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幸せのサイゼリア

幸せのサイゼ
土曜日の昼間。外は9月だというのにジリジリと照りつける太陽が秋の訪れを拒んでいるようだ。

街は新型コロナで人が減っているらしい。たしかに前は人通りが多かったところもその姿を確認することができないぐらいに。

今日のお昼はどうしようかな?

17時から散髪の予定が入っている。読みたい本もある。予定はいっぱいだ。だがどうだ、家にいても本を読む気が起きない。
本は読みたい、新しい本が新たに2冊届いたが、封を切り、机に並べるばかりで手をつけていない。家だとちょっと面倒いのだ。不思議なものです。

昼飯を食べながら本を読んで時間をつぶす。そしていい頃合いに散髪に行けばいいのでは?我ながら天才の発想だ。微塵を隙がない。

届いたばかりの本を鞄に詰め込み、クイズノックの生配信を聞きながら意気揚々と扉を開けた。この時点でこれを書いているのがいつなのか分かる人にはわかるだろう。

昼飯を食べながら本を読める場所。
鳥貴族は?ーあそこは服が臭くなる。
回転寿司は?ー大手チェーン以外はカウンターでバツが悪い。
スタバは?ー意識が高すぎて座れない。

どこもダメじゃん…外食と相性が悪すぎる…
気落ちしながらぶらぶら歩いている大手ファミレスが目についた。

そうだ、サイゼリアだ!

安い、ファミレス、酒もある!パーフェクトプレイス。暇つぶしの桃源郷だ。

意気揚々(2回目)と向かうとそこには行列。心が折れるよ、まじで…
だが、店前に椅子がある。受付待ちの人数も少ない。しめた!ここしかない!すかさず受付表に名前を書き、椅子に座り本を開く。この待ち時間も一つのエンタメなのだと自分に言い聞かせながら読書を始めた。

そんなエンタメを味わいながらの待ち時間。新幹線が通り抜けるような速さで時が過ぎ、偽名で記入した名前が店員さんから発せられた。

「1名の田中様!」

誰なんだよ、田中って。
よくある苗字はこういうときに使いやすい。ありがとう田中さん。

席につきまず頼むのは白ワインのデカンタ 500ml。
これをメインにメニューを考える。ピザ、ドリア、ラム串、ピクルス。夏だからこそ食べたいものもあれば、白ワインだからこそ食べたいものがある。

魚介類は?知らんな。

後ろの席で呼び出しボタンの連打をしている。ピポン!ピポン!

ファミレスとは混沌とわがままと喧騒とが合わさったカオス空間である。だからこそ自分を気にせずに、周りを気にせずに自然な気持ちで過ごすことができる。

あぁ、幸せだ。昼から白ワインをかっくらい、美味いイタリアン料理を格安で食べられる。

デカンタがなくなった。さて、本番はここからだ。

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