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試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第9節・FC東京戦)

4月11日は味の素スタジアムでFC東京戦・・・多摩川クラシコです。

この多摩川クラシコは11日の14時ですが、今回は本家のエル・クラシコもその日の未明に開催されますね。

本家と試合日が重なるのは、もしかして初めてでしょうか?・・・両チームの選手たちも、ひょっとしたら本家のクラシコをチェックしてから、多摩川クラシコに臨むかもしれませんね。

 去年、圧倒的な強さで2冠を達成した川崎フロンターレですが、唯一逃した国内タイトルがルヴァンカップでした。等々力で0-2で負け、準決勝で敗退。その相手がFC東京でした。去年、喫した数少ない公式戦の黒星でもあります。

 せっかくなので、少し振り返っていきたいと思います。

あの試合で見事だったのは、FC東京が採用したフロンターレの右サイド対策です。右サイドバックの山根視来が攻撃参加した時に生まれる背後のスペースを効果的に狙うために、4-2-3-1(4-4-2)の左サイドハーフにディエゴ・オリヴェイラを配置してきたんですね。

 重戦車のようなストライカーである彼をサイドに配置して、自陣の守備でハードワークさせた起用法が巧妙で、得点力が低下することを承知で、長谷川健太監督は左サイドハーフに配置したのだと思います。

 そもそも攻撃の時のフロンターレは、サイドバックが高い位置を取るので、どの相手も奪った瞬間はその裏のスペースを狙ってきますが、相手陣地で奪われても、即時奪還でボールを奪い返します。たとえサイドバックの裏が空いていても、切り替えの早さと高い強度で、そこに出させない様にプレッシャーをかけて封じ込めてしまうんです。

 右サイドでいえば、山根視来は湘南仕込みの走力もありますし、自分のマークを捨てて、外に行かせないように中央を締めて、そこに出せないようにタイミングを遅らせてしまいます。切り替えの早さだけではなく、背後にスペースはあっても、そこを見えないように塞ぐ守り方がうまい選手なんです。

 さらに、仮にそこで塞げなくても、ちゃんと保険があります。狙ってくる場所は右サイドバックの裏のスペース。スーパーなCBジェジエウが素早くカバーリングできるので、ラフなロングボールで走り合う展開になっても、大抵の相手選手はジェジエウに走り勝てません。

 つまり、右サイドバックの裏のスペースが見えていても、フロンターレの即時奪還でそこからボールを脱出できないこと。さらに展開出来たところで、スピードのあるジェジエウに素早く対応されてしまうこと。相手からすると、この二つのポイントを攻略していかないと、フロンターレの右サイドは崩せないわけです。

 しかし、そこを見事に攻略したのが、ルヴァンカップ準決勝で対戦した時のFC東京が採用した戦法でした。

 自陣でハードワークするディエゴ・オリヴェイラは、ボールを奪ったら低い位置でも抜群のキープ力を誇ります。

 これによって何が起きたのか。
フロンターレが右サイドでボールを失った瞬間、いつものように奪い返そうとしても、ディエゴ・オリヴェイラ個人にボールを持つ時間を作られて、奪い返せませんでした。

ディエゴ・オリヴェイラというキープ力を持つ選手が左サイドで時間を作ることで、フロンターレの右サイドの切り替えと強度の機能性を下げたんですね。ボールを奪えるタイミングがいつもより遅れたことで右サイドを塞ぎきれず、守備陣も後手を踏む対応になります。

 ただそれだけではフロンターレの右サイドの攻略はできません。保険として機能するジェジエウがカバーしてしまうからです。しかしこの時のFC東京が巧妙だったのは、そこの走り合いの局面で、リーグ屈指のスピードを誇る永井謙佑をぶつけてきたことです。ジェジエウといえども、カバーリングには難しい対応を強いられていました。

 普段であれば表面化しない右サイドバックの裏のスペースと、それをカバーするジェジエウの対応。それをキープ力のあるディエゴ・オリヴェイラの左サイドハーフ起用と、永井謙佑のスプリントで打開してきたんです。

実際に前半の失点は、その状況で起きたジェジエウのファウルで奪ったセットプレーから生まれていたわけで、FC東京からすれば、してやったりだったはずです。去年、唯一逃した国内タイトルであるルヴァンカップは、ここで敗退となりました。

