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「偶然という名の必然」 (ルヴァンカップ第4節・清水エスパルス戦:6-0)

等々力競技場でのYBCルヴァンカップ・清水エスパルス戦は6-0で勝利。

今大会の初勝利にして、今季のホーム初勝利ともなりました。

 試合後のミックスゾーン。
久々のゴールラッシュに、選手たちの表情もみな明るいです。そんな中、宮代大聖が出てきました。チームは大量得点も、スタメンで出た彼自身はFWとして無得点です。もしかしたら複雑な心境かと思いきや、彼の口から出てきたのは、攻撃に関する確かな手応えでした。

「自分たちがやりたいサッカーを表現できたと思います。前に、前に、アグレッシブにプレーできた。(自分の動き出しを)見てくれたおかげで相手のラインも下がったし、中盤の選手が受けやすかったり、メリットはたくさんありました。色々な状況がありましたが、全部がうまく噛み合ったと思います」

 自分の動き出しで相手の最終ラインを下げた仕事に手応えを口にしたのは、それが得点にも結びついたからでしょう。

 例えば2点目のゴールがそうです。ジョアン・シミッチからボールを受けた遠野大弥は、宮代大聖とのワンツーから鋭くコントロールショットを放ち、鮮やかに突き刺しました。

「2点目は練習通り。当てて入る。それでうまく打てたのが良かったと思います」と遠野は言ってますし、この場面だけを見ると、トレーニングでやっていたものを表現しただけと言えます。

 でも、注目して欲しいのはこの得点につながる前のワンプレーです。

 このシュートにつながる流れは、最終ラインの車屋紳太郎からのロングフィードに宮代大聖が背後に抜け出してキープし、そこからのシュートを弾かれたボールを、ジョアン・シミッチに渡っている二次攻撃から始まっているんですね。

 車屋紳太郎の狙い澄ましたロングフィードと宮代大聖の背後の抜け出しによって、相手のディフェンスラインを下げているわけです。ディフェンスラインが下がれば、相手の中盤はコンパクトさは薄れます。そして、セカンドボールを拾った時に、選手は前を向いて仕掛けやすくなります。

 遠野大弥が前を向いてシュートレンジを作る仕掛けができたのは、宮代大聖の動き出しでディフェンスラインが下がって、中盤のスペースがあったからでもあるわけです。宮代が話していたたくさんあるメリットとは、そういうことなのでしょう。こうした連動をもっと良くしていく手応えもあるのだと思います。


ちなみに2シーズン期限付き移籍をしていた宮代大聖にとって、等々力での勝利は久しぶりだったりします。「等々力の勝利、良いものですね」と水を向けると、「(川崎に)帰ってきて、久々の勝利だったので気持ち良いです。ルヴァンカップですが、リーグでも何回も勝利を積み重ねていけるようにしていきたい」と、このスタジアムでの勝利の雰囲気を噛み締めていたようでした。

では、レビューの本文になります。ゴールラッシュを生んだこの試合をたっぷりと振り返っていきたいと思います。

■「試合前、ちょっと静かだったんです」。復帰したベテラン・小林悠が試合前のチームに感じた静けさ。そこで施した等々力で勝つための空気感作りとは?

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