的な人物が登場し、語りたくなるほどの何かがあるはずだ。適当に目についたもの、あらすじを読んで気に入ったもの、あるいは時系列のはじめから。それが部、シーズンの最終話でもない限り、目の前のエピソード1つと向き合うだけで十二分にこれまでにない体験が得られるだろう。

 現行エピソードで明智光秀(ニンジャ)が空中ラリアットを決めようとしている事などはひとまず脇にでも置いておいて、凍京に慣れ親しんだ皆さまには、是非ともネオサイタマにもダイヴしてみてほしい。

 ついでに凍京NECROで今後ニンジャスレイヤー=サンが出てきたらぜひとも教えてほしい。ホントに。すぐ見に行くから。行けるから。現行でプレイ中だから。待って、ちゃんと話を最後まで聞いてほしい。待っ――


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