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対局直前 2020手合い②-1プロローグ

1月23日は本因坊戦の予選Aで潘善琪八段と対戦した。

朝、対局場について一つ失敗に気づいた。近年、世界戦の増加や棋士からの希望もあって椅子対局が増えている。人気マンガ「ヒカルの碁」作中の対局室はほぼその通り描かれていて、連載当時(20年~15年ほど前?)はあのような畳部屋だったが、現在は改装されフローリングの部屋で椅子対局が大半だ。和室は幽玄の間を含め5部屋しかない。棋士はそれぞれ対局前に和室(つまり正座での対局)か椅子か希望を出すことができる。希望の部屋が分かれた場合は序列上位者の希望する部屋での対局となる。

私は椅子希望で、最近はほとんど椅子で対局していて、てっきりそう思い込んでいた。

ところが到着すると「行雲の間」での対局となっていて、意外!

まあそれはそれで良いのだが、何が失敗したかというと昨年作ったスーツである。プロ入りすぐのころは、正座ありきでスーツを作っていて膝が抜けないようにだったりいろいろ棋士特有の注文をした記憶がある。一言でいえばけっこう余裕のあるつくり。ダボダボ、に見えていたかもしれないが丁度良かった。

ところが、最近は椅子席での対局が大半で、イベントなどの仕事も頂くようになってきたので、昨年ピッタリしたサイズのスーツを作った。そして昨日もそれで対局に向かったのだ。

盤の前に正座すると・・・・きつい・・・特に胡坐がほぼ無理なのにはしびれた。文字通り足がしびれた。

ちなみに私が通っていた緑星学園では胡坐は禁止で朝から晩まで10時間以上正座が絶対であった。が今は昔で私は20代半ばの公式戦あたりからは正座と胡坐を交互にするスタイルにした。椅子対局の希望が出せるようになってからは、椅子希望をだし、棋士全体で見てもそちらのほうが多くなった。

しかし、緑星学園の先輩である山下敬吾九段の胡坐は未だに一度も見たことがない。昔、「しびれないんですか?」と聞いたことがあるが「正座の方がらく」と答えられたのが忘れられない。

正座での対局を読み切ってスーツを作る、将棋の佐藤天彦九段は本当に凄いな、と切実に実感した。

刹那、対局開始のブザーが鳴った。

自分の場合、着たいと思った服を選ぶと99.9%似合わない、と言われてトラウマである。


囲碁のことを書こうと思っていたら正座について随分書いてしまった。内容についてはまた次回。

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