日本財団の研究 Colabo問題を読み解く人脈マップ
はじめに
今回の日本財団の研究では、いま話題のColabo問題です。
いま、Colaboを批判する人たちと、擁護する野党支持者にネット世論が完全に二分しています。
前者の論調の多くは、Colaboに便宜を図ったのは野党側であるというものです。
それに対して、野党支持者はミソジニー男性による迫害差別案件であると信じています。そして、「権力」によって不当に弾圧を受けているとみる向きもあります。
私は、どちらの見方にも与しません。
まずこちらの動画を見てください。自民党議員のColaboに対する軽微な「ハラスメント」疑惑について、あの安倍首相(当時)が平身低頭謝罪しています。安倍首相が、ここまでへりくだる姿を他に見たことがありますか?
安倍首相がColaboの後ろ盾が誰かを明らかに知っていて、それに対して頭が上がらないのです。これまでの尊大な態度から鑑みるに、Colaboのバックが野党なら、このようなことは決して起きないはずです。
Colabo問題については、実は第三の見方があります。すなわち、Colabo・仁藤夢乃周辺と権力側との結びつきを重視する、比較的少数の人間です。私はこれまで日本財団研究をしてきた蓄積から、その立場が正しいと考えています。
日本財団と共産党、奇跡のコラボ
さて、Colaboの不正会計疑惑をめぐり、多くの組織や政治家が擁護に立ち上がりました。その中には、弁護団と支える会の他に、立憲民主党と共産党の国会質疑、野党支持者がいます。
その中に、この時期に日本財団があえて仁藤夢乃に関するネット広告を出していたという話があります。
日本共産党と日本財団の両者が、民間団体を擁護するために動いているというのは、戦後政治史を知っている人からすれば驚くべきことです。なぜなら、日本財団創設者の笹川良一は、文鮮明と組んで国際勝共連合を創った本人で、その主要ターゲットは日本共産党だからです。逆に共産党も、統一教会問題を最先端で追及してきました。
その半世紀に及ぶ仇敵同士が、Colaboと仁藤夢乃の擁護に関しては、呉越同舟状態になっているのです。これはいったいどういうことなのでしょうか。
ここには野党か与党か、左翼か右翼か、という単純な二元論では決して理解できない構図があるのです。
戦略のための地図作り
今回のnoteは、この問題を理解するための広大な地図を提供するものです。人脈と資金の流れを理解すれば、政界について驚くべき全体構造が見えてきます。これは、単にColabo周辺の公金不正問題だけではありません。それがわかれば、なぜ野党が負けつづけているのかという問題を解明するための鍵にもなるのです。
戦略の基本は情報です。情報がなければ、自分がどこで何と闘っているのかわかりません。たとえば、将棋で対局するところを想像してみてください。ただしあなたは目隠しされて、相手の指し手も教えられず、盤面が皆目想像つかない状態です。対局者は、普通に盤面全体が見えている。そこまで情報に不均衡があれば、あなたがどんな名人であれ勝ち目は一切ありません。
孫子は「兵は欺道なり」と言いました。要するに、戦争は欺しあいだということです。自分が敵と闘っているつもりで、実は相手に巨大なアドバンテージを与えていることもあります。味方だと思って信頼していた相手が、実は敵の回し者だったりするかもしれません。寝返ったと思った友達が、実は自分の最大の味方だったということもあります。自分の周囲で何が起きているのか、そのマップが作れなければ、混乱に陥るのです。
はっきり言います。野党の政治界隈は、「敵か味方」という二元論にとらわれてきました。そして、味方だと思い込んだ人たちの人脈を調べることを怠り続けたのです。そして、自分たちがいま、巨大な罠に見事にかかってしまったことに全く気がついていません。そして、いまこの問題をめぐって、存亡の危機に直面していることにも気がついていません。
実は私は、今回のnoteは、Colabo問題を追及する人たちはもちろん、野党側の中の人にも読んでもらいたいと思っています(あまり期待はしていませんが)。
その理由は、皆さんに「命を大切にしてほしい」からです。それは暇空茜さんにも、野党の中の方々にも、心の底からそう思っているのです。だから、私に見えているものを、皆さんに共有します。
人脈マップを読み解く上での原則
人脈マップは、あくまでファクトベースです。ネット上で調査可能なファクトを積み重ね、人脈ネットワークを再構成します。ただし、それは極めて複雑なので、人間が理解しやすいように、ある程度簡略化したモデルをつくる必要があります。
人脈マップを読み解く際の原則を以下述べます。
