EGFR陽性非小細胞肺癌にTKIを使用しない選択肢は…?

まず最初に、基本的には…あり得ません。

現在の『肺癌診療ガイドライン』[1]において、進行非小細胞肺癌ではドライバー変異があるかどうか、PD-L1発現率が50%かどうかで治療方針が大きく変わってきます。ドライバー遺伝子とは、EGFR、ALK、ROS1など、癌の発生や悪化の直接的な原因となる遺伝子のことです。

非小細胞肺癌においては多くのドライバー遺伝子に変異が確認されています。そしてそれぞれの遺伝子変異に対応する薬剤が承認されています。ドライバー遺伝子変異陽性症例において、それぞれを標的とする分子標的薬を投与することにより、従来の殺細胞性抗癌剤や既存のチロシンキナーゼ阻害薬との比較で奏効率、無増悪生存期間、全生存期間などの改善が示されています。

例えばEGFR陽性非小細胞肺癌と判明した場合には、1次治療からEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を使用することが推奨されています(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B、合意率:93%(推奨率:100%))。メジャー変異と呼ばれるエクソン19のdeletions変異やエクソン21のL858R変異のあるEGFR陽性非小細胞肺癌に対するオシメルチニブは第1世代EGFR-TKIであるゲフィチニブ、エルロチニブとの比較した『FLAURA試験』では、PFS中央値18.9カ月 vs 10.2カ月(HR 0.46)と大きな差をつけてオシメルチニブが良好な結果でした(NEJM 2018;378:113-125)[2]。

ALK融合遺伝子に対しても、最初に承認されたクリゾチニブと新規ALK阻害薬であるアレクチニブの比較試験が本邦で行われました。この第Ⅲ相比較試験『J-ALEX試験』(Lancet 2017;390:29-39)[3]では、PFS中央値 25.9カ月 vs 10.2カ月(HR 0.38)が示され、クリゾチニブを大きく引き離す結果となりました。

このような結果からドライバー変異陽性非小細胞肺癌に対して、それぞれの遺伝子変異に対応する標的治療を行うことが一般的になっております。それでは標的治療薬を使わないとどうなるのでしょう。

米国の14の施設で行われた研究で、10種類のドライバー変異について標的治療が行われた場合と行われなかった場合の予後が検討されました。この研究では標的治療を行わなかった場合には生命予後が悪くなることが示されました(JAMA 2014;311:1998-2006)[4]。さらにQOLの指標も改善する可能性も示されました。しかもEGFR遺伝子変異を検出しても標的治療が行われなければ、EGFR遺伝子変異が陰性の症例とほぼほぼ生存曲線が重なってしまうことも驚くべき事実です。

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