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絵師のイラストは「作品」でAI絵は「素材」な理由


イケメン

AI絵を語る人々

AIイラストについて肯定的に発信している人って、いろいろいますね。

  • IT社長とか。先進技術の伝道師。講演したり本を書いたりする。セルフブランディングに利用している。既に金持ちだが、複数のAIベンチャー企業とかにシードラウンドで出資していて、バイアウトや上場を狙っている。自分の手でAIイラストを使った作品を作ることはない。

  • エロ絵を大量生産して稼げるうちに荒稼ぎしている人。そんなに稼げていない人が大部分かな

  • 人間神絵師の神絵っぽいイラストを生成してTwitterとかPixivで承認欲求を満たそうとする人たち

  • 絵や絵師界隈にコンプレックスがあって、人気者の絵師に攻撃的な人たち

  • AIイラストを無難に利用して自分の作品を作りたい人たち

私は↑の最後のグループの立場です。
その立場で思うことをまとめておきます。

ラノベの1巻だけ


試される


「物語の導入部」を研究するために、5巻以上続いているラノベの1巻ばかりを20冊ぐらい買って読んだことがあります。
その成果は置いておいて、共通項として気づいたことがあります。
1巻のあとがきは、ようやく出版にこぎつけたラノベ作家の喜びがつづられており、読み物としても面白いです。
そこには必ずイラストレーターへの感謝の言葉が書かれています。
ラノベの制作はだいたい以下のような流れかと思います。

  1. 作者が原稿を書く

  2. 出版が決まる

  3. 編集者と相談してイラストレーターにオファー

  4. イラストレーターが引き受けて表紙や挿絵を描く

で、1巻のあとがきには異口同音に「原稿を書いていた時にイメージしていたのと違うけど、最高のイラストで気に入りました! ○○先生ありがとうございます!!」と書かれています。
人間の絵師に依頼すると「思っていたのと違う」「思っていたのより良い」ということが発生するんですね。
そりゃあ絵師は絵の専門家で、作者は素人なんだから、考えてみれば当たり前です。

作者がAIイラストを使って自分で絵を生成するようになると、思っていた通りだが、思っていた通りでしかない、となります。
良いことも悪いこともありそうです。

紙で出版するような本の表紙で、コストを理由に人間ではなくAIイラストを使う、ということはないでしょう。
Web小説はAIを使っていく流れになりそうなので、そのへんがどうなるか。

10000時間と100時間


天井のしみ


「絵を描く」というスキルは本当に奥が深くて尊いと思います。
実際のところはわかりませんが、一定以上の素質がある人が10000時間努力して、ようやく食えるプロになれるかどうか、というような世界に見えます。

AIイラストを使いこなすのは簡単です。
理系的な概念に抵抗がない、という程度の基礎がある人が機材を与えられて100時間も努力すれば一線級になれると思います。
(今後の技術の進歩についていくために継続的に時間を使う必要はあります)

全然違いますね。
だから人間の絵師はリスペクトされます。
AI絵の生成者は、そもそもリスペクトを要求しないべきでしょう。

我々はコンテンツを消費する時に、作品と作者を切り分けて考えることが、ほぼできません。
漫画、歌、声優、映画、俳優、絵もそうです。

作品の価値=作品自体の価値+作者の物語の価値

という式が成立しています。
(足す、ではなく、掛ける、かもしれません)

で、AI絵には作者の物語がないんですね。
しょせん100時間の技術なので。
だから、素材としての価値が人間作品にさほど劣らない場合ですら、AI絵は一枚の作品としては価値がない。

個人的な意見ですが、AI絵を作品として一枚ずつSNSに流して承認を得ようとするのはやめたほうがいいと思います。
ある意味、人間の絵師が築いたコミュニティの信用にタダ乗りしていいねを集めようとする行為に近いですね。
まあ、やめないでしょうけど。
やがてコミュニティが荒廃していくことになってしまいます。

AI絵師(?)が人間の絵師を煽るのもやめたほうがいいと思います。
鎧兜を装備した騎馬武者に、雑兵が借りてきた火縄銃でイキっているみたいになってしまいます。
人間の絵師には、怒る正当な理由があるのだから、何を言われても黙って受け入れればいいのではと思っています。

「これぐらいは手で描けるけど、本当に自分にしか描けない部分に集中するために、部分的にAIを利用した」という先進神絵師が使う分には、AIもスクリーントーンに過ぎません。
そういう正しい使い方が広まって、界隈が和解してくれることを願うばかりです。

文化庁の見解


夜の街、濡れた路面

AI絵の著作権については、文化庁からAI絵の著作権についてはまとめが出ています。

ざっくりまとめると

  • 人間が描こうがAIが描こうが、特定の絵師の作品または絵柄に似すぎていたら著作権侵害

  • 公開されている著作権のある絵をAIの学習に使うこと自体は問題ない(人間の絵描きだってそのように練習している)

  • ただしAI絵は、出力そのままだったり、大して手を加えていないなら、著作物として認められない(著作権、著作者人格権などを行使できない)

という感じです。
特定の現役絵師の絵柄を集中的に学習させて作った絵をSNSに流すのは普通にアウトです。

この見解は妥当だと思っています。
アメリカやEUも、日本の文化庁に追随してほしいものです。


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