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「笑顔の未来へ」 (リーグ第20節・サガン鳥栖戦:4-0)

等々力陸上競技場でのサガン鳥栖戦は4-0で勝利。

鳥栖相手に4得点という結果は、流石に「望外」でした。

1-0、0-0、0-0、0-0、1-1。

・・・・これは何のスコアかというと、タイトルを取り続けている過去5シーズンにおける等々力のサガン鳥栖戦スコアです。ホームで鳥栖と試合をするときはロースコアでの接戦になるという、不思議な歴史があるのです。ちなみに2016年は1-0でした(大久保嘉人がラストプレーの土壇場で決めた)。

2点以上取った試合となると、2015年の3-2にまでさかのぼらなくてはいけないぐらいです。近年の川崎フロンターレの勝率を考えると、鳥栖という相手が非常に厄介な存在であったとわかるはずです。

 しかも最近の鳥栖はここ6試合で2勝4分と負けなし。シーズン全体を見ても引き分けの数が多く、13引き分けはリーグ最多です。言い換えると、「一番勝たせてくれない相手」とも言えます。なので、この4得点での大勝の結果が、いかに望外だったのがわかるのではないでしょうか。

 サガン鳥栖戦におけるポイントは、やはりあの巧みなボール保持をどう封じるのか。そして、自分たちがいかにボールを握るのか、だったと思っていました。つまり、ボールの握り合いがゲームの主導権争いにも直結するというのが、僕個人の見立てでした。

 そのボール保持のポイントはどこになるのか。
この鳥栖戦の試合前に行われたオンライン囲み取材で、大島僚太に訊いてみました。チーム随一の技巧派である彼の回答は、意外なものでした。

 というのも、技術ではなくハートの部分を強調したからです。

「鳥栖戦は、気持ちの部分でどっちが主導権を取るのかだと思います。戦術というか、やり方うんぬんの前に相手はガツガツくるイメージもあるので」

 技術よりも、まずは「気持ちの部分でどっちが主導権を取るのか」が大事だと言ったんですね。いやー、彼が底を強調したことに驚くと同時に、ちと感動してしまいました。

 ただ彼が気持ちの部分を強調したことには、しかるべき理由があります。それは自分がベンチから見つめた直近の鹿島戦で、気持ちの強さを持ってゲームに入ったことが、あのような前半の戦いにつながったのを感じたからだと言います。

「そこで相手を上回ることは、鹿島戦でスタートから出ていた選手が示してくれたことでもあります。スタートから出ていた選手たちは、それを行なった上でボールを保持することが出来ていました。そこで自信を持ってボールをつなぐことができれば、相手のリズムではなくなると思っています」

 何でしょう。
チームで一番ボールを持つ技術の高い大島僚太が、ボールをつなぐために大事なのは気持ちの強さだと話してくれたことに、何とも言えない嬉しさを覚えました。

 でも、結局、そういうことなのだと思います。

試合でそう話していた大島僚太は、等々力でのゴールを決めました。左からのクロスに小林悠が潰れたこぼれ球に反応して流し込んだゴールです。

 車屋紳太郎から宮城天にスルーパスが出た時、すでに大島僚太は猛然とゴール前に向かってダッシュをスタートしています。

 マイナスの折り返しが来ると思ってスプリントしたようですが、でもあれは、あまり理屈じゃなかったと思っています。

 きっと、ゴールの匂いがしたんじゃないでしょうか。そしてそこに全力で走ったら、ボールがこぼれてきた。

 やっぱり等々力には神様がいますね。

もしかしたら、気まぐれな女神なのかもしれないけど、横浜F・マリノス戦のジェジエウといい、この日の大島僚太といい、長期の怪我から戻ってきた選手には、ときどき優しいのかもしれません。全力でゴール前に走ってきた大島僚太の目の前に、ボールをこぼしてくれました。

ちなみに大島僚太の等々力でのゴールは、2018年の神戸戦以来だそうです。Jリーグの年間ベストゴールにも輝いた、あれですね。どんだけ久しぶりだったんですか。

■「まず全員でボールに対して顔を出すとか、流動性をより持ちながら、少しずらしながら戦っていこうという話をしました」(鬼木監督)。なぜチームに流動性が復活し始めたのか。それを支える2人の存在とは?

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