宮崎産マンゴー

宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載3】

3.糖度15度以上、一玉350g以上の独自基準

1)ブランド基準が生んだ「希少性」「価格高騰」「品質評価上昇」

完熟マンゴー収穫ネットもブランドの一つの要素だが、宮崎産マンゴーのブランドを決定づけたのは、非常に高い「太陽のタマゴ」ブランド認証基準を1998年に決めたことにある。

【太陽のタマゴ・ブランド認証基準】
◎自然に落果するまで樹上で完熟させた、特に食味、外観の優れた果実
◎経済連が定める県統一基準を満たす果実
  ・品位「青秀」以上
  ・階級「2L」以上
  ・糖度「15度」以上 注6)

単純に宮崎産マンゴーにブランド名をつけるのであれば生産農家にとっても何も問題はないが、認証基準となると生産農家にとって大きな壁となる。大量生産の工業製品であれば一定の品質の基準はクリアするのは難しくないもののマンゴーは果物なのでハウス栽培であれ工業製品のように品質を完全にコントロールできないし同一のものを大量生産出来ない。


「太陽のタマゴ」の認証を受けるのは全体の2割程度なので、8割は「宮崎産マンゴー」で販売しなければならない。
「太陽のタマゴ」ブランド認証基準を策定した当時、生産農家、関係者から異論があったと思われる。認証基準を満たせるマンゴーは一部に限られる。選別ではじかれた8割のマンゴーは「太陽のタマゴ」の認証を得ることが出来できない。取引価格は当然安くなる。ブランド認証基準を満たすためには、それまで以上にマンゴー栽培に手間がかかるが、すべて認証される保証はない。


認証基準を低くすれば生産されたマンゴーの多くを「太陽のタマゴ」として認証できるからその方が良いのでは考える人がいるのかもしれない。ブランドとは、他と区別するためにつけられる「商標」「銘柄」と認識している人からすれば「他と区別するだけなのに、なぜ認証基準を高くする必要があるのか」と疑問を感じるはずだ。


ブランドとは「暖簾」と「革新」である。単なる他と区別する「商標」「銘柄」ではなく、顧客の心中、心情を推し量りながら「期待を裏切らない信用」を醸成するため「業界を変革する型破りな革新的商品、サービス」を創造することである。

【ブランドとは】
「暖簾」→期待を裏切らない信用
「革新」→業界を変革する型破りな革新的商品、サービス

「太陽のタマゴ」は当時業界を驚かすような「革新的商品(農産物)」でなければならなかった。
「太陽のタマゴ」ブランド認証基準はブランド戦略として非常に的確で効果的だった。
 宮崎の生産農家、経済連、関係者は贈答用果物、マンゴーのトップブランドになる為に「太陽のタマゴ」ブランド認証基準を作成したが、ブランド認証基準はそれ以上の効果を生み出した。
 それが、「希少性」と「価格高騰」だ。


宮崎産マンゴーの2割程度しか「太陽のタマゴ」として認証されない。需要と供給の関係で市場価格は決まってくるが、供給を意図的に絞れば価格へ影響する。需要と供給のバランスから希少な「太陽のタマゴ」の価格が高騰するのは必然。

◎「太陽のタマゴ」認証基準→全体の2割→希少性→価格高騰

生産農家、経済連、関係者は贈答用果物にしようとブランド認証基準を設定したのであって、価格を意図的に高騰させようとしたのではないはずだ。
しかし、「太陽のタマゴ」の希少性が価格高騰につながり、価格高騰が、品質評価上昇へつながり、品質評価上昇が結果的に価格高騰へとつながっていった。


品質は飛躍的に伸びていかない。例年より気候が変化し不作となり品質的に落ちる場合もある。しかし希少性、価格高騰へとつながっていくと、品質評価は不作に関係なく上昇していく。

 ◎希少性→価格高騰→品質評価上昇

「太陽のタマゴ」認証基準により希少性を生み出し、希少性が価格高騰につながり、価格高騰が、品質評価上昇とつながっていった。「太陽のタマゴ」認証基準がブランド力を高めたともいえる。

→連載4につづく



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