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[読書ログ]「チャーリー、こっちだよ」

作: キャレン・レヴィス
絵: チャールズ・サントソ
訳: いわじょう よしひと
出版社: BL出版

あらすじ

ここは〈だれでもぼくじょう〉。
こころやからだにきずをおった 
どうぶつたちが あんしんしてくらせる家。
かたほうの目がよくみえないウマのチャーリーと、
ほかのどうぶつたちとはなれ いつもひとりでいる、ヤギのジャック。
そんなふたりに、いつしか交流がうまれ――
実話をもとにした友情の物語。

絵本ナビHPより


感想

タイトルと表紙絵の可愛らしさに魅かれて。
実話をもとにしたお話ということで、巻末の作者あとがきの一部を載せる。

この絵本は、山羊のジャックと馬のチャーリーをもとにしたお話です。
ジャックとチャーリーは本当にいて、友だちどうしでした。
世話係のアントニアも本当にいて、名前をアネット・キング・タッカーといいます。アネットは、アメリカのオクラホマ州で、野生動物を保護する施設<ワイルド・ハート牧場>をつくり、けがや病気の動物を治療したり、保護したりしています。

「チャーリー、こっちだよ」作者あとがき引用


実話からの感動ものとして押し出されているのではなく、キャラクターそれぞれが確かに生きている感じがした。

言い方は悪いが、よくあるお涙頂戴型ではなく、きちんとした物語として昇華されているのが、とてもよかった。

ジャックが牧場にきた背景は濁されている。

<だれでもぼくじょう>には、いろんなどうぶつがやってくる。
きずをおったどうぶつや、まだ小さなどうぶつ。
それから、ジャックのようにあんぜんな家がひつようだったどうぶつも。

このぼくじょうでは、しんせんなほし草がたっぷりもらえる。
毛はやわらかいブラシでとかしてくれるし、
ひづめもやさしくきってくれる。
それでも、ジャックはきゅうにちかよられたり、大きな音をたてられたりするのが、きらいだった。

ジャックも、やねのあるあたたかいばしょにいたかった。
けれども、まえにすんでいたべつのこやをおもいだし、からだがいやがってしまうのだ。

本文より引用


絵で見ると、ジャックの片方の角が欠けているので、小屋の中でいじめられたような過去があるのだろうと推測できる。
こころに傷を負ったジャックは、傷を抱えながら牧場で暮らしている。

ジャックは急に近寄られるのが嫌なので、目が見えず危なっかしいチャーリーを用心深く見ている。
そうしていくうちに、チャーリーには暗闇で迷いそうなときに道案内してくれる月のように、なにか頼れるものがあるのだろうか、と考える。

そこから、チャーリーを「こっちだよ」と言ってあちこちへ案内していると、ある日ジャックがついひどいことを言ってしまって……というお話。


動物を擬人化するのはむずかしい。
実話をもとにしていれば、なおのことだ。

ジャックの癖の強い性格が、物語に個性を生み出しているように思う。
ジャックも、チャーリーもおっとりしたり、やさしかったり、落ち込んだ性格だったら、よくある物語だけど、ジャックがジャックだったから、よかった。

絵の雰囲気がとてもよくて、額に入れて飾りたいくらい。
動物の絵が何とも言えずキュートで、やさしいタッチ。

タイトルのセンスもいい。
小さい頃ってなんでも「こっちだよ」とか「こっち来て」とか、呼びたくなる。友達を連れていって、なかよくなって、というイメージも湧きやすいいいタイトル。

実話をもとにしていることからも、いろいろ深堀できそうな絵本。
小学校は低学年から、大人まで楽しめる作品。

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