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『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』(ジム・コリンズ)ブックレビュー

ブックレビューを書くのは1か月ぶりぐらい。読書に飽きていたわけではない。1冊の本に苦戦していただけだ(笑)
400ページのこの本は、読み終えるのも2回目でメモを取りながら進めるのも大変だった。でもこれで、なんか自信ついたな。
いろんなビジネス書を通じ、この『ビジョナリーカンパニー2』の名前は知っていた。でもいつも、『2』なのよね。『1』はあまり聞いたことがなくて。買うときは、“とはいえまずは『1』からだよな?”なんて思っていたけど、『2』を先んじて買ってよかった。あぶなくこのボリュームを2回味わうところでした。
さて、『1』も『2』も中身は『偉大な企業』の中身について触れているわけだが、なぜ世の中が、そして著者自身が「まず『2』から読むべし」と薦めるか。それは『1』は創業当初から偉大だった企業の解読書である一方、『2』はまだ偉大になりきれていない(=『良好』)企業がいかにして『偉大』に飛躍できるかを解説しているから。曰く、『良好は偉大の敵』(無難な企業は偉大にはなれない)(P3)。偉大を目指す場合、大切なのは①規律ある人材(第2~3章) ②規律ある考え(第4~5章) ③規律ある行動(第6~7章)であり、それを継続すること(第8~9章)。(P18)
いってみましょう、400ページの世界へ。開いてみましょう、偉大な企業への扉を。

第2章 野心は会社のために――第五水準のリーダーシップ

キーワード:第五水準の指導者(P31)
個人として控えめであり、かつ『偉大な企業を作る』という意志の強さをもつ(P33)
謙虚さ+不屈の精神(P35)
野心は何よりも会社の成功に向け、自身の名声や資産には向けない(P40)
有名な変革の指導者(カリスマ)の招聘とは逆相関(P51)
成功した理由を「幸運」と挙げるものが多い(P54)
『窓と鏡』:成功を収めた時は窓の外(自分以外)に理由を探し、失敗している時は鏡(自分自身)に責任を探す(P56)
第五水準の指導者になりうる人は多いと思われる。特定の体験や条件によって開花しうる(P59)

→偉大な会社は世の中にとってわかりやすい『カリスマ』的な指導者ではなく、謙虚さ+不屈の精神を持っている者だと。『窓と鏡』の話、とても好き。

 第3章 誰をバスに乗せるか――最初に人を選び、その後に目標を選ぶ

「誰を選ぶか」から始めると、環境の変化に適応しやすく、かつ動機付けや管理の問題がなくなる(P66)
「誰を選ぶか」のあとに「何をすべきか」を決める(P72)
選ばれた適切な人材は報酬自体よりも会社をよくするために努力する(偉大な企業の経営陣の報酬は、ほかの企業に比べて特に高くはなかった)(P78)
適切な人材の選定にあたっては、能力よりも性格重視(P81)
冷酷(≒突発的でその場しのぎのレイオフを行う)ではなく『厳格』(厳しい基準を常に、すべての階層に適用)な文化を敷く(P83)
何よりも経営陣の人事で厳格な姿勢をとること(P85)
人を選ぶことに時間をかければ、適切な人材は管理を必要としない(P89~92)
最高の人材は最高の機会の追及に充て、最大の問題の解決には充てない(P94)
適切な人を集め、適切な場所に充てれば、長時間労働にはならないので人生も素晴らしいものとなる(P97~98)

→いや、耳の痛い話(笑)適切な人材を選べばモチベーション管理なんてものがそもそも要らないから結果的にスマートに偉大な企業への道を歩めると。しかもその企業にとって『不適切』な人材であっても、ほかの企業にとっては適切である場合があるから、そういう自社に不適切な人は雇わないほうがwin-winなんだって。

第4章 最後には必ず勝つ――厳しい現実を直視する

厳しい現実を直視し、対策をとるべし(P108)
カリスマ的経営者だと、部下は社外の厳しい現実に気づいても、顔色を窺い申告できない(P115)
上司が意見を聞く機会が十分にある企業文化が重要(P118)
誘導や非難をせず、理解するために聞くこと(P119)と、激しい議論をいとわないこと(P122)
例)赤旗の仕組み:授業中意見があればいつでも赤旗を上げ発言できる(P127)
現実を直視し、「最後には必ず勝つ」と宣言すれば高揚する(P130)
キーワード:『ストックデールの逆説』
アメリカ軍人のストックデールは捕虜となり拷問に遭いながらも、楽観視ではなく現実と向き合い、時間はかかる(≠楽観視)がいつか必ず解放されると希望を持ち続けた(P133~17)

