[読書ログ]スロボドキンの絵本6選
ルイス・スロボドキンの絵本を6冊借りたので、それぞれログに残そうと思う。4000字近くなってしまったので、ご注意ください。
さらに、すべてのあらすじ&感想に話のネタバレがありますので、ご注意ください。
「ねむれない ふくろう オルガ」
作・絵: ルイス・スロボドキン
訳: 三原 泉
出版社: 偕成社
あらすじ
ねむれないふくろうのオルガは、がんばってねようとあの手この手でためしてみるが、まったくねむれない。
森の動物たちに相談していくなかで、ねむれる方法を発見するおはなし。
感想
ストーリーは王道。
冒頭、描写はない。親の存在も描かれない。絵本だと、いつ、どこでの描写がないことが多いが、本書もそのかたち。
ねむれないので、ものしりの長老様のもとへ相談しにいくのだが、長老様のところに一番に聞きに行くのが西洋っぽい。日本的感覚であれば、長に聞くよりは、周囲の友だちや家族など、自分を取り巻く大勢に聞くような形式をとっていることが多い気がする。
この本の良さは、可笑しさと、やさしい読後感。
前半、ものしりの長老に眠り方を聞いても、オルガが自分で考えて試してみたこととおなじことしか言わないので、ポンコツ感がある。
オルガが聞いてみたけど大人じゃだめだ、と諦めている感じも含めて、ユーモラスで良い。
後半、森の友だちに聞きまわっているとき、人のまねをして、地面に落ちたり、うまく眠れない様子を続け、最終的にうたをうたっていると途中で、みんな寝てしまう。本の裏表紙に作中で出てきた歌の楽譜が載っているので、読み手が実際に歌って聞かせられるのも素敵。
絵が抜群にキュート。ふくろうが片目をつぶったり、小さなしぐさが一つひとつ丁寧に描かれていて、とってもかわいい。
オルガグッズがあったらぜひ買いたい。
「いっしょならもっといい」
作・絵: ルイス・スロボドキン
訳: 木坂 涼
出版社: 偕成社
あらすじ
小さな男の子がふたり。ひとりで遊べるけれど、ふたりならもっと楽しい。ふたりでやるとたのしいというシーンをたくさん集めたおはなし。
感想
物語というよりは、絵本らしい絵本。
主人公の名前も、相手の子の名前も出てこない。
感想を書きづらいので、冒頭の一部を抜粋する。
”他者”の存在を知りはじめた頃の、幼稚園時期のこどもに良さそう。
自分とはちがう”他者”との関わり方をやさしく伝えるテーマ性を感じる。
「ねぼすけ はとどけい」
作・絵: ルイス・スロボドキン
訳: くりやがわけいこ
出版社: 偕成社
あらすじ
スイスの小さな村で鳩時計を売っている時計屋のおじいさんが、1個だけ時間ぴったりに鳩が出てこない時計があり、修理する暇もなく困っていた。
直さなければと思っている間に、王国から王様がやってきて、店にある123個の鳩時計全部を買いたいと言ってくる。
しかし、1個だけ鳩が遅れて出てくるので、おじいさんは、その1個は明日の朝までに直して123個そろえておきますと約束する。
修理しようとよくみてみると、なんと鳩が毎回寝坊しているだけだった。
おじいさんは、鳩時計の中に小さな目覚まし時計を作って、鳩を起こすことで時間ぴったりに鳩が出てきて大成功。王様は全部買ってくれることに。
最終的には、王様には遅れて出てくる鳩時計は売らずに、代わりに宝石で飾り付けられた特別な時計を作ってあげた、というおはなし。
感想
文章量が多いので就学前後、小学1年生くらいが妥当かもしれない。
それほど評価が高くないのは、この文章量のせいなのだろうか。
こんなに最高なのに。
小さな時計屋に鳩時計が123個も壁にかけられている絵がおもしろくて良い。おんなじものがたくさんある楽しさをスロボドキンはよく描くけれど、これもそのひとつ。
物語としては、読後感をよくするためにも、ちょっとひねりがありすぎたのかもしれない。物語の主軸として、時間に1分遅れて出てくる鳩時計というのがあり、修理することで王様の要求にこたえるミッションがある。
それとは別に、ねぼすけの鳩時計に愛着を持っている村人や子どもたちの感情の面をどう扱うかという点も処理しなければならない。その折衷案を取ったという感じ。