人脈は目に見えません。なぜなら自分がその一部だからです。人脈の全体構造を理解しているののは、ごく少数のキーマンだけです。
したがって、圧倒的大部分のプレイヤーは、自分が人脈の中で何に加担してしまっているのかに気がついていません。
資本主義社会においては、資金の流れが最強カードです。継続的な資金提供者に、ほとんどのプレイヤーは逆らうことはできないからです。つまり、資金の流れ=指示系統だと解釈することができます。
どんなプレイヤーも人脈の内部観測者であり、そのすべてを知ることはできません。だからこそ、常に情報はアップデートしていく必要があります。
私のこのnoteも、順次アップデートする予定です。
本noteの注意点
1つだけ留意点を挙げます。今回のnoteはめちゃくちゃ長いです。ただし、前から順番に読む必要はありません。目次で、関心がある項目だけ見ていただければ大丈夫です。
本文の一部を、常識の範囲内でリンク付で引用することは構いません。ただし、人脈マップは、他に転載しないでください。
仁藤夢乃の人脈
まず仁藤夢乃・Colaboの人脈について見てみましょう。
野党人脈
まず、仁藤夢乃と共産党の関係で言えば、池内さおりが有名です。2021年の衆院選でも、仁藤は応援演説に入っています。
しかし実は、さらに近いキーパーソンとの関係は忘れられがちです。それが、元Colabo監事の打越さく良弁護士(2018年まで)、現在は参議院議員で、立憲民主党のジェンダー平等本部副事務局長です。
今回の騒動ではあまり論点になっていないが、2018年までのColabo会計責任者が、立憲民主党のジェンダー政策に関わっているのです。
右翼人脈
野党と強い繋がりがあると言われている仁藤夢乃ですが、実はその関係は比較的最近のものであり、実際の資金源は権力寄りであることがエコーニュースRの精密な調査で判明しています。
2017年までの民間助成金は、日工組社会安全研究財団(パチンコ業界・警察の天下り組織)・JT・日本財団が6割を占めています。
2018年以降、Colaboの資金提供元は不透明になっています。しかし20・21年度で日工研から511万円、21年度に日本財団から3509万円が入っていることが分かっています一般社団法人Colaboの分析(7)出所不明の助成金は誰が出したか・・・)。
警察との関係
また、人脈的にも警察との結びつきが強いのです。仁藤が最初に公職に就いたのは2015年、「第30期東京都青少年問題協議会委員」就任ですが、その事務局は青少年・治安対策本部であり、そのトップは後に大阪府警の本部長に就任する廣田耕一です。
2017年6月には「季刊現代警察 第153号」に寄稿しています。これは警視総監ら警察高級官僚が寄稿する雑誌であり、20代の「左派」運動家の文章が掲載されるのは異例です。
2014年には、日本財団が出資する政策コンテストで買春者に対する「成人補導制度」を提唱し、安倍昭恵から表彰を受けています。成人補導制度は、逮捕状なしで成人を補導できるため、警察にとっては大変に都合がよい制度です。
共産党との関係が深まったのはここ数年
このように人脈的にも政策的にも警察・右翼寄りだった仁藤夢乃ですが。2018年までの地方議会での質問のうち、共産党議員によるものは18件中3件、つまり16.6パーセントに過ぎませんでした。しかし、2020年以降は15件中14件、93.4パーセントの質問が共産党議員によってなされたのです。
日本共産党と仁藤夢乃を結びつけたのは、前出の池内さおりの可能性が高い者と思われます。日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017に、仁藤は日本共産党から池内さおりと斎藤和子の2人を招待しています。
Colabo・仁藤夢乃は日本財団と野党を繋ぐハブ
この2017年に、仁藤夢乃は日本財団のソーシャルイノベーションアワードを受賞し、賞金500万円を授与されています。
2021年にColaboは、日本財団の下部組織である社会貢献支援財団(安倍昭恵会長)から表彰されています。
https://www.fesco.or.jp/winner/2021_56/winner.php?wid=12597
仁藤夢乃はフェミ人脈(いわゆる「ナニカ」)との強い結びつきもあります。つまり、仁藤とColaboは国家権力側(日本財団・東京都を含む)・ナニカ・野党を繋ぐハブの一つになっているのです。
日本財団グループ
日本財団とは何か
最近は、政治家でも知らない人が多いので、あらためて日本財団について簡単に解説しておきます。(以下、日本財団について知識がある人は、読み飛ばしてもらって大丈夫です)。
