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『打上花火』はスゴい曲

これ去年書いたノート。恥ずかしくて下書きから上げられないでいたのだが、読み返したらやっぱり自分の稚拙さがよく出ていて、恥ずかしくて笑えたので上げてみる。

(評価みたいな事、わたしが書いていい立場でもないのだが、褒めたくて褒めたくて仕方がない時がある。立場より表現の自由を優先させちゃうけど、も~ね、ユルシテ!)

TV番組『関ジャム』が好きで、音楽の裏側の話などが面白くて一人なのに「スゲー、スゲー」叫びながら見てる。特に最近、編曲ってスゲー!!ってことを教わり、音の構成・編集でこんなにも曲が変わるのか!と感動している。作曲できる人は、もうずっと前から尊敬していたのだが、編曲がどういうものなのかよくわかっていなかった。(今もちゃんとはわかっていないのだが。)

この曲はメロディーだけでも十分ステキ。カバーしている人たちの歌を聞けばわかる。違う演奏で違う人が歌ってもいい曲なのだ。作曲した米津玄師さんは天才だと思う。

わたしは音楽好きだが、楽器もできないし専門的な知識も乏しい。何を間違ったのか音波のほうに興味を持ち、一度は音波の研究者を目指したほどだ。(実はまだ目指しているのだが。)どんな種類の音波がどこによく届いてどんな作用をするのか、それを研究しようとしたのだ。

そんなわたしだからか、この曲を聞いたとき「???」と思った。呼び起される感情があまりにも複雑だったからだ。切ない、怖い、美しい、緊張、、、などなど。なんでこんなたくさんの感情が呼び出されるのか?何度も何度も聞くうちに曲の緻密な構成に少しづつ驚き、それらが合わさって大きな驚きになった。

まず頭に残るのはサビの初めだ。”パッと光って咲いた” ここを盛り上げるための工夫がハンパない。1番のサビ前は…とか説明してもいいのだが、聴けばわかるので割愛して、わたしが一番すごいと思ったのは、1サビ、2サビ、3サビとだんだんとリスナーがサビを待ち望むように仕掛けているところだ。1サビは”パ”から爆発するようなボーカルと伴奏で、たくさん重なった音の華やかさは打ち上げ花火のようにきれいだ。ドラムやストリングスの音は連発して輝く中くらいの打ち上げ花火を思わせる。2サビは直前の10秒近い間奏でリスナーを待たせ、早くサビが聴きたい!と思わせる。3サビはもうわたしなどでは理解できないような、「なんでその音入れられるの?」と思うくらい怖いエレキギターの音が踏切の警報音のように入り、その恐怖から逃れたい気持ちも相まってさらにサビを切望する。”パ”から爆発する音達は、今度は流れるようなストリングスの効果なのか空全体を覆うような大きい花火か、それともその時の空気なのか、はたまた”答え”とか”終わり”のような全体的なものを思わせる。

わたしは映画を見ていないので、もし誰かが花火をこんなにも待ち望むようなストーリーだったらすごいなと思う。ぜひ答え合わせをしたい。また、何度も純粋な楽器の音と電子音に近いような音が入れ替わるので、例えば過去と未来や、空想と現実のような違った場を行き来するストーリーだったら合っているなとも思う。そして、あの怖い警報音のような音が効果的に使われていることから、映画ではなにか腑に落ちない謎のようなものが横たわっているのかなとも思う。

DAOKOさんの歌声は、ストレートに情感を表す声とは違う。音波好きからするとたまらない声だ。なんと表現したらいいか、子供でも大人でもない複雑な声と彼女ならではの歌い方は、簡単に聞き流せないミステリアスな個性を曲にもたらしているような気がする。

最後に、わたしが最初に持った違和感なのだが、打ち上げ花火はパっと光って静かに消えたりはしない。あのドーン、バン、バチバチという爆発音が醍醐味だ。最初は「作曲者は打ち上げ花火を見たことが無いのかな?」なんてアホな解釈をしたのだが、聴くうちに、そして映画の題名『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を見て気づいた。「あぁ、パっと光って静かに消えるのは花火のことじゃないのか。」

曲がこれだけストーリーを語ってくれること自体が驚きなのだが、連想できる上記のストーリーが映画と合致していたらどんだけすごいんだ!と思う。曲中のそれぞれの音に意味なんて無くても、いい音楽が成立することは多いと思うのだが、この曲にはそれぞれの音に大事な意味が込められているように感じる。そして緻密で賢い戦略も盛り込まれているのだろうと思う。わたしの意識できないものも含め。いったいどういう思考回路の持ち主がどんな心で作り上げたのだろうとものすごく気になる。田中隼人さんをOhMy神アーティストに追加だ。

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