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「あれは気持ちです。感覚ですね。とにかく入れという気持ちで飛び込んだ」(鈴木雄斗)。左右の揺さぶりから結実した、必然の劇的決勝弾を読み解く。(リーグ第14節・柏レイソル戦:2-1)

 三協フロンテア柏スタジアムでの柏レイソル戦は2-1で勝利。
ご存知の通り、86分に投入されたラルフこと鈴木雄斗が、ロスタイムに劇的な決勝弾を決めました。

・・・いやはや、しびれましたね。
プロ7年目でのJ1初出場。今季の新体制発表会見で「この6年間、毎日絶対J1で活躍するということを強く、毎日思い続けてきました」と語るほど強い決意でやってきたラルフに、ようやく巡ってきたJ1リーグでの出場機会。彼は、そのチャンスを見事にものにしましたね。

 あの決勝弾についてはすでに百万回ぐらい見直しているサポーターも多いと思うので、ここで多くは語りません・笑。いろんな媒体で記事もたくさん出ていますから、それを読んでください(もちろん、本文では掘り下げてますが)。

 マニアックな僕が注目したいのは、あの試合での鈴木雄斗のファーストプレーです。

 彼はエウシーニョに代わって右サイドに入りました。その最初のプレーで、ボールを受けると猛然と縦に仕掛けます。そしてゴール前にクロスを上げて、プレーを終えています。緊張はあったと言いますが、ボールタッチを含めて、少なくともゲームの入りは上々だったように見えました。何気ないプレーでしたが、あのワンプレーには、実はこんな秘話があったと言います。

「あのパスはケンゴさん(中村憲剛)からで、目が合ったんですよ。まだこれは話していないんですけど。わざと僕にボールを出してくれたんです。絶対そういう顔をしていた(笑)。本当に余裕ある人だなと。僕も、オニさん(鬼木監督)にシュートだけではなく、クロスを上げていっていいとも言われていた。普通に抜けたし、相手も疲れていたのだと思います。あれで良い感触はありましたね」(鈴木雄斗)

 なるほど。
言われて試合を見直すと、確かに中村憲剛からのパスでした。これは「中村憲剛あるある」なのだと思いますが、例えばデビュー戦の新人や移籍した若手などとプレーするときは、キックオフで受けたボールをその選手にいったんパスを渡して、まずボールタッチさせることがよくあります。緊張している選手には、ボールフィーリングを確かめさせてリラックスさせるわけです。記憶に新しいところだと、2014年の谷口彰悟のプロデビュー戦がそうでしたね。

 何気ないパスに「優しさ」を込めるあたり、さすがバンディエラです。

 もし仮にですが、ファーストタッチが難しい場面で巡ってきてミスをしてしまっていたら、メンタル的にリカバーできず、そのまま試合を終えてしまったかもしれません。実際、ファーストタッチに失敗してドツボにはまる若手もいますからね。

 そうなっていたら、あの決勝ヘディング弾も、焦って枠を外していたかもしれません。引き分けに終わっていたら、柏レイソルの下平隆宏監督も解任ではなかったはずで・・・・そんな風に考えていくと、ああいう何気ないワンプレーの積み重ねが勝敗にも影響が及ぼすのがサッカーの怖さというか、不思議なところというのを、あらためて感じた次第です。

 さて。思わず語ってしまいましたが、そんな劇的な勝利を収めたゲームのレビューはたっぷりと。ラインナップはこちらです。

1.「あそこも自分のサイドのスペースに走ってくるんじゃないかと思っていた。あの間を使われるとは思わなかった」(車屋紳太郎)。失点はなぜ起きたのか。スピード勝負ではなく、間で受ける動きをしてきた伊東純也との駆け引きで、車屋が後手を踏まされた原因とは?

2.「みんなが下を向かないで『行けるよ』、『盛り返そうよ』と言っていた」(谷口彰悟)、「降り切ったほうが、(相手は)プレッシャーにこない。落ちた方が3対2で、そこでボールが持てる」(中村憲剛)。3試合連続先制される展開にも下を向かなかったフロンターレイレブン。そして逆転するための布石を冷静に打ち続けた、前半の試合運びを読み解く。

3.「自分もびっくりしました。でも、ああいう思い切りが大事なんだなと」(谷口彰悟)、「打つなよ!と思ったら、入った」(中村憲剛)。同点弾は突然に。守田英正の「ボールを奪うチャレンジ」と小林悠の「大胆なミドルシュート」から学ぶ、3試合ぶりのゴールを引き寄せる姿勢と強い気持ち。

4.「一番怖いのは、あそこだったので。あの選手たちを下げさせる。クリスティアーノが守備で頑張ってくれれば、その体力を削れる」(中村憲剛)。攻撃的な両サイドに守備をさせ続けたことで機能した、伊東純也とクリスティアーノのカウンター対策とは?

5.「少し後ろに自分のスペースを与えることもあるが、全員でカバーリングしあうことで試合ができたと思います」(エウシーニョ)、「だから、『気にしなくてもいいよ』ってエウソンには言っていました」(奈良竜樹)。攻撃は最大の防御なり。クリスティアーノと対峙したエウシーニョが、後ろ髪を引かれずに攻撃参加し続けることができた要因とは?

6.「どこに飛ばそうというよりも、勝手に体が動いた。あれは気持ちです。感覚ですね。とにかく入れという気持ちで飛び込んだ」(鈴木雄斗)。左右の揺さぶりから結実した、必然の劇的決勝弾を読み解く。

 以上、6つのポイントで冒頭部分も含めると全部で約10000文字のボリュームです。試合翌日の後日取材も追加して書いてますので、ぜひ読んでみてください。

なお、プレビューはこちらです。➡️試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第14節・柏レイソル戦)

では、スタート!

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