色と香
10年以上前、これぐらいの季節だったと思う。
プロの方々のムービー撮影に付き添う機会があった。
ある映像作品の素材を集めるため、石巻の山の中の道路を撮影する。
何度も何度も。車を止めて撮影。また移動して車を止める。
外から見れば風光明媚なリアス式海岸でも、
中から見れば、鬱蒼(うっそう)とした林、森、林。
もはや、飽きてきた。こういう繰り返しがどうしても苦手だった。
「根気がない」「集中力がない」
通信簿の常とう句だった。
「そう言えば、ここは冬に撮影したデータがありましたよね!」と自分。
「いや、夏の色じゃないと」と一蹴するディレクター。
さも当然です。という感じで答えが返ってきた。
花や空を撮影しているわけではない。
日陰と山と道路だ。そこに夏の色があるのだという。
当時の自分にとっては新鮮だったし、反省もした。
「ただ、この海の香りだけは、どうやっても表現できないから」とディレクター。
「ほーん」と自分。香りね、香り。
何でもない撮影エピソード。
思い出したきっかけは、昨夜の夕げ。
これは、我が家の初夏の恒例。初ガツオのタタキ。半身のカツオを炙って氷水にさらす。厚めに切って皿鉢に盛り付け。それが見えないぐらいの大量のネギ、カイワレ、玉ねぎ、大葉をドンとのせればできあがり。ショウガとしょうゆを効かせた冷たいだし汁で、さっぱりといただく。
若く柔らかなピンク色の身。
シャキシャキとした歯ごたえとともに、味わう。
ああ、今も見ただけで、垂涎の香りと色。
色と香り。写真で表現できたよ。ディレクター。
みなさん、お久しぶりです。
結局、食い気。
色香も色気も何もなくてごめんなさい。
雑文失礼。ありがとうございました。
またどうぞ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?