【無料】次の一手に悩んでいるあなたに届けたい!話題の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス」を専門医が解説

次のような患者さんの時、何を処方しますか?

症例:43歳、男性。BMI 30kg/m2、HbA1cは8.0%で下げ止まっている。現在の内服は、ビグアナイド系とSGLT2阻害薬の2種類を内服し、高血圧、脂質異常症に対しても内服中。本人は現在以上の食事療法、運動療法は難しく追加治療の必要はわかっているが、注射はしたくないという強い希望がある。

これまでならDPP-4阻害薬を追加していましたが、今後は経口GLP-1受容体作動薬のリベルサス(セマグルチド)になるでしょう。糖尿病治療の注射薬の問題と経口薬の魅力について解説します。

GLP-1受容体作動薬の効果と注射薬の導入の難しさ

専門医がGLP-1受容体作動薬になぜ注目しているのか、導入の難しさについて解説します。

GLP-1受容体作動薬は心・腎保護効果、体重減少効果がすごい!

GLP-1受容体作動薬が注目されている点は、血糖コントロール改善のみでなく心・腎保護効果、体重減少効果です。海外のガイドラインにおいて、心血管疾患や慢性腎臓病の既往がある人はメトホルミンの次にGLP-1受容体作動薬もしくはSGLT2阻害薬が推奨されることになりました。日本のガイドラインでは、患者ごとに薬物を選択する形です。しかし、心・腎保護作用を期待する場合には、GLP-1受容体作動薬の使用を考慮します。

よい薬だけど注射薬への抵抗感がとても強い

さまざまなよい効果が報告されているGLP-1受容体作動薬ですが、SGLT2阻害薬と比べると処方割合は増えていません。注射製剤という点が患者側のハードルとなっているからです。GLP-1受容体作動薬には、毎日注射する製剤や週に1回注射する製剤があります。患者様に「注射はイヤです」と言われた方は多いのではないでしょうか。さらに、薬価や在宅自己注射指導管理料なども合わせると3割負担で2500円/月以上です。内服薬より高額になってしまう費用面も導入を難しくしていた点でした。

経口GLP-1受容体作動薬としての効果、添付文書上の注意点

今まで注射薬しかなかったGLP-1受容体作動薬ですが、「リベルサス」が世界初の経口GLP-1受容体作動薬として発売され、2021年12月1日から長期処方が解禁となりました。ここでは、経口薬としての効果や注射薬と違う点を解説します。

経口薬での効果や副作用は注射薬と比べて変わらない!

日本人を対象に、毎日注射が必要なビクトーザ(リラグルチド)0.9mgと比較した試験で、HbA1cの低下量は、リベルサス 1.5%に対してビクトーザ 1.4%で同等の結果。さらにリベルサス14mgでは、1.7%と血糖降下作用が強い結果となりました[1]。週1回注射が必要なトルリシティ(デュラグルチド)0.75mgとリベルサスを比較した試験においても、HbA1cの低下量がリベルサス7mgで1.7%、トルリシティで1.5%と同等の結果がみられます[2]。体重減少効果はリベルサス3mgの時点でビクトーザ、トルリシティよりも減少する結果でした。

副作用に関して、注射薬と同様に吐き気やおなかが張るなどの消化器症状がみられています。用量依存的にみられますので、添付文書の記載通り少量から開始しましょう。

リベルサス特有の注意事項

添付文書には、以下のように記載されています。
「最初の飲食の前に、空腹の状態で約120mlの水とともに1錠を服用すること。服用後少なくとも30分は飲食、他の薬剤の経口摂取を避ける」

SNAC(サルカプロザートナトリウム)という吸収促進剤が含まれているためです。服用方法が守れない場合は効果が減少してしまいます。大切なことなので必ず説明しましょう。

専門医が考えるリベルサスに合う患者像と処方の時に伝えること

専門医としては心血管疾患のリスクが高い、糖尿病性腎症がある、肥満がある場合はリベルサスのよい適応と考えています。やせの方や食事摂取が少ない方は、リベルサスを控えておくことが多いです。年齢より本人の状態次第で、高齢者でもリベルサスを使用する価値があると感じています。

実際に使用してみると、リベルサス3mgの時点でHbA1cが1%程度下がる感覚です。注射薬よりも受け入れてもらえましたが、2割程度の人に継続が難しいという相談がありました。吐き気など消化器症状の副作用以外でみられた主な理由は、早起きできず内服した後の時間の確保が難しいという理由が多かったです。

そこでリベルサスの処方をおこなう時、私なりのスクリーニングとして、患者様に朝起きてからご飯を食べるまでの時間を聞いています。ポイントは生活を変えなくても、リベルサスの内服ができるかということです。内服のために30分朝早く起きるように生活スタイルを変えて継続することは難しいですからね。また、添付文書上では内服後30分よりも2時間飲食しないことで、効果が高まることも載っているため「食事まで2時間待てるとよいですが、最低でも30分以上は空けてくださいね」とお伝えしています。

リベルサスで今後の糖尿病治療は変わるかも!?

内服薬で最も血糖降下作用の強い薬であるリベルサスについて紹介しました。リベルサスの処方は増えていくことが予想されます。特に肥満があって、朝型の患者様にはよい適応です。内服の注意点さえ問題なければ、リベルサスほどよい薬はなかなか登場しないでしょう。次の一手に困っている時、リベルサスも治療選択肢に入れることをおすすめします。

舞浜太郎@糖尿病

引用文献
[1] Dose-response, efficacy, and safety of oral semaglutide monotherapy in Japanese patients with type 2 diabetes (PIONEER 9): a 52-week, phase 2/3a, randomised, controlled trial.
[2] Safety and efficacy of oral semaglutide versus dulaglutide in Japanese patients with type 2 diabetes (PIONEER 10): an open-label, randomised, active-controlled, phase 3a trial.


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