令和5年版厚生労働白書1要約
第1章 子供を産み育てやすい環境づくり
Ⅰ少子化の現状
日本合計特殊出生率:
2005年に1.26まで低下
その後緩やかに上昇したが、今年は微低下傾向
2022年は1.26(概数)で、かなり低い
長期的な少子化傾向が継続
人口推計(2017年発表):
2070年までに人口が8,700万人に減少
年間出生数が現在の半分(約50万人)に
高齢化率が約39%に達成する見通し
変化するライフスタイル:
2040年には50歳時の未婚率が男性29%、**女性19%**に
1997年以降、共働きが専業主婦をずっと上回る
課題と対策:
働きながら結婚・出産・子育ての希望がかなえていない現状
希望を実現できる環境整備が重要
2023年4月に暫定されたこども家庭庁が中心となり、子どもを産み育てやすい環境づくりを推進
Ⅱ子育て支援
新しい制度
安心・子育て支援新制度の概要:
2012年に成立した子ども・子育て関連三法に基づく
2015年4月から施行
消費税率の引上げによる財源の一部を得て実施
新制度の主な内容:
幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進
施設型給付と地域型保育給付の創設
認定こども園制度の改善
地域の実情等に応じた子ども・子育て支援の充実
実施体制:
市町村が実施主体
2015年に内閣府に子ども・子育て本部が発足
2023年4月よりこども家庭庁に移管
財源と予算:
消費税のため0.7兆円程度を子ども・子育て支援に充当
1兆円超程度の確保を目指す
2022年度も**「量的拡充」と「質の向上」**に必要な予算を埋める
2023年度も保育士の2%の処遇改善等に必要な予算を計上
制度の目標:
幼児教育・保育・地域の子育て支援のさらに充実
社会保障の充実において優先的に取り組んでいく
全ての子育て家庭へ
新制度に含まれる子育て支援:
全ての子育て家庭を対象に、地域のニーズに応えた多様な支援を提供します
主要な地域子ども・子育て支援事業: a) 利用者支援事業:相談、情報提供、関係機関との連携 b) 地域子育て支援拠点事業:交流の場の提供、相談・アドバイス c) 一時預かり事業:一時 d) ファミリー・サポート・センター事業:会員間の相互援助活動の調整 e) 子育て短期支援事業:一時的に困難な家庭の児童の保護
2024年度から新設される事業: f) 子育て世帯訪問支援事業:家庭訪問による支援 g) 児童育成支援拠点事業: 居場所のない子どもへの支援 h) 親子関係形成支援事業:ペアレントトレーニング等の提供
経済的支援:
「出産・子育て応援交付金」の構想(2022年度)
妊娠期から子育てまでの一貫した支援と経済的支援の提供
障害児支援の強化:
居宅訪問型児童発達支援の新設
医療的ケア児への支援強化
保育所等での「医療的ケア児保育支援事業」の実施
幼児教育・保育の無償化
幼児教育・保育の無償化政策:
2017年の「新しい経済政策パッケージ」に基づく
2019年に関連法律が成立
2019年10月から実施
無償化の対象:
3歳から5歳までの全ての子ども
0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子ども
小学校就学前の障害児の発達支援
対象施設:幼稚園、保育所、認定こども園等
政策の目的と意義:
子育て世代への大胆な資源の投入
全世代型の社会保障制度への転換
重要少子化対策の一つ
質の高い幼児教育の保証は重要
背景:
若い世代が理想の子ども数を持たない最大の理由は経済的負担
Ⅲ支援を必要とする人への対策
児童虐待防止
児童虐待の現状:
児童相談所での相談対応が増加し、2021年度には20万7,660件(児童虐待防止法制定直前の約18倍)
重大な児童虐待事件が後を絶たず、社会全体で取り組むべき喫緊の課題
児童虐待防止対策の取り組み a) 法改正:
2022年に児童福祉法改正(こども家庭センター設置、訪問支援事業創設等)
一時保護開始時の司法審査の導入、こども家庭福祉の実務経験者向けの認定資格の導入、わいせつ行為を行った保育士の再登録手続の厳格化等
死亡事例等の検証:
社会保障審議会児童部会による定期的な検証
第18次報告では0歳児死亡が最も多い(65.3%)、うち月齢0ヶ月が50.0%
広報啓発活動:
毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付ける
「オレンジリボン運動」その後の援
2022年度の月間標語:「「もしかして?」のためらわないで! 189(いちはやく)」
社会的養育の充実
社会的養育の基本的方向性:
児童福祉法に基づき、家庭養育を優先
家庭養育が難しい場合、家庭的な環境での継続的な養育を目指す
施設養育の場合も、家庭的な環境に配慮する努力をする
家庭養育の推進:
里親等委託率の目標設定(乳幼児75%以上、学童期以降50%以上)
各自治体による「社会的養育推進計画」の策定と実施
里親支援センターの児童福祉施設化
養子縁組あっせん事業の適正化と支援
施設退所者の自立支援策:
