見出し画像

「6年分の45分間」 (Jリーグアジアチャレンジin タイ:BGパトゥム・ユナイテッドFC戦:3-1)

 BGスタジアムでのBGパトゥム・ユナイテッドFC戦は3対1で勝利。

スコアレスで迎えた後半に知念慶、橘田健人、そしてマルシーニョのゴールで競り勝ちました。公式戦ではなく親善試合、それもシーズンが終わった後に行う試合なので、今年の集大成であると同時に、来季を見据えた視点で観戦する試合になるところがあります。

いくつかのポイントがありましたが、個人的に注目していたのは、守備陣の組み合わせでした。

最終ラインに関していえば、このアジアチャレンジツアーでは、谷口彰悟、山根視来、ジェジエウ、登里享平、さらに若手の高井幸大も不在です。レギュラークラスがごっそりと不在となった台所事情を考えると、組み合わせも必然的に限られてきます。

 というか、わりとギリギリの編成です。
例えば、右から佐々木旭、山村和也、車屋紳太郎、橘田健人の並びになるのか、あるいは、右に瀬古樹か松井蓮之を配置して、左を佐々木旭にするのか。考えられたのはそうした組み合わせでしたが、実際の最終ラインは、松井蓮之、山村和也、車屋紳太郎、佐々木旭の並びに。ちなみにこの並びは、今年の天皇杯(札幌大学、東京ヴェルディ戦)と同じ4人ですね。

ただそれ以上に、僕の目をひく存在がスターティングメンバーのリストにありました。

ゴールキーパーのポジションで先発していた安藤駿介です。

 今年でプロキャリア14年目。
湘南ベルマーレに期限付き移籍していた年もありましたが、2009年からのクラブ在籍歴は、現役選手で言えば、同期である登里享平と並んで最古参になります。

ユース出身者であり、育成年代も含めた在籍期間を考えれば、このクラブとともに人生の多くを過ごしてきたという言い方もできるわけで、チーム関係者の誰もが一目置く重鎮でもあります。

 しかしここ数年は、出場機会が得られていません。守護神チョン・ソンリョンが君臨し、2番手に位置する新井章太、丹野研太との争いに割って入ることが出来ず、第3GKという立場で過ごす日々が続いています。この22年シーズンも一度も公式戦のピッチに立つことはありませんでした。

 安藤駿介が公式戦で出場した自身の試合となると、2016年のナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)までさかのぼらなくてはならないほどです。

 チームは2017年から鬼木体制になってタイトルを獲得し、4度目のリーグ優勝を達成していますが、直近の6シーズンで安藤自身は公式戦の出場機会を一度も得られていないわけです。ある意味、このチームの中で誰よりも試合に飢えている選手かもしれません。

 そんな安藤駿介が、この試合ではスタメンとして名を連ねました。
公式戦ではありませんが、有観客で行われるゲームです。2016年以来ですから、彼がフロンターレのゴールマウスを守る佇まいを、初めて見るサポーターもいたと思います。そして個人的にも、この試合で安藤駿介がピッチに何を表現するのか。しっかりと見ないといけないと感じました。

 そう思うだけの理由が、自分にはあったからです。

ここから先は

4,310字
この記事のみ ¥ 200

ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。