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[読書ログ]「チョコレートタッチ」
作: パトリック・スキーン・キャトリング
訳: 佐藤 淑子
絵: 伊津野 果地
出版社: 文研出版
あらすじ
ジョンは、お菓子が大好きな男の子。ごはんやおかずは残して、お菓子ばかりたべています。なかでも、チョコレートには目がありません。
ある日、ひろったコインで買ったチョコレートを食べたところ、不思議なことがおこりはじめました。
朝起きて、歯磨きをしたジョン。口に入れた歯磨き粉が、チョコレートになっていました。朝ごはんのジュースやベーコンエッグもすべてチョコレートの味になってしまいました。ジョンは大喜び。
学校についたジョンは、飲み水、給食のおかず、あげくのはてに口にくわえたトランペットまで、すべてチョコレートになってしまいました。
チョコレートにあきたジョンは、水が飲みたくてもチョコレートになってしまうので、どうしたらよいかわかりません。
パパとママは心配して、病院に連れて行きました。病名は「クレイニアム病」。つまりチョコレート病です。
途方に暮れたママは泣き出し、ジョンはママのほっぺたにキスをしました。するとママは全身がチョコレートに・・・・・・。
どうすれば、ママを元通りに戻せるのか
ジョンは必死に、チョコレートを買ってお店を探しました。
感想
2022年青少年読書感想文全国コンクール課題図書になっていて、本屋で見かけて気になっていた本。
訳者あとがきを引用する。
じつは、ギリシア神話に、おなじような話があります。金がだいすきな王さまの「ミダスタッチ」という話です。
ミダス王は、さわったものすべてを金にかえる力がほしいという願いを、酒の神ディオニソスにかなえてもらいます。ところが、食べものや愛するむすめまでもが金になってしまい、後悔します。「チョコレートタッチ」は、このミダス王の神話をもとにしていると思われます。
みなさんは、ジョンの名字が「ミダス」であることに気が付きましたか?
こういう教訓めいた話の評価は難しい。
冒頭は、チョコレートをおいしく食べていたが、結末ギリギリまでずっとチョコレートがだんだんいやになっていくエピソードが続いていく。
エピソードのなかで、なんでもほどほどが良いのだろうと理解していくような構造だ。
ただ、子どもはだいたいこういう教訓については”分かっている”。
やりすぎてはいけない、他人への思いやりが必要。
そんなことは分かっているから、物語から少しでもそういう匂いがすると、途端にいやになるものだ。
自分が小学生のころはそうだった。
読書感想文の指定図書は、だいたいこういうことを書いておけばいいんだよね、というのが透けて見えるので、それがいやだった。
読書感想文は得意だったが、教訓めいた話は苦手だった記憶がある。
(一方で、同じ教訓でも、日本昔ばなしのような昔ばなし形式なら受け入れられた。こういった作品のメッセージ性の高い話は、第三者視点で淡々と描かれるほうが物語として楽しめるためだと思う)
というわけで、わたしは大のチョコレート好きだが、どうにも感想を書きにくい物語であり、これを子どもに勧めるかと聞かれたら、首を振るかもしれない。
だが、これは個人的な感想で、実際の物語でいえば、読みやすく、シンプルでわかりやすい構造になっている。しかも、オチもしっかりしていて、さすが何十年も読み継がれているだけある、という印象だ。
ファンタジーへの入り口と出口も古典的だが、分かりやすく、自然に感じられる。
表紙絵も可愛らしいし、笑うせえるすまんや、藤子先生の作品、民話集のようなものが好きな人は面白く読めると思う。
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