保護犬がうちに来るまでの話(2) 保護施設へ
10年ぶりの奈良は、外国のようなまちになっていた。
英語や中国語が飛び交い、日本語を聞くことの方が少なかった気がする。
私たち家族4人は久々の奈良観光を楽しみつつも、保護犬を受け入れている団体の方との待ち合わせ時間が来るまで、そわそわしながら過ごしていた。
法隆寺では懇切丁寧に旦那が説明してくれたはずなのだが、正直あまり覚えていない。(わはは)
約束の時間になり、はやる気持ちをおさえて保護団体の施設へ向かうと、そこには30匹近い保護犬がいた。(ほかに猫やウサギなども保護していた)
人が来ると一斉に視線を送る保護犬たち。大興奮。一匹がワンワン言い出すと、もう大合唱だった。
未来の飼い主を待ってるのか、それとも人に対する恐怖なのか。なんかもう、勢いがすごい。
まずは何匹か近くの原っぱを散歩をさせてもらうことになった。
実は家族のなかで犬を飼った経験があるのは私だけ。一緒に散歩するも、子どもたちも旦那もへっぴり腰で正直保護犬たちよりもビビってる。
1歳〜3歳くらいまでの若い成犬と一緒に敷地の外を何周か歩いてみたが、犬によって性格がまったく違う。挙動不審の子、散歩が嬉しくてたまらない子、人間を完全に無視する子、犬なのに犬が怖い子……。たった数分の散歩でも、この子たちはこれまでどんな境遇だったのだろうかとあれこれ思いを巡らせていた。
保護するスタッフたちが願うことは
保護犬をお世話している団体の人たちは、普段は仕事を持ちながら、警察や保健所などで保護された犬を引き取り、里親探しをしている。
スタッフのみなさんは基本とても明るく、保護犬たちの境遇を悲観するような素振りはまったくない。
「次はいい飼い主さんだといいね」「この子、きっといいパートナーになると思います」
と、常に未来を向いている感じだった。
一方で、室内飼いをしてくれるか、家の塀はどれくらいの高さか、誰がどのようにお世話をするのか、など家の細かい状況まで聞かれたのも印象深かった。
保護犬を引き取ることは、ペットショップで購入するよりも条件はずっと厳しい。
「もう決してこの子たちにかわいそうな想いをさせたくない」、そんなスタッフの思いがひしひしと伝わった。
ハスキーミックスの老犬
「この子はどうですか」
最後に散歩させてもらったのは、これまでの元気が有り余る若い成犬とは違った、もの静かな保護犬だった。
推定年齢は8歳くらい。シベリアンハスキーの血が入っているようで、黄色い目をしていた。
頭の毛はふわふわだが、腰あたりの毛は刈り取られている様子。聞くと保護されたときに毛がくちゃくちゃだったので、その部分だけは刈り取るしかなかったとのこと。
「おじいちゃんだなー」というのが第一印象だった。
年齢のせいかおっとりしてるものの、頑なな部分もある様子。
別の人が散歩させていた時は石のように動かなかったので、私たちに相手できるか心配だったが、散歩させると意外にすんなり歩いてくれた。
ぴょこぴょこ軽やかに歩く姿がかわいい。
吠えたり暴れたりすることはないが、時折じっと人間を見ている姿が印象的だった。
滞りなく散歩を終えた後、娘が「この子じゃないと嫌だ」と言い出した。
てっきり1〜2歳のワンちゃんを引き取るものだと思っていた私は驚いた。
だって8歳よ。人間でいうと50歳近く……。
もう一度家族で話さなければなーと思い、この日は福井に戻ることに。
「また会えるといいね」
私たちはその老犬の頭を撫でながら奈良をあとにした。
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