映画「夢売るふたり」感想

西川美和監督映画感想第5弾。ネタバレあり。

映画感想

面白かったは面白かった。しかし、これまで見てきた4作品に比べて理解しきれなかったところが多い。特に後半30分。急に物語をたたみこみに入ってしまってそれまでの流れをぶった切ってそれで終了してしまった感があった。理解できなかったのは連続で映画見続けて疲れていたからかもしれない。

俺が想定していた流れとしては、阿部サダヲ演じる夫が松たか子演じる妻里子の助けをいらなくなった(ある意味自立した)ことに不満をもって新しい店に火をつけるだった。「火には気を付けて」っていう伏線と思えるセリフもあったし。

これまで見てきた西川美和作品では善悪ってなんだろうねみたいな感じだったけど、この映画では結婚詐欺的なものは悪だよって明確にメッセージ出したってこと?一般受けを狙った?邪推してしまうとやはり女性監督だし、結婚詐欺を半ば肯定したまま終える話は無理だと判断した?(これは女性差別?)

里子が夫がもらってきた手切れ金に火をつけた時は「あ~嫉妬とか裏切りへの復讐で非合理的な行動してるな~。俺だったら「私の夫女たらしの才能あるな。また同じような感じで金ひっぱってこれねえかな?」とか考えるのに」と思っていたら正にそういう行動をかなり積極的に取り始めたのでびっくり。これは面白い映画になりそうだぞって感じだった。だからこそ、後半ちょっと俺は解釈違いだった。でも、人の心の動きは十分面白かったので見て良かった。

里子について

自己犠牲的に人をサポートすることが得意な(ある意味好きな)人間が復讐に走るとこうも合理的な行動に出るんだなって思った。夫がもらってきた金が自分を裏切って得てきた金って気づき感情を処理しきれなくなり防衛本能が働いて裏人格が出たってことなんだろうなと解釈。

人を助けることが得意っていうことは人が求めていることが分かる。そして、人に助けをこわなければならないことっていうのはその人の弱点でもある。弱点をカバーしてあげようって考えられる時は、良く気が利いて親切な人なんだろうけど、利用してやろうってなると無慈悲な搾取マシーンになる。俺はどちらかというとマシーン側なので、里子の変化に「welcome to underground」って感じであった。

ただ、俺の場合は自分のために他人の弱点を利用するけど、里子の場合は本質は他人のための人だから中途半端な感じで暴走していたな。自分が本当は何をしたいのか分からないままとりあえず店を立て直すという夫の目的を自分の目的にすり替えて手段を問わずにそれを成そうとしていた(夫や夫にに群がる女たちへの復讐をかねて)。


序盤ラーメン屋でバイトしていたあたりは、火事で店を失って夫の言葉を借りれば貧乏くじ引いたわけだけど、里子にとっては夫を支えてそれで感謝してもらえることが幸せだから別にそれで良かった。けど、裏切られたので夫にどんな形であれ自分に依存させようと豹変した。

結果的に歪んだ形ではあれ夫は里子に依存し忠実になった。しかし、オリンピック選手に肩入れし過ぎる兆候が出たり、デリヘル嬢に里子のプランではなく勝手に親切にし始めたりと夫が自分の意志を持ち始めて里子の思惑はくるいはじめた。

こんな流れだからこそ夫の気をまた引くために新店に火をつける流れだと俺は思ったわけなんだ。実際には知らないうちに2人はバラバラになっており、里子はラーメン屋の店長という新たな寄生主に寄生しようとしていたみたいな感じだった。こっちの流れでも物語としては面白いんだけど、夫が不倫相手(今更何が不倫なのか分からないけども)の子供が人を包丁で刺してしまったので、身代わりで逮捕されるあたりのくだりは必要だったかなあ?と言う感じであった。それであったら里子は結局寄生する相手は誰でも良かったみたいな面を全面的出す方に時間割いた方が俺好みではあった。

夫について

阿部サダヲのキャラがマッチしていて良かったね。決してイケメンではないしモテる感じのビジュアルではないけど、母性本能をくすぐる性格なり雰囲気をもつ天性があるって言う感じが良く出ていた。

人から好かれるためにはやはり弱さを見せることなんだろうなと思わされた。俺はどうしても強く見えるらしいので、なかなか人たらしになれずにいる(人たらしになってより多くの人をコントロールしたい・・・)。

結婚詐欺まがいなことをしているけど、その対象のことは本当に好きになったり、思いやったりするんだろうなこういうタイプはという感じでこの部分は善悪の共存という西川美和監督の映画ぽい感じがした。

人から好かれるにはまず自分が相手を好きにならなければならないということを肝に銘じなければなと思わされた。どうしても他人は危険か無害か。利用できるかできないか。っていう視点で見てしまうからな・・・。なので、「お前の見ている世界の方がよっぽど不憫だよ!」ってセリフは俺に効きました。

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