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もの買って来る 自分買って来る

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私の手元にやってきたもの。 タイトルは河井寛次郎の言葉。
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記事一覧

10【レインシューズ】

基本的にどこに行くにでも、革靴を愛用している。 定期的に汚れを落として、磨いて、メンテナンスして・・・という工程も含め、革靴が好きだ。 ハタチそこそこの頃、何も考えずに革靴を履いて出かけ、大雨で水没させた。 今の自分なら、思い出して青くなるような事案だけれど、その時はレザークラフトを生業とする知人にひどく呆れられた。 当時住んでいたのが 雨の街・金沢 ということもあり、私は真剣にレインシューズを探す必要があった。 最初に買ったのは、”ロングレインブーツ”。 黒のゴム製

いつものスーパーマーケット

休日だというのに体力的にも精神的にもひどく憔悴しきった日があった。 さっさと家に帰ればいいのだけれど、それも違った。 家に帰って一人になったら、膝を抱えててそのまま暗闇に紛れ込み、二度と戻って来られなくなる気がした。 家はシェルターであり、家はひとりぼっちだ。 ふらふらと、ぼんやりと街を歩く。 頭が回らない、何も考えられない。 どこに行けばいいのだろう。 *-----* するとどうだろう。 自分でもちょっと信じられないようなことだったのだけれど、 私の足が無意識に向い

9【円相の酒杯】

五条坂の陶器祭りに行った。 全国的に見ても有名な陶器市なんじゃないだろうか。 出店者のラインナップもバラエティに富んでいるというか、 やや混沌の様相を呈していると言っていいほど懐が大きい。 昨今の、微に入り細に入り作り込まれたクラフトフェアなんかとはだいぶ違う。 酷暑の京都、庇も街路樹もない五条通にずらりと並ぶテント。 昨年も訪れたけれど、歩くだけでサバイバルだ。 ひとつひとつ見ている余裕はない。 早足で歩きながら見定めていく。 とある店舗の前の仮設商品ケースの中の器が

わたしがものを買うわけ

三姉妹の真ん中、姉とは年子。 10歳以上年齢の離れた従兄弟や親戚が、近所に住んでいた。 当然のように幼いわたしにはたくさんのお下がりが与えられた。 お姉ちゃんとお揃いの可愛いお洋服、 おままごとセット、リカちゃん人形、 どこかパーツがない親戚のおもちゃ、 ゲームセンターでとったキャラクターのぬいぐるみ。 みんな良かれと思って与えてくれた。 自分で選んだ記憶はほとんどない。 誰かからもらったケーキの詰め合わせ。 「憂ちゃんはチョコレートが好きよね」 というみんなからの期待に

8【白化粧灰釉湯のみ】

なんどもなんどもモノは見たことがあったのだけれど、初めて手元にやってきた尾形アツシさんの灰釉湯のみ。 鉄分の多い土に白化粧、灰釉が黄色とも萌黄とも言えない色合いを出している。 口元には石爆ぜ。 尾形さんの器には、一目見てそれとわかるような強烈な個性がない。 実直な工程で生まれるうつわは自分自身が意識を蔑ろにしていると素通りしてしまうタイプのそれだ。 けれど、一旦惹きつけられると強い。 フォルムの細やかな部分、白化粧の具合、焼成、どこをとっても気を抜かれていないことがわ

7+ 番外編【シチズン ホーマー】

以前書いたnoteの下にくっつけていた文章が、 読み返すとけっこう好きだったので別記事でアップし直します。 *-----* 文字通り、愛用している腕時計がある。 シチズンのホーマー。 旧国鉄時代に駅員さんに貸与されていた手巻きの腕時計。 本体裏側には、年号や使われていた駅名が刻印されている。 ※ただいま修理中につき、良い写真がないのが残念。 大きな文字盤と、視認性の高い数字。 針と12個の数字部分には蓄光塗料がついていて、トンネルなど暗いところでも時間が確認できるよう

7【シチズン Q&Q フォルコン】

腕時計を探していた。 数年前からメインで使っているシチズンの手巻き時計に不具合があり、 修理の間だけ必要になってしまった。 腕時計は、そのメイン以外を使うということを考えていなかったので焦った。 代機はできる限り手頃な値段ですませたい。 かといって、ホームセンターのサービスカウンター前で売っているものを買うのもテンションが上がらない。 さてどうしたものか。 あ、一つ候補があった。 ”チープカシオ”だ。 時計大手のカシオが作っている腕時計。 デザインや機能で腕時計と

