「世界はそれでも変わりはしない」 (リーグ第22節・名古屋グランパス戦:1-1)
豊田スタジアムでの名古屋グランパス戦は1-1。
負けたわけではないのに、まるで負けたような気分になったのは、それだけ勝ちたかった試合だったからかもしれません。
勝たなくてはいけない試合でしたし、どうしても勝ちたい理由もあった試合でした。平日ナイターに変更になったものの、アウェイ側のゴール裏には1000人近いサポーターが駆けつけて、声援で後押しをし続けていました。
しかし結果は勝ち切れず。
後半に関しては押し込まれる時間帯も長く、終盤は防戦一方。スコアをひっくり返されても何らおかしくなかった展開だったと思います。湘南戦の悪夢がよぎったのは僕だけではなかったかもしれません。
試合内容を吟味した際に悔やまれるのは、ボールを保持できていた前半になかなか攻撃のテンポを上げられなかったことでしょうか。
疑問だったので試合後のミックスゾーンで選手にも訊きましたが、そこはいくつかの要因がありました。
ただ大前提として、現地が非常に蒸し暑かったです。9月半ばの19時30分という遅いキックオフ時間ながら、気温は28.7℃。湿度は68%。連戦ということもあり、チームとしてのギアを上げにくそうな時間が流れたまま時間が過ぎていったような節もありました。
それでも決めるべきチャンスはありました。
最大の決定機は40分。右サイドの山根視来からの斜めのクロスを知念慶がスルー。その抜け出しに反応していたのは橘田健人でした。
一見、ラッキーな形でボールが転がってきたようにも見えましたが、自分が囮になることでインサイドハーフが侵入していく形自体はデザインしていたものだったと知念慶が明かします。
「ミキくん(山根視来)と話してて。自分が裏に抜けられなかったら落ちて、シャドー(インサイドハーフ)がペナの中に入っていくというのは狙う形でした」(知念慶)
一方の橘田健人は「狙ってはいたんですが・・・・」と、あまりにフリーの状態で抜け出してしまったことで、「緊張してしまいました」と言います。そして、あの決定機逸脱に関する反省の弁を述べていました。
「抜け出して、GKが(前に)出てくるのかなと思ったら、あんまり出てこなくて、
次は左に打とうかなとか・・・」
あの場面、GKランゲラックは前に出てシュートコースを狭めるのではなく、その場に留まりました。それにより橘田には考える時間が生まれたわけですが、あまりに時間の余裕もある決定機になると、いくつかも選択肢が浮かんでしまい、かえって迷ってしまうものです。これはサッカーにおけるチャンスシーンのあるあるかもしれません。橘田健人の放ったシュートは無常にもゴールバーを大きく超えていきました。
あれだけの決定機ですから、テクニカルテリアでの鬼木監督が頭を抱えるのも無理はありません。僕も記者席で頭を抱えました。
ただそんな彼が、後半に記念すべきJリーグ初得点を決めてしまうのが、サッカーの面白いところでもあります。
■「うまくボールを持ちながらスイッチが入った時にもっと全体でゴールに向かって行ければよかったかなと思います」(橘田健人)。テンポが上がらず、膠着させられた前半。打開策は何だったのか。
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