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[読書ログ]「こぐまと二ひきのまもの」西川おさむ

「こぐまと二ひきのまもの」
作:西川おさむ

※ネタバレあり


二匹の兄弟のまものが「あくぎょう」をするため、修行に出かける。
そこで人間が鉄砲をうってきたので反射的に襲ってしまい、取り残された子どもを抱えて育てようとする。
だが、またそこでクマ狩りを目にし、親クマがやられそうになっているのを小グマが見ていることを知ってクマを助けようとする。
そこで抱えていた人間の赤ちゃんが流れ弾にあたり死んでしまう。
怒りが湧き、まものは人間を襲ってしまう。
最終的に、その後人間を襲わずに子クマを育てていったため、まものは
体が風化して消えてしまい、さいごには子グマが残る、というおはなし。
 

あたらしい雰囲気、ジャンルの絵本だった。
絵はやさしく、残虐なシーンもおだやかに描かれている。
ただし、内容は割と過激。赤ちゃんはしんでしまうし、人間も大勢まものにやられてしまう。
対象年齢は小学中~高学年かな、という印象。
若干、注文の多い料理店からの影響も感じられたが、分かり合えない種族同士の対立が表に描かれすぎていて、キャラクターの愛らしさや応援したくなるおちゃめさや、人間と動物とまもの、それぞれが分かり合おうとする姿勢が見えなかったのは少し残念に感じた。
また、最初は人間の赤ちゃんを育てようとしたのに、最終的に子グマになってしまうのも、少しご都合主義的な要素を感じてしまった。(まものが人間の赤ちゃんなんて育てられるの?という要素が強すぎて排除したのかな、とか)

他の方の感想にもあるが、
「最後まで笑って、ああ面白かった。楽しかった。って、思える絵本」を親が欲しているのは理解できる。
絵本、特に幼年絵本に求められているのは、キャラクターのチャーミングさ(子どもらしさ)、愛らしく面白い行動、読後のカタルシスなのだろう。

それを飛び越えて、自分の書きたいもの、伝えたいものを表現しようとするならば、対象年齢をあげるか、制約の多い絵本という枠組みのなかでできるだけ読み手に寄り添う配慮を見せるか。あるいは配慮も何も気にせずに己の信念を貫くか。中途半端にならない工夫も大事だと感じた。

絵本として大人は楽しめたが、子どもはどうだろう。
読後感がいいだけに、余計に考えさせられる絵本だった。

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