「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業」の実施
「社会的養護自立支援事業」による22歳年末までの支援継続
児童自立生活支援事業の対象者拡大
「社会的養護自立支援拠点事業」の構想
被措置児童等への労働防止:
「被措置児童等虐待対応ガイドライン」の作成と実施
女性を護る施策の推進
配偶者からの暴力(DV)の現状:
2020年度の女性相談者のうち46.9%が「夫等の暴力」を主訴とし、増加傾向にある
関係府推進や機関との連携強化が必要
パートナーからの暴力対策の主な解決:
被害者の一時保護と民間シェルター等への委託
相談担当職員への専門研修実施
休日・夜間電話相談事業の実施
心理療法担当職員及び同伴児童ケア指導員の配置
夜間警備体制の強化
法的対応機能強化事業の実施
外国人被害女性支援のための専門通訳者養成
SNSを活用した相談窓口の開設推進
若年被害女性等へのアウトリーチ支援
DV被害者の共伴児童支援:
関係機関と連携する職員や学習指導員の配置
通学支援等の実施
人身取引(性的サービスや労働の強要等)被害女性の保護:
2001年4月から2022年3月までに479名を保護
「人身取引対策行動計画2022」に基づく支援
関係機関との連携による保護・支援の実施
困難な問題を驚く女性への支援:
2024年4月から新法「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」施行
基本理念に基づいて必要な取り組みの推進
ヤングケアラーの支援
ヤングケアラーの定義と問題:
悩みがや家族の思いやりを日常的に判断状況
年齢不相応の責任や負担により、生活や学業に支障が出る可能性
サポート体制の構築:
2021年3月、厚生労働省と文部科学省が連携プロジェクトチームを立ち上げる
同年5月、早期発見と支援戦略についての予想を考える
具体的なサポート策:
ヤングケアラーがいる家庭への家事・育児支援
地方自治体での調査実施
関係機関・団体等職員への研修
コーディネーターの配置やピアサポート等の先進的な取り組みへの経費支援
認知度向上への取り組み:
2022年度から2024年度までの3年間を「集中対策期間」と設定
集中的な広報・啓発活動の実施
Ⅳ子どもの貧困対策
困難の貧困対策の基本方針:
2019年閣議決定の「子供の意見対策に関する大綱」に基づく
主な方針: a) 妊娠期から社会的自立までの切れない支援体制構築 b) 支援が届きにくい子ども・家庭への配慮 c) 地方公共団体の取り組み充実
主な支援分野:
教育支援
生活安定のための支援
保護者の就労支援
経済的支援
「こどもの未来応援国民運動」の推進:
官公民の連携・協働プロジェクト
支援団体と企業のマッチング促進
「こどもの未来応援基金」による草の根支援団体への資金提供
Ⅴひとり親家庭
ひとり親家庭の現状:
母子世帯:119.5万世帯(2021年)
父子世帯:14.9万世帯(2021年)
母子の93.5%が離婚などの「生別」
就業状況:
母子世帯で母が就業:86.3% (正規48.8%、非正規38.8%)
父子世帯で父が就業:88.1%(正規69.9%、自営業14.8%、非正規4.9%)
平均年間収入:
母子世帯:272万円
父子世帯:518万円(※300万円未満が24.4%)
ひとり親家庭への支援策:
「子供の知恵対策に関する大綱」に基づく4つの柱: a) 教育支援 b) 生活安定支援 c) 就労支援 d) 経済的支援
具体的なサポート策:
相談窓口のワンストップ化
放課後児童クラブ等の終了後の居場所づくり(生活習慣習得、学習支援、食事提供等)
児童扶養手当の機能充実
高等職業訓練促進給付金の充実
追加サポート:
低所得の子育て世帯に対する特別給付金の支給(新型コロナウイルス感染症の影響を考慮)
Ⅵ母子保健医療
地域における切れ目のない妊娠・出産支援の強化
地域における妊娠・出産支援の強化:
成育基本法に基づく積極の推進
成育医療等基本方針の見直しと閣議決定(2023年3月)
経済的支援:
出産育児一時金の支給額を原則42万円に設定(2011年4月以降)
包括的な支援体制の構築:
子育て世代含む支援センターの法定化(2017年4月)
こども家庭センターの設置推進(2024年4月施行予定)
産後ケアの充実:
産後ケア事業の法定化と少数での実施の努力義務化
2024年末までの全国展開を目指す
その他のサポート事業:
産前・産後サポート事業
産婦健康診断事業
性と健康の相談センター事業
不妊に悩む夫婦への支援
不妊に関するサポート:
「性と健康の相談センター事業」の実施
医学的相談
不妊による心の悩みの相談
職場における不妊治療支援: a) 企業向け支援:
不妊治療と仕事の両立支援のためのマニュアル作成
人事労務担当者向け研修会の実施
企業認定制度:
2022年度から「くるみん認定」等に「プラス認定」を追加
不正治療と仕事の両立に取り組む優良企業を認定
子どもの心の健康支援等
安心の心の健康支援:
「子どもの心の医療ネットワーク事業」の実施
都道府県・指定都市の拠点病院を中心とした支援体制の構築
