好酸球性多発血管炎性肉芽腫症はANCA陰性とANCA陽性で違いはあるの?

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)は、著明な好酸球増多を呈し、組織への好酸球浸潤や壊死性血管炎をきたす疾患です。またEGPAは、抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連血管炎に含まれます。気管支喘息などアレルギー性疾患が先行したあとに、血管炎が起こる経過もEGPAに特徴的です[1]。

2022年10月現在の厚生労働省の診断基準では[2]、診断の参考所見にミエロペルオキダーゼ(MPO)-ANCA陽性が組み込まれています。補足として、血液検査で評価できる主なANCAは、MPO-ANCAと​​プロテイネース3(PR3)-ANCAです。ANCA関連血管では、MPO-ANCAはEGPAや顕微鏡的多発血管炎と、PR3-ANCAは多発血管炎性肉芽種と関連します。実際のところ、ANCA関連血管炎とはいっても、日本人のEGPAの約半数はANCA陰性です[3]。

今回は、ANCA陰性とANCA陽性でのEGPAでは特性が異なり、治療方針も異なる場合があるため、相違点を踏まえてEGPAについて解説します。

EPGAの診断にANCAは必須ではない

EGPAは、ANCA関連血管炎のひとつですが、必ずしもANCAが陽性になるわけではありません。ここでEGPAの診断基準を紹介しましょう。以下が厚生労働省のEGPA診断基準です。

主要臨床所見

  1. 気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎

  2. 好酸球増加

  3. 血管炎症状: 発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(6ヶ月以内に6kg以上)、多発性単神経炎、消化管出血、紫斑、多関節痛(炎)、筋肉痛、筋力低下

臨床経過の特徴

気管支喘息、アレルギー性鼻炎、好酸球増加が先行し、血管炎による症状が出現する

主要組織所見

  1. 周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在

  2. 血管外肉芽腫の存在

  • 確実(definite):主要臨床所見の3項目+主要組織所見の1項目、主要臨床所見の3項目+臨床経過の特徴

  • 疑い(probable):主要臨床所見の1項目+主要組織所見の1項目、主要臨床所見のみで臨床経過の特徴をみたさない

  • 参考となる所見:白血球増加(1万/μL)、血小板増加(40万/μL)、血清IgE増加(600 IU/mL以上)、MPO-ANCA陽性、リウマトイド因子陽性、胸部X線所見(肺浸潤影)

基本的にアレルギー症状が先行し、その後発熱や炎症反応、血管炎に由来する症状が認められる、もしくは組織学的に血管炎の同定ができればEGPAと診断できます。MPO-ANCA陽性は参考となる所見で、診断に絶対ではありません。

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