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「釣り合わなかった天秤の上で」 (リーグ第18節・ジュビロ磐田戦:1-1)

 等々力陸上競技場でのジュビロ磐田戦は1-1のドロー。

引き分けに終わってしまった要因はいくつかありますし、色々と考えさせられることの多い結果となりました。

 偶然ではありますが、先週の天皇杯で負けた東京ヴェルディも、先週末のリーグ戦で勝てなかったジュビロ磐田も、Jリーグで一時代を築くような圧倒的な強さを誇ったクラブです。黄金期と言われる時期には、Jリーグを複数回制覇しています。

 ただ黄金期は永遠には続きません。その後は低迷期が訪れており、どちらのクラブも現在は苦戦をしています。それぐらい「クラブが強くあり続ける」というのは困難なことなのだと思います。

では、川崎フロンターレはどうなのか。

直近5年で4度のリーグ優勝をしているチームですし、今後も強くあり続けることは、チームというよりも、クラブ全体の方向性やマネジメントで変わってくる話だと思っています。ただ監督や選手たちは、目の前の1試合に全力を尽くして戦っています。

 そしてこの試合は勝ち切れなかった。

試合後のミックスゾーン。選手たちの言葉からにじみ出ていたのは、勝つべき試合を勝ち切れなかったという思いです。

「すごく押し込んでいて、相手の陣地にボールを動かせていた。攻守の切り替えも早くて、ボールを回収できていたと思います。いいサッカーが出来ていた前半だったんですが、2点目が取れないと、こういう展開になってしまうかなという試合でした」(小林悠)

「2点目を取れれば一番良かったですが、それ以上に(失点)0で終わらせられた試合。僕はそっちの方が悔しいです。(追加点を)取れなくても1-0で終わらせられれば良かった」(谷口彰悟)

 前線のポジションにいた前キャプテンは「追加点が奪えなかったこと」を、最終ラインにいた現キャプテンは「逃げ切りに失敗したこと」を、それぞれ悔やんでいます。

 リードを逃げ切れなかったことは反省点ですが、「最初に」目を向けるべきことはやはり追加点を奪えなかったことだと思います。

 なぜなら、決めるべきチャンスがあったからです。

最大のチャンスだったのは、54分のカウンターでしょう。1点リードして迎えた後半、前傾姿勢でプレッシングを強めて来たジュビロ磐田に対して、やや後ろからのつなぎが窮屈になったのは事実です。

 ただ、そうなれば広大なスペースを狙ってカウンターを繰り出せば良いだけの話。実際、前傾姿勢になった相手を、高い位置からボールを引っ掛けてひっくり返す狙いはありました。

 その54分、手薄になったスペースをカウンターで抜け出したチャナティップがGKとの1対1を迎えています。これを仕留めていれば、勝利を近づける追加点になるはずでした。しかし、このシュートはポストに嫌われて追加点を奪えず。

 あれは決めておくべき場面だったと思いますし、ジュビロもカウンターのリスクを承知で来ていた時間帯だっただけに、あそこを決め切れなかったことが悔やまれます。

 こうしたポイントを踏まえた上で、いろんなことを考えさせられることの多い試合でした。本文では、試合後のミックスゾーンでの証言を参考にしつつ、もうちょっと深いところを語っていきたいと思います。

■大島僚太から学ぶ「技術と自信はリンクする」という話

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