見出し画像

「HELLO, IT'S ME」(リーグ第7節・湘南ベルマーレ戦:3-1)

等々力陸上競技場での湘南ベルマーレ戦は3-1で勝利。

山根視来の同点弾を生むキャラメルパスを出した大島僚太、そして三笘薫、田中碧と途中出場の選手がゴールに絡む仕事をしての逆転勝ちです。

これでリーグ戦は6連勝。再開後は、唯一の全勝となりました。

 試合後の会見で選手層の厚さについて聞かれた鬼木監督は「多分、選手層という意味ではウチが一番厚いと思ってます」と胸を張って答えています。そして、こう言葉を続けました。

「プラス、誰が出ても信頼して出せる。そういう意味では、選手間の中でも誰がスタートでも、この1試合を勝ち抜くためには何かを理解している。代わって出た選手が点を取れるのも、スタートからハードワークをし続けた結果だと思っています。チーム全員で戦っているのがこの結果になっている」

 再開後から、交代枠が5人に増えたことで選手層の厚さが強調されていますが、選択肢が増えることが結果にそのまま直結するのかというと、そんな簡単な話じゃないと思います。サッカーは足し算ではありませんからね。

 実は中断期間中の鬼木監督は、選手交代が5人になることの影響をそれほど重要視していなかったようです。

 再開後の、ある日のオンライン囲み取材で話していたことです。

交代枠が5人になった影響を問われた際に、「まだ何試合かしか経験していないので、なんとも言えないですが」と前置きした上で、ある練習試合での体験が、今回の交代枠に対する考えを改めるきっかけになったと話しています。

「始まる前ではそんなにこうしようというのは、大きくはなかったです。ただ最後の、再開前のトレーニングマッチをやったときに、自分たちは人数の関係で交代はできなかったのですが、相手チームに交代をうまくされて良いゲームをされた。この交代は、チームに力を与えるなと1週間前に感じられた。それは大きな出来事でした」

 その「大きな出来事」になった練習試合とは何か。

それが、6月27日に行われた湘南ベルマーレとの一戦だったわけです。

振り返ってみると、チームは4チームとの練習試合を再開前に行なっています。

 6月13日にSC相模原(3-0:45分×3本)。6月17日に町田ゼルビア(5-0:45分×3本)。6月20日には対戦相手非公表(7-0:45分×4本)。そして6月27日に湘南と行っています。

 この湘