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覚醒された創造性が喜多方を活気づける。

マネージャー(現 社長) 鈴木治代さん

 鈴木さんを街で見かけるが、いつも時間がない雰囲気をまとっているため、声をかけることもできずにいた。そこで本紙取材のためアポを取り、話を伺うと、彼女の抱える事業の話題を次々に横断していく。

 十一年間務めて事務職を異動するという話が出た時に、次のポストとして選んだ部署はガソリンスタンドを主なる事業とする山庄商店。

「会社として大変そうな時期で、私に何かできるのではないかと思って。いざ入ってみると、セルフのスタンドは一般のスタンと比べると3円ほどの価格差が普通なんですが、山庄のスタンドと向かいのセルフスタンドとの値段差が二十五円もあったんです」

大きな差に関わらず来てくれるお客さんにヒアリングすると、スタンドのスタッフに会いに来てくれるとのことだった。

「やっぱり人なんですよ。どれだけお客さまとコミュニケーションが取れるかが大切だと思った」

そんな折に、地域情報サイトの「まいぷれ」を誰かやらないかと、親会社から声がかかった。これを通じてコミュニケーションが取れると思い、引き受けた。そして地域の情報を拾うために、さまざまな場所に行き、地域の人たちとコミュニケーションを取っていった。そこで今の鈴木さんが生まれる出会いがあった。

「街を回っている時に百合子さんに会って、そこでファッションショーをやったんです」カフェのコッコツリーを会場にファッションショーをあづま旅館の女将の齋藤百合子さんと一緒に開催した。そこを通して地元の人たちや企業とつながっていった。それを機に、喜多方を走り回る鈴木さんが生まれた。人が成長するときに必要なのは、情報でなく自分の中で起こる「気づき」である。「気づき」は身体体験が必要である。それは地味な下準備から始まり、関係者とのコミュニケーション、思い通りにならない段取り、華やかな舞台、成し遂げたことの仲間との共有など、一つひとつがその人を変える気づきとなる。そして人は変わる。

 今抱えている事業(ふるさと納税、酒作り、マルシェ、農産物利用、地域課題解決等)について疲れることもなく、しゃべり続けている鈴木さんの話を聞いていて「ガソリンスタンドの人」ということを忘れていた。 が、肩書はどうあれ、思い立ったら即行動の鈴木さんは喜多方には欠かせない人物であることには変わりはない。街に転がっている価値の切れ端をつなぎ合わせて、市民を元気にする価値にしていく。ミケランジェロのような人だけを芸術家と言っていた時代はもう終わった。社会をキャンバスとして価値を掘り出す人たちも芸術家と呼んでも良いだろう。


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