ただ、このフロンターレ対策を真似るチームはいませんでしたね。他のチームからすると、ディエゴ・オリヴェイラのような驚異的なキープ力を持つ選手と、永井謙佑のようなスプリントを持つプレイヤーは、なかなか用意できないですからね。

もっとも、等々力でのリーグ戦では、この策を再び採用してきたFC東京を川崎フロンターレが返り討ちにしています。

いくつかの狙いはあったんですが、一番はこの戦法の肝であったディエゴ・オリヴェイラに時間を与えなかったことです。

FC東京による対策法は、低い位置で奪った彼自身の驚異的なボールをキープによってフロンターレの即時奪回をさせず、切り替えた後の守備対応を遅らせ、そしてうまく前線に展開してカウンターにつなげていくという発想です。

 だったら、奪い返した後のディエゴ・オリヴェイラをより強く囲い込んでしまい、無力化してしまう。平たくいうと、低い位置でのディエゴ・オリヴェイラの徹底マークですね。彼のところで起点を作って展開しようとしてくるのだから、展開される前に素早く奪ってしまう。

 もちろん、奪うのは簡単ではありません。しかし、起点となって時間を作ることが目的であるとわかっているならば、対策はできます。実際、低い位置でディエゴ・オリヴェイラがキープしたり、ドリブルで運んでいこうとしたら、家長昭博、山根視来、そして守田英正が瞬く間に駆け寄り、ファウルも辞さない覚悟で止めました。普段は、あの深い位置では、あそこまで激しく囲い込んで止めに行かないですし、激しく止めた家長昭博はディエゴ・オリヴェイラとちょっとエキサイトしかけました。それぐらい低い位置にいるディエゴ・オリヴェイラを徹底マークしたんですね。要は、単純にディエゴ・オリヴェイラ包囲網を敷いて、彼に時間を作らせなかった。他にもいくつかポイントはありましたが、これでフロンターレ対策を機能不全に追い込みました。

その結果、前半に失点したFC東京は、プラン変更を余儀なくされ、後半から3-4-3にシステム変更しています。そして、ディエゴ・オリヴェイラをストライカーの仕事に専念させています。それで同点弾を決めるのだから、ディエゴ・オリヴェイラはさすがとしか言いようがありませんでしたが、それでも試合はフロンターレが勝ちました(中村憲剛の現役ラストゴールです)。

 そんな去年の攻防戦があっての今回の多摩川クラシコです。

この試合で、長谷川健太監督が、去年のあの策をそのままぶつけてくるとは思いません。今季は4-3-3システムが基本ですし、好調のディエゴ・オリヴェイラはストライカーとして起用したいでしょうしね。ただ永井謙佑はベンチにいるでしょうし、オプションとして考えている可能性はあると思います。

・・・・びっくりするかもしれませんが、ここからがプレビューの本題です・笑。ラインナップはこちらです。

■「(麻生)グラウンドに一番早く来ているのがタンちゃん。試合に出ていない時も、ずっと自分がやるべきことを怠らずに準備していた」(小林悠)。選手が口にするGK丹野研太への信頼感。目指すはリーグ4試合連続完封勝ち。中三日で挑む多摩川クラシコの気になる予想スタメンは?

■「自分たちが理解した中で、そこをどう強気でやれるか。そこは自分たちの戦い方でもある」(鬼木監督)。相手の良さを「消す」のではなく「出させない」。今季の鬼木フロンターレが挑戦している志、わかっていますか?

■「ディエゴ選手もそうで、簡単に守れるとは思ってはいない」(ジェジエウ)。味の素スタジアムで公式戦5試合連続得点中のディエゴ・オリヴェイラを沈黙させられるか。鍵を握るのは、中央守備のトライアングルにあり。

■「選手からすれば、受け入れがたいところもあると思います。特にFWに関しては。そこはチームのためにという思いで全員が戦ってくれています」(鬼木監督)。激しい局面攻防が予想される右サイドエリア。そしてエース級のストライカーを共存させている鬼木流マネジメントの秘密を聞いてみた。

以上、4つのポイントで全部で約10000文字。冒頭部分で3000文字ぐらい書いているので、本文は大体7000文字ぐらいです。多摩川クラシコを楽しみたい方はぜひ読んでみてください。

なお、前節のレビューも、後日取材を加えてたっぷり書いているので、こちらもぜひどうぞ。→ボクらの歴史。 (リーグ第8節・サガン鳥栖戦:1-0)

では、スタート!

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