王様の登場がおじいさんが鳩時計を直すきっかけになっているけれど、王様抜きでストーリーを進行したほうがシンプルにまとまったのかもしれないが、個人的にはこれはこれで面白かった。
ある方のレビューで、おじいさんが寝坊する鳩時計を毎回決まった時間に起こすために、鳩時計の中に小さな鳩用の目覚まし時計を作ることで解決するのだが、目覚まし時計は決まった時間に一度しか鳴らないから、王様が来る時間だけにしか起きなくて、他の時間は眠ったままだから正確ではない時計なので、手元に置いておいたのではないか、という記載があった。
とても面白い考察だと思う。確かに、目覚まし時計の概念なら、一度しかアラームが鳴らないから、毎回鳩時計の中の目覚まし時計をいじらないといけない。そうなると、急ごしらえで王様からのミッションは完遂したけど、愛着よりもユーモアで乗り切ったと読み取れる。
こちらも絵がかわいい。
店の壁にかかっている123個の鳩時計がわくわく感を生んでいる。
「ひろいひろいひろいせかいに」
作: ルイス・スロボドキン
訳: 木坂 涼
出版社: 偕成社
あらすじ
世界中にあるいっぱいあるものをまとめた、いっぱいいっぱい集。
感想
わたしが好きな、いっぱいいっぱいの世界を詰め込んだ絵本。
こちらも「いっしょならもっといい」と同じで、ストーリーというより、シーンを詰め込んだ絵本らしい絵本。
本文の最後を抜粋する。
たくさんあるなかでも、かけがえのないひとつ、ひとりについて描くテーマ性もある絵本。絵がかわいい。
「ノミちゃんのすてきなペット」
作・絵: ルイス・スロボドキン
訳: 三原 泉
出版社: 偕成社
あらすじ
ノミちゃんは大きな動物が好き。だけど、大きすぎて家で飼えないかもしれない。どんな動物なら飼えるかなあとあれこれ考えて、最終的に決めた動物とは……というおはなし。
感想
子どもなら一度は夢見る、何か動物を飼いたいなと思うきもち。
本書の良いところは、お母さんに「動物を飼ってもいいけど、うちは狭いから、どんな動物がいいかよく考えて」と言われて、ノミちゃんが動物を検討するときの表現。
ふとってないとか、やせっぽちなら、狭い家でも飼えるというのも面白い。
文章は、ノミちゃんの一人劇で進んでいく。
会話で進みそうなところだが、そうならないところが魅力。
お母さんのアンサーがないけれど、イラストでは、お母さんの困ったような表情が描かれている。
ああなったらどうだろうとか、色々想像したり、想像を言葉にすることが楽しかったりする。別に良いとかだめとかはどうだって良くて、(むしろ感覚的にだめだろうな、というのは子どもながらに分かっていて)それでもこうだったらいいのになのイメージを増幅させたり、体験できるのが絵本の良いところ。
何はなくとも、とにかく絵がかわいい。
「スーザンのかくれんぼ」
作・絵: ルイス・スロボドキン
訳: 山主 敏子
出版社: 偕成社
あらすじ
大きくて嫌いなクモを見せようと追いかけてくる兄さんたちに、見つからないようにかくれるところを探しているスーザンが、いろんな人の意見を頼りにあちこち隠れ場所を探して、ようやく柳の木の下にたどりついて、良い隠れ場所を見つける、というおはなし。
感想
シンプルでわかりやすいストーリー。
まえがきに事実をもとにしてつくったストーリーとあるだけあって、嫌いな蜘蛛を見せようとしてくる兄たちから逃げる、という設定がリアルなので、ふつうのかくれんぼとはちがった切り口から物語に入ってく新鮮さがある。
絵にはずっと柳の木の下にスーザンが座っているのが描かれているのに、まわりの人があちこち走り回って探しているところがユーモラスで良い。
最終的には、隠れ場所が欲しい!と思わせる物語。
自分だけの秘密基地のような場所を手にしたスーザンに憧れる子どもは多いはず。
やはり、絵がかわいい。
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総括すると、話にユーモアがあり、面白くて、絵がかわいい。
けれど、スロボドキンは、児童書くらいのボリュームのほうが持ち味を発揮しているように思った。
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