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「可能性を秘めた男たち」 (リーグ第32節・清水エスパルス戦:3-2)

 等々力陸上競技場での清水エスパルス戦は3-2で勝利。

先制して、逆転されて、それでも追いついて、小林悠のゴールで再逆転する・・・前節のコンサドーレ札幌戦を再現しているかのような流れでしたが、この日はもつれることはなく、しっかりと勝ち切りました。

ヒーローは決勝弾を決めた小林悠ですが、同点弾を決め、3点目の起点を担った山村和也の仕事ぶりも見事でした。特にセンターバックがあの位置まで顔を出して配給をこなすのは、思い切った判断です。山村本人にあの起点の狙いと判断を聞いてみました。

「あそこのスペースが空いていたので、ボールを受けたら攻撃に繋がるかな、と。マルちゃん(マルシーニョ)の走り込みから点が生まれたので、あそこをうまく使えたのは良かったです」

 自分の配給ではなくマルシーニョの動きを褒める。
山村和也を取材していると、得点に結びつく仕事をしても、「運が良かっただけで、自分は何もしていませんよ」的なコメントをよく言います。

試合の流れを引き戻した貴重な2点目の同点弾も「たまたま入りました。頑張ってコースに飛ばそうと思っていたので、入って良かったです」と実に謙虚です。DAZN解説の福田正博さんが「山村はゴールを決めても喜びませんからね」と言ってましたからね。本当に奥ゆかしい人です。

 試合後の監督会見の冒頭。
鬼木達監督は、等々力に戻ってきた「声援」を勝因の一つとして挙げています。

「一部ではありますが、2年半以上ぶりの等々力での声出し応援が可能になって、それが今日のような展開で力を与えてくれたと思っています。選手が諦めなかったことと、サポーターの後押し。それが今日の勝利につながったと思います」

 アウェイゲームでは、すでに声出し応援を何試合か経験しています。

しかし、ホームゲームである等々力での声出し応援はコロナ禍では初めてです。2020年2月のJリーグ開幕戦以来ですから、約2年半ぶりになります。正確には958日ぶりだそうです。

川崎フロンターレを最近応援し始めたというファン・サポーターの中には、初めて等々力に響くチャントを聞いたという方も少なくなかったかもしれませんね。やはり声援あっての「等々力劇場」ですから。

それにしても、鬼木達監督になってから清水エスパルス戦はいまだに公式戦無敗です。かつては「オレンジのチームに勝てない」なんてジンクスがありましたが(清水、新潟、大宮)、近年の清水に関していえば、攻撃的な姿勢を打ち出しているので、試合展開的にも噛み合いやすいのかもしれませんね。

では、レビューになります。試合の攻防戦を読み解いております。

■「ボールを動かしながら、相手の動きを見て相手の空いているところを突いていければと思っていました」(山村和也)。前半からあった決勝弾の布石。山村和也が巧みに狙っていた、ラインを飛ばすボールとは?

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