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[読書ログ]おしゃべりなたまごやき寺村輝夫

「おしゃべりなたまごやき」
作:寺村輝夫
画:長新太

※ネタバレあり


王様がにわとり小屋にぎゅうぎゅうにつめられているにわとりを可哀そうに思い、小屋の鍵をあけるとにわとりが脱走しておおさわぎになる。
自分が開けたことがばれないように鍵を捨てて知らないふりをしつつ、小屋からこっそりたまごを盗んだ。
命令された通りたまごやきを焼けないことに責任を感じたコックが自ら牢屋に入ると言ったので、王様は卵を渡してコックをゆるす。そうして夕食にたまごやきを食べると、卵の黄身が勝手にしゃべりだして王様の嘘を暴露するというおはなし。

着想とお話の展開が面白かった。
最後の黄身が話し出す、はアイデアの勝利だと思ったが、それまでに小さなギミックがたくさんちりばめられていて、それが小気味いいリズムになって物語を構成している。

9歳のこどもが、卵にどんなトリックがあるのか気になった、というコメントしていたのが印象深い。不思議なことにもある程度の理由と根拠を書いておくのが種明かしとしてはすっきりするのだろう。そして時にごまかしや理由をうやむやにしておくのはいいことばかりでもないのだろうと感じた。

「黄身がしゃべるはずないけど、こういうことがあったら面白いね」の加減を考える。自分だったら、やさしさで起きてしまった騒動を咎められる時、その「わかってほしい」の心の揺れ動きを書きたいなと思った。
しかし、絵本だと”共感性”のような話はひとつもないことに驚く。感じ方はそれぞれで、創造性や個性をはぐくむために、”面白いアイデア”を大事にしているのが絵本なのだろうか。

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