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[読書ログ]ふくろうくんアーノルドローベル

ふくろうくん
作:アーノルドローベル
訳:三木卓

※ネタバレあり

ひとり暮らしのふくろうくんの日常のちいさなおはなしが5つ入っている短編集のような絵本。というか、絵本よりも絵が少なめなので童話のような構成。冬の雪や風が戸を叩くので「ふゆくん」を家に迎え入れてあげるが、暴れまわって部屋がめちゃくちゃになってお帰りになってもらったり、涙でお湯をわかしてお茶を入れたり、いつまでもついてくるお月さまに家についてきたら家は小さいからドアから入れないよと言ってさよならを言ったりなど、やさしい視点でのちいさなおはなし。
  
先日読んだ、くまのくんちゃんと同じような愛らしさ、豊かな感受性と好奇心、愛おしさを感じる主人公のふくろうくん。キャラクターの愛らしさは絵本にとっては不可欠だなあと実感する。

絵は少なめだけど、このバランスがおしゃれでいい。
面白いと感じたのは、「なみだのおちゃ」
「ぼく こんばん なみだで おちゃを いれようっと。」と言ってふくろうは悲しかったことを考える。
「うたえなくなったうた。」
「ストーブのうしろにおちてみつけられっこないスプーン。」
「よめなくなってしまった本。」
「とまってしまったとけい。」
「だれもみてくれるひとのいないあさ。」
「おさらにのこってしまったマッシュポテト。」

このチョイスが絶妙で、センチメンタルさがまたいい。そして最後に「これでよしだ。」と言っておちゃをいれる。かなしみを引きずらない。意識して感情を吐き出す。この行動もまたポジティブで大人にも刺さる。

「おつきさま」もよかった。
よくあるお月さまが後ろをついてくる、という表現とモチーフだが、ふくろうはこんなふうに言う。
「ねえ おつきさま。ぼくが きみを みているんだからね、きみも ぼくをみなさいよ。おともだちに ならなくちゃ ぼくたち。」
意思疎通をしようと試みるのだ。なんども語り掛けるが、返事はない。
そこでふくろうは言う。
「ぼくのこえ きこえないんだね。」
 
そうしておつきさまにさよならを言って別れを告げる。
きこえないんだね。のもの悲しさがぐさぐさ刺さってくるが、ふくろうとしては事実を述べたのみ。ふくろうの悲しさはおつきさまにさよならすることにあり、意思疎通が取れないことではないことにある。

だんだんと大人の面白いと子ども(特に幼年)の面白いの違いがわかるようになってきた。ひとりであれこれ試してみたり、読み手には明らかにわかることを分からないでばたばたしてみたり、行っては帰ってみたり、繰り返しやってみたり、そういうことが幼年絵本のなかでの”面白さ”なんだな。

しかし、この観点は完全にセンスだから、身近に子どもがいないとなかなか発想しづらい観点だと思う。

才能は開花させるもの センスは磨くもの
才能の開花のチャンスを掴むのは、今日かもしれない。
もしくは、明日か、明後日か、来年か。30歳になってからかもな。
体格ばかりはなんとも言えないけど、ないと思ってたら、たぶん一生ないんだ。

ハイキュー!!

わたしがモチベーション落ちたときによりどころにしている、ハイキュー!!の中の言葉を思い出す。
ないと思ってたら一生ないんだから、しぬほど読書して、センスを磨こう。一歩ずつ、がんばろう。

これはシリーズではないようなので、自分で続きを書くなら……という体でおはなしを書いてみたい。

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