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カーチス SB2C ヘルダイバー(1940)

 『ヘルダイバー』は、カーチス社の艦上爆撃機の伝統ある名前である。カーチスF8C、SBC、SB2Cといずれも『ヘルダイバー』という呼称である。『ヘルダイバー』(Helldiver)はカイツブリのことである。地獄の急降下という意味かなと思っていたけれど、関係ないらしい。カイツブリは、潜水して魚や虫を捕食している鳥。漢字では「鳰」・・・「水に入る鳥」。

 しかし、そんなこととは関係なく急降下爆撃という戦法をとりいれた飛行機開発をカーチス社は自負していた。初代の『ヘルダイバー』は複葉機であった。それも、当初設計は高翼単葉だったのを剛性不足を改良するために複葉機に設計し直している。

 佐貫亦男氏は、『飛行機のスタイリング』(佐貫亦男、グリーンアロー出版社)でSBC-4について、次のように記述している。
 「カーチスSBC-4ヘルダイバーは米海軍の偵察爆撃機だが、スタイリングとしてなかなかおもしろい。まず、複葉なのに引き込み脚であった。上翼には後退角がつき、下翼は直線翼で、翼間支柱は左右一本のI字形(下端が広がる)で張線を持つ。
 胴体は太そうに見えるが、これはグラマンほどでなく。高さが高いからだ。エンジンはライト・サイクロン空冷星型九気筒九五〇馬力で、最大速度は高度四,六〇〇mで三八〇km/時だから、複葉複座機としては相当なものであった。これで五〇〇ポンド(二三〇kg)か一、〇〇〇ポンド(四五〇kg)爆弾を腹の下に抱えて急降下する。急降下爆撃は米軍の独創で、後にドイツ空軍が真似した。」
・・・これは、初代ヘルダイバーSBCの話。

 SB2Cは1938年に初飛行し、ミッドウェイ海戦で大活躍したSBDドーントレスの後継機としてアメリカ海軍に採用された。しかし、海軍の要求にあった「空母のエレベータに2機載せられること」という条件が苦しめる。出来上がったデザインは、異様な寸詰まりであった。主翼と水平尾翼の間が近いのだ。のびやかさがない。そのため、飛行特性の安定性がなくなった。日本側が制空権をなくした時期から戦場に登場したため、それでも活躍の場が十分あり、日本の艦艇を撃滅させる働きをした。

 佐貫亦男氏は、SBC2Cについても『飛行機のスタイリング』(佐貫亦男、グリーンアロー出版社)でちょとだけ触れている。
「直前のSBC複葉は両舷一本ずつのI字形翼間支柱を使ったよいスタイリングであった。胴体側面図、とくに垂直尾翼などよく似ているから、同じ設計者だろう」
 また『続・ヒコーキの心』(佐貫亦男、光人社)で次のように評している。
 「急降下爆撃機はどうやらアメリカ海軍の着想らしいふしが多いけれども、ドイツ・シュツーカの目ざましい活躍によって刺激されたことは否定できないようである。気のせいか、SB2CヘルダイバーとユンカースJu87の主翼を比較すると、ちょっと共通点がある。すなわち、翼前縁がほぼ直線で、後縁がきわ立ってテーパーしているところである。SB2Cの主翼と短い尾翼はまさにカイツブリという感じだが、もちろん、設計者はそんなことを考えてはいまい。」

SB2C
全長 11.18m
全幅 15.14m
全備重量 6,095kg
発動機 ライト R-2600-8 空冷星型14気筒 1,700hp
最高速度 452km/h
航続距離 1,800km
武装 7.62mm機銃×2  12.7mm機銃×2 450kg爆弾×1

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