「いい器使ってみたいんですけど、全然知識ないんですよね」と言われた。 「知識あると良いこともあるかもしれないですけど、基本的には暮らしのものなので、【家にあって使ってる時に自分のテンションがあがるか】が要な気もしますよ」と答えた。 数日経っても、「そうだよな」と自画自賛している

つくる考2 FLOAT LEMON TEA

大阪・西九条のThe Blend Inn。 空間 建築 街 コンセプト 人 etc いろんなものが三位一体となって素敵な宿だなと思う。 ここが素敵ですよ、という話はまたの機会に譲るとして先日インスタグラムで見かけたブレンドインの投稿 レモンティーと恋のお話 / 光浦醸造のレモンティーを飲むと さわやかな気持ちになる。 と同時に そのまっすぐな酸味や苦味が 自分の正直な気持ちに行き当たる きっかけになったりする。 明日 5/20の21:00より World Tea F

6【銀線細工のブローチ】

しとしとと冷たい雨が降る、屋外の骨董市。 悪天候のなかでも、遠くからでも、すぐに目についた。 イギリスのアンティーク、銀線細工のブローチ。 ただ、これが本当に銀なのかは私には判別できない。 黄ばみ方や黒ずみ方が、銀のような気はするのだけど・・・。 ピンはかなり太いから、ブローチといっても洋服につけるものではなかったのかもしれない。 ハットピン? ジャケットにつけるもの? そもそもこの二つは対で作られたものなのだろうか。 形の種類はよく似ている。 クロスというか、星とい

5【金彩花柄のグラス】

花柄が好きだ。 いつの頃からか気に入った花柄があると、素材が何であれ用途が何であれ洋の東西や新旧を問わず財布の紐が緩んでしまうようになった。 それも、比較的成人してからの話。 「花柄」 一言で済ませようと思えば万国共通。 世界中にフラワーモチーフは溢れているし、 古代から人は「花」に対して執着してきているように思う。 強いアイコンだ。 しかし、いかにアイコニックな図案だったとしても私のなかで 「お花だったらなんでもよい」 というものではない。 花にだって描かれ方があ

4【硝子のろうそく立て】

灯火具が好きで、細々と買い集めている。 小さな硝子製のろうそく立て。 そのストンとしたフォルムや面取りが施されたデティールに、ヨーロッパのものかと足を止める。 聞けば、大正時代の硝子製。 割線が残っていて、内側は空洞。 作りはそんなに丁寧でもないし、大量生産だろう。 時間が経った硝子製品によくある、ごわごわとして波打つような肌。 対になって仏具として使われていたものだろうか? 乳白色の曖昧とした姿は、神棚のもののようにも思える。 内側の、放射線状に伸びる線が可愛らしい。

3【ミモザ】

2月の中ごろ、まだ肌寒い日。 自分のためにミモザを買った。 「今シーズン初めてのミモザです」と店の人が教えてくれた。 お花に詳しくないので、花屋ではいつも買うのをためらってしまうけれど思いきって 「このひと枝を短くできますか?」 と聞いたら、長い枝をパチンパチンと切って小さく束ねてくれた。 もっと花がたくさんついている枝もあったのだけれど、 私にとってはミモザの葉のグリーンがあまりにも美しく 花は少しだけついているものを選んでもらった。 ミモザの、たわわに咲く花の黄

2【中国童子針山】

べんぱつ。 それぞれ黄、青、桃、緑の服を着た子供たちが手を繋ぎ、何か大きな赤い球体を囲んでいる。 古代の中国の子供達を模したこれは、いわゆる唐子。 これは、針山、つまりピンクッション。 神戸の中華街のお土産物屋。 春節祭真っ只中の溢れる人混み。 なだれこむように入った、あふれんばかりに雑多なものが陳列されたお土産物屋で目が合った。 チープである。 なんだか薄汚れている。 ・・・粗い。 いやいや、買わないだろう。 しかし、店を一回りしてまた戻ってきてしまう。 再び