人魚

時々、地上にいるのに息をするのがすごく苦しくなる。

それはどうやっても取り除くことができない。

四六時中人と一緒にいるわけにもいかない。

四六時中人と一緒にいたとしてもそれはおさまらないことがある。

私は体験したことがないのでわからないけれど、愛し愛されるような人と一緒にいてもそれはおさまらないことがあるのだと思う。

どうしたら、それと向き合って生きていくことができるんだろう。

忙しくしていてもそれは不意に襲ってくる。

暇であればなおさらである。

心に穴がいくつも空いていて、何度埋めてもまた別のところに穴が空いてしまうみたいだ。

少しの希望を見てしまった時、その穴は恐ろしいほど痛む。

希望のことしか考えられなくなる。

それは本当に、地獄だ。

希望を知らなかった時は、地獄を知らずに生きて行けたのに。

一つ一つの不安を、私は必死で取り除こうとする。

希望が少しでもよく見えるように。

でも、不安を取り除いている間に希望は高いところに行ってしまう。

私の到底届かないところにある希望は、不安よりも確実に私を苦しめる。

だから私は、上を見ないようになる。下ばかり見るようになる。

その方が辛くない。

でも、希望のことを忘れかけて、辛さを感じなくなってあるときふいに何も考えず上を見上げてしまう。

そしてまた、この世は地獄になってしまう。



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