日本財団の前身である日本船舶振興会は、「右翼のドン」「戦後最大のフィクサー」である笹川良一によって1962年に設立されました。財団の原資は、笹川がつくった「民間唯一の公益ギャンブル」である競艇の売上金です。
2019年の総資産額は2781億円、年間助成額は413億円。資産額・助成額ともにダントツで日本最大の財団です。
ちなみに総資産額2位の笹川平和財団も、日本財団傘下の財団で、主に外交を担当しています。他に主要なところで、シンクタンク機能を担っている東京財団(初代理事長・竹中平蔵)、ブルーシー・アンド・グリーンランド財団、笹川スポーツ財団、米日財団、社会貢献支援財団(安倍昭恵会長)など、多数の財団を傘下に抱えています。
日本財団の政治的影響力
現在、日本財団は一般に、福祉系のNPOなどに助成事業を行っている慈善団体であると思われています。しかしその見方は一面的なものです。
日本財団の前身である日本船舶振興会こそ、日本で比類なき最強の政治プレイヤーでした。去年大きな波紋を呼んだ統一教会でさえ、財団の駒の1つに過ぎないと言えば、その強大さが多少は想像がつくでしょうか。
現在の日本財団は、笹川良一の息子である笹川陽平の時代ですが、日本財団の影響力を調べていけば、現在でもなお我々一般人の想像を絶するものがあります。
笹川陽平は毎年夏、自分の別荘に自民党の主要な首相経験者を呼び寄せて、写真を公開しています。これを「認知プロファイリング」すると、被写体としては映っていない写真撮影者の絶大な権力を誇示する意図が明白です。
以下は2018年の写真ですが、ここに「将来の総理大臣」である岸田文雄が参加していることは注目に値します。
以下、日本財団の政治的影響力について簡潔に述べます
東京財団が森政権官邸をジャックし、また小泉政権を樹立させた。
維新は日本財団直系の政党。松井一郎は笹川良一の最側近の息子。維新・大阪市・大阪府の最重要ブレインは東京財団の上山信一。
東京財団の上山信一がブレインとなって、都民ファーストを支配下に置いている。
国民民主党の玉木雄一郎は東京財団出身であり、党の創設を笹川陽平がバックアップしている。
日本財団の政界への影響力は、少しずつ知られつつありますが、それを初めて事実を元に論証したのが、私の「日本財団の研究」初回です。未読の方はぜひお目通しください。
さて、ここまでは、過去の「日本財団の研究」のおさらいですが、ここからColabo問題を読み解くための大きな補助線をいくつか引いておきます。
笹川一族と岸・安倍家の関係
先に見たように、日本財団傘下の社会貢献支援財団の会長は安倍昭恵、故・安倍晋三元首相夫人です。笹川陽平と安倍夫妻は個人的にも非常に近い間柄であり、公私を問わず、かなりの頻度で面会していたことは、笹川陽平のブログ(「安倍昭恵」の検索結果 「安倍晋三」の検索結果)や、過去の安倍昭恵のブログからもわかっています。
日本財団の笹川家と安倍家(岸家)の関係は、少なくとも70年以上続く関係です。右翼団体・国粋大衆党を率いて満州でも政治工作を行っていたと言われている笹川良一と、満州国経済の実質的な最高責任者であった岸信介の間に、戦前に接点があった可能性もあります。確実に言えるのは、笹川良一と岸信介は、同じ巣鴨プリズンにA級戦犯として収監されており、その間に厚誼があり、同日に無罪釈放されたということです。
笹川は戦後、これまでに培った右翼・政界・財界・宗教・地下人脈を駆使して、「戦後最大のフィクサー」として君臨します。1963年には零細宗教団体だった統一教会日本法人の顧問に就任し、岸信介らに紹介。その後、国際勝共連合を創設し、様々な反共工作を行いました。これが、現在の自民党における統一教会浸食の源流となっています。
安倍政権が絡んだ事業で、日本財団が深く絡んでいる事業は多くあります。そのうちの1つが、「子供の未来応援国民運動」です。安倍晋三が「日本の未来を担うみなさんへ」というメッセージを発して、大いに批判されました。
政府の責任放棄とも言うべきこの運動の事務局は、日本財団と政府(内閣府、文部科学省、厚生労働省)の共同事業でした(コトバンク)。
政府のやるべき社会保障を民間へと転嫁し補助金を流していくスキームの大部分に日本財団が絡んでいるという事実は、Colabo問題を理解する上で重要な前提知識です。
他に安倍政権が推進していた事業で、日本財団が深く関係するものを2つ挙げておきます。いずれも、Colabo問題に深く関わっています。
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