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「水色の輝き」 (リーグ第13節・アビスパ福岡戦:2-0)

予感は、あった。

遠野大弥の今季初ゴールで等々力陸上競技場が湧いた、その5分後。コーナーキックを蹴りにいく脇坂泰斗がGゾーンの前で「煽り」を入れると、サポーターのボルテージがさらにグッと上がったのだ。

 このスタジアムにおいて、背番号14が煽ることは特別な力が宿ることを意味する。等々力に響き渡る拍手が一層大きくなり、追加点の期待はこの瞬間に最高潮に達したようにも感じた。

サポーターの希望を乗せたボールに飛び込んでいったのは、車屋紳太郎だ。

178cmの彼は、レアンドロ・ダミアンや谷口彰悟らに比べると、屈強なマーカーにマンツーマンで警戒されることが少ない。この試合ではストーン役として配置されていた山岸祐也がいたニアサイドを、家長昭博と連携して攻略するデザインされたプレーで仕留めた。

 サイドバックで起用されていた頃は、セットプレーでは守備要員としてカウンターに備える役回りが多く、得点に絡むことは少なかった。ただセンターバックで出場するようになると、セットプレーでは得点源としての役割を任されている。「信じて走り込むことをやっている」と話した通り、打点の高いヘディングで豪快にゴールネットを揺らした。

「鮮やか」としか言いようがない一撃である。ただゴールが認められるまでにはしばしの時間を要している。ボールとは関係のないファーサイドのエリアで、競り合った際に谷口彰悟の手が顔に当たったとして前寛之がうずくまっていたからだ。

 VARでチェックしている間、等々力に詰めかけたサポーターは、手拍子で後押しをし続けていた。騒ぐわけでも、ざわつくわけでもない。去年の鹿島アントラーズ戦で小林悠が決めた劇的な決勝弾もそうだったと思うが、手拍子を鳴り響かせながらVARで結果を待ち続ける光景は、等々力らしくて良いなと思う。

 結局、ゴールは正当なものとして認められた。ちなみに車屋紳太郎が等々力で公式戦初ゴールを決めたのは、2016年の天皇杯3回戦・ジェフユナイテッド千葉戦である。その時に千葉を率いていたのも、実は長谷部茂利監督だったりする。

■バランスを崩さない守備組織に対する、いつもの「違い」の作り方

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