コレクションの最初の一品

私はいわゆるサラリーマンコレクターです。この言葉の意味には存分に「予算が少ない」や「庶民」という要素が含まれていますし、事実日本の自称(重要)ビッグコレクターとされる人々からは、
「こいつらは自分達とは違う」
という雰囲気を会話や振る舞いからヒシヒシと感じ取れます。これは卑屈で妬み体質の自分のせいでもあります。

補足ですが、自分が本当のビッグコレクターだと思っている方々は、良い意味で下のコレクターを意識しないので、意外とフラットに接してくださり驚いたことがあります。もちろん選民思想バリバリの人もいますが!笑

私はアートアドバイザーをつける予算もなければ、購入予算も少ない、年齢の割には年収も平均以下な庶民コレクターですが、時々「最初はどんな作品を、誰を買えばいいでしょうか」という質問を受けたりします。

自分もコレクターなりたての頃に様々なコレクターやギャラリストが書いた本を読み、そこに共通して書いてある
「自分の好きな作品を買え」
という抽象性の高い綺麗事のような文字に、何言ってんだこいつらと思ったものですが、今になると結局それが正しい気がしますし、
あと思っている以上に作品を買うことは、業を背負うことだと実感しています。
そんな人生を歩もうとしている人に対し、誰々の作品を買った方がいい、とかもう言えません。

アートコレクションのどこに、何に対して比重を置くのかを自己分析した方が、コレクションすべき作品が見えてくるのではないかな。でもこんなのは買い続けてようやく見えてくるものなんですよね・・

そもそもアート買っちゃうような頭のおかしい人は、最初の一品は他人に相談しないで衝動的に買いますよ。そこがコレクションの面白さの始まりでもありますし、自分が生粋のコレクターさん達のことを好きな理由でもあります。
ちなみに「今だと誰買うといいですか?」みたいな質問をする人の真意は、ほぼ「誰が後々に高くなりますか?」と同じなのではないか、という感想を持ってます。そういう話になりがちなので。

以前は転売ヤーやアートで儲けようとしている人は嫌いでしたが、最近ではそういう感情も無くなりました。虚無です。
ゴキブリはどこにでもいますし、そんな転売ヤーに売ってしまうような作品顧客管理の出来ていないギャラリーや、そんなギャラリーだと調べもせずに作品を取り扱わせる作家が悪いんだと思えます。だっていくら経営が火の車だろうが、自分が扱っている作家の作品に興味のない人や好きではなさそうな人には絶対売らない!というまともなギャラリーなんていくつもありますからね。そんなギャラリーは全然教えられるんだけどな。

(セカンダリーであるオークションで高値をつけると、ギャラリーで売るプライマリー価格を上げる理由にもなり、オークションに出されると分かっていてそういう客に作品を売る戦略的なギャラリーもありますが、転売ヤーよりもそういうギャラリーの方が嫌いです)

ですので、最初のコレクションの一品を悩むよりは、多くのギャラリーを巡って、自分に刺さりがち、好きになりがちな作品・作家を扱っているギャラリーを見つけるべきだと思います。
そうすれば「自分はこういう作品が刺さるんだ」と気づいて、早めにコレクションの方向性が定まり、余計なお金をかけずに済むように感じますので、まずはインプットを多くすべきなのではないでしょうか。
その上で、最初の一品を買うのが、結局は後悔もなく自分にとっての正解だと思います。過去に何かを伝えられるのなら、最初の一品を買う前の自分にそれを伝えたい!

東京には多くのギャラリーがありますが、自分のとりあえずのおすすめはCADAN(https://cadan.org/membergalleries/)に所属しているギャラリーを見て回るのをお勧めします。これは自分も初期に先輩コレクターに勧められ、非常に参考になりました。



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