→単純に現実逃避の楽観視をするのではなく、あくまで現実を直視したうえで、希望をもつことが重要なわけね。 

第5章 単純明快な戦略――針鼠の概念

キーワード:針鼠の概念
狐は知恵を使いあれこれ手を出し戦略を練るが、針鼠はシンプルな防御戦略に徹し身を守る。同様に、企業は幅広い戦略で力を分散させ焦点をぼけさせるのではなく、世界を基本原理によって単純化し、本質をとらえて勝つべき(P145~146)
重要なのは「3つの円」が交わる点を理解すること。①世界一になれる部分(≠世界一になりたい部分)②経済的原動力になる部分③情熱を持てる部分(P152)
①    :能力の罠を克服せよ(良好であっても最高になれないなら見切りをつけるべし)(P160)
②    :経済的原動力になる財務指標を1つに絞ること(しぼる作業自体が自社事業の深い理解につながる)(P173)
③    :自分や周囲が情熱を持てるものを発見すべし(P173)
針鼠の概念の確立には平均4年かかり、その道のりは恐ろしく困難であるが、厳しい現実を直視し、3つの円に基づく問いを繰り返せ(P180)
世界一だといえる点がなくても、幻想を抱かずに厳しい現実を直視しながら探し出す姿勢が大切(P184)

→3つの円のうち、①については注意が必要だよね。世界一になりたい部分ではなく、世界一になれる部分を探さなきゃと。

第6章 人ではなく、システムを管理する――規律の文化

目標達成のために最善の道を決める自由+目標達成への厳格な責任(P196)
①    「枠組みの中での自由と規律」という考えの文化
目標を達成することには厳格、ただしそのためなら自由な裁量を与える。まずは規律ある人を集め、考えを持ち、そのあとに行動(P200~202)
②    「コッテージチーズを洗う」人材を集める
トライアスロンのスター選手は徹底したトレーニングの後もコッテージチーズの脂肪分を取り除く(=一層の改善を常に目指す姿勢)(P203~204)
③    規律≠暴君
第四水準の指導者(カリスマ)が強制するのではなく、第五水準の指導者が持続性のある規律の文化を築くべし(P207)
④    針鼠の概念+「止めるべきリスト」
3つの円の重なる部分に止まる規律を持つほど成長の機会が増える。つまり機会を作り出すことではなく取捨選択をすることが大切。(P207)正しく選択した分野への『非分散型』投資(P226)

 →ここでもまずは人、そのあとに仕組みづくり。という内容が整理されている。 

第7章 新技術にふりまわされない――促進剤としての技術

針鼠の概念が情報技術の利用方法を決めるのであって、その逆ではない。(P239)
技術は適切に利用すれば勢いの促進剤にはなるが、勢いを作り出すわけではない(P245)
「他社の動きにどう対応するか」ではなく、「自社をどう理想に近づけるか」で戦略を練る(P258)

 →アホみたいに、考えずに技術に飛びつくことをやめろと。技術そのものを否定しているわけではなく、あくまで戦略論ありきだよってことね。 

第8章 劇的な転換はゆっくり進む――弾み車と悪循環

キーワード:弾み車
飛躍の道は小さな努力の積み重ねで開かれる(P265)=魔法の瞬間はない(一瞬で事が成就したように見えるがそうではない)(P272)
したがってその場その場の買収で飛躍を狙うのは間違っている(P288)

 →いいねぇ~「魔法の瞬間はない」って言葉。正しさの積み重ねが大切ってわけだ。 

第9章 ビジョナリーカンパニーへの道

BHAG(バーグ。社運を賭けた大きな目標)のうち、いいものと悪いものの違いがどこにあるか。(P301)
偉大な企業にとっての利益は、健全な身体にとっての血と水。生きていくには必要だが目的ではない(P307)
どのような基本的価値観を持っているかではなく、それをもっているか、浸透しているか、長期にわたって維持しているかが重要(P309)
各章の概念に対し、それぞれ以下の軸をもつべし。(P313)
①    環境の変化に適応できる組織を作り上げる(=時を告げるのではなく時計を作る)
②    両極にあるものをどちらも追及(ANDの才能)
③    基本理念を徹底
④    基本理念を維持し、進歩を促す
よいBHAG(バーグ。社運を賭けた大きな目標)は虚勢ではなく理解によって設定されたもの。3つの円が重なる部分への理解+BHAGの大胆さこそが強力な組み合わせ(P318)
「偉大な企業になる」ことは仕事が厳しくなるわけでなく、実績が向上し、その過程がはるかに楽しくなる。したがって偉大な企業を目指すことは例外なくするべきこと(P327)
意味のある仕事は意味のある人生を形成し、偉大な人生となる(P331)

 →最後いいねぇ。最後の最後で『偉大な企業』をなぜ目指すべきなのかが書かれていた。納得感があった。

各章のすべての項目が重要で、かつその順序も大切と書いてあった。中でも第2章の『第五水準の指導者』の『窓と鏡』の話が好きだな。あと、第3章の『誰をバスに乗せるか』。これは深いよ。わかってはいるけど、なかなかできない。
というわけで、私、石ころ空気も偉大な企業を目指す!

 

 

 

 

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