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[読書ログ]「よるのさかなやさん」穂高順也

「よるのさかなやさん」
文:穂高順也 絵:山口マオ

※読書ログのため、おおいにネタバレあり


さかなやさんのさかなたちが実はしんだふりをしていて、夜にこっそり起きてみんなで夜の空を海のように泳いだり、野球をしたり、釣りをしたり、合体して猫を追いかけたりする話。

やっぱり着眼点だな、と思う。さかなやさんのさかな、という設定だからいいのであって、これが肉屋だったら全然ちがう。肉だと生々しいし、切り身になってしまっているので子どももイメージしづらいだろう。
野菜だとすこしパンチが足りないし、遊び場が夜空よりは夜の畑のほうがしっくりくる。この発想・着眼点が出てくるかどうかが鍛錬と才能なんだろう。

途中に出てくる擬音語も秀逸で、「ひょっこりひょこひょこぬーるぬる」はリズミカルで楽しい。
魚たちで合体してかいじゅうになって、猫を追い払う、という表現も面白くて、タイトルから想像しつくせないエピソードとしてよかった。
また独特のタッチの絵もいい。クスっと笑いそうな味のある絵が文章にあっている。

  
自分が子どもになったイメージでもう一度読み返してみる。
しんだふりをしているだけで実は生きていて遊んでいる、という設定は読み聞かせする年齢層だからこそ当てはまるのかもしれないと感じた。
というのも、翌朝またしんだふりをしていたら、お客さんに買われていって食べられてしまうんだよなあ、とか、昨日はみんなで楽しく遊んでいたけど、昨日いたタコさんは今日はいないんだよなあ、とか、かなしいことばかり考えたりしてしまうのだった。だからこそ、この本は読み聞かせを始める年齢へのちょうどいい題材とも言えるのかもしれない。

自分は5~6歳頃にこういう物語を読んでいると、その後の話を書いて欲しい、かなしいあとの話を書いて欲しいんだよなあとか思うおかしな子どもだったので、やっぱりちょっと変わっていたのかもしれない。楽しく見せているさかなたちも実は苦労していて、でも最終的には救いのあるおはなし。


”嘘と分かっているけれど、本当だったら面白いよなあ”

この絶妙なバランスが絵本にはちょうどよくていいのだろうと思った。

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