未熟児への医療支援:
入院を必要とする未熟児への医療給付金
2013年度から実施権限を市区町村に移譲
新生児スクリーニング: a) 先天性代謝異常等検査:
都道府県・指定都市で実施
早期発見・早期治療を目的とする
「健やか親子21」の推進
「健やか親子21(2次)」の概要:
21世紀の母子保健の方向性と目標を示す国民運動
目指す姿:「すべての子どもが健やかに育つ社会」
3つの基盤課題と2つの重点課題を設定
主な目標:
全国一律の質の高い母子保健サービスの提供
地域間の健康格差の解消
多様性を認識した母子保健サービスの展開
法的位置付け:
成育医療等基本方針において、成育基本法に基づく国民運動としての位置付け(2023年3月)
普及啓発活動:
ウェブサイト等を活用した対象者への情報発信
「健やか親子21全国大会」の毎年開催(2022年度は島根県)
「健康寿命をばそう!賞(母子保健分野)」による優れた取り組みの表彰
Ⅶ仕事と育児の両立支援
仕事と家庭の両立支援の必要性:
育児・介護期は特に両立が難しい
労働者継続のために、重点的な支援策が必要
育児休業の現状:
女性の育児休業取得率:85.1%(2021年度)
第1子出産後の女性の継続継続割合:69.5%(2021年、2015-19年出産者)
男性の育児休業の課題:
育児休業を希望しながら取得できなかった男性:約3割
実際の取得率:13.97%(2021年度)
今後の課題:
男女一緒に仕事と育児・介護を両立できる環境の整備
安心して働き続けられる環境の構築
育児・介護休業法
育児・介護休業法主な規定:
育児休業制度
短時間勤務制度
所定外労働の制限
パパ・ママ育休プラス(両親での育児休業時取得期間延長)
2021年の法改正の主な内容:
産後パパ育休の暫定:子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能な柔軟な育児休業の枠組み(産後パパ育休)の創設
育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化
妊娠・出産等の申出をした労働者への個別周知・意志確認の義務化
育児休業給付に関する規定の整備
法改正の目的:
男性の育児休業取得促進
育児と仕事の両立支援の強化
施行状況:
2023年4月に全面施行
現在、履行確保を進めている
企業における次世代育成支援
次世代育成支援対策推進法概要:
目的:次世代を担う子どもが健やかに育つ環境づくり
対象:国、地方公共団体、事業主、国民
企業の取り組み推進:
101人以上の企業に一般事業主行動計画の策定・届出を義務付ける
次世代育成支援対策推進センター等と連携し、計画策定を支援
企業認定認定: a)くるみん認定:
要件を満たした「子育てサポート企業」を認定
認定マーク(くるみん)の使用許可
認定制度の普及促進:
認定事例紹介
認定のメリットを積極的に紹介
認定企業に対する公共調達における加点評価の周知
仕事と家庭を両立しやすい環境整備
育児・介護支援プランの普及:
「育休復帰支援プラン」と「介護支援プラン」の策定支援
両立支援等助成金の主な種類: a) 育児休業等支援コース ・育休取得時、職場復帰時 ・業務代替支援 ・職場復帰後支援
b) 出生時両立支援コース 【第1種】 男性労働者が育児休業を取得しやすい環境整備を複数実施、業務体制整備を行い、産後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得させた中小企業事業主 【第2種】 第1種助成金を受給し、男性労働者の育児休業取得得率を3年以内に30%以上上昇させる等した中小企業事業主
c) 介護離職防止支援コース ・「介護支援プラン」を策定・導入 円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主 ・介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支援制度)を導入 利用者が生じた中小企業事業主
新型コロナウイルス感染症対応特例:特別有給休暇の支援
小学校等の臨時休業等に伴い、子どもの世話のために特別有給休暇 育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)により事業主への支援
家族の介護のための特別有給休暇 介護離職防止支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)によ り事業主への支援
男性の育児促進:
人事労務担当者向けセミナー実施、啓発動画作成、事例集配布等
企業の自主的な取り組みの推進:
自社の「仕事と家庭の両立のしやすさ」を点検・評価することができる両立指標
積極的に取り組んでいる企業を掲載した「両立支援のひろば」サイトの情報提供 ホームページ https://ryouritsu.mhlw.go.jp/
介護休業制度の周知:
家族を介護する労働者向けの積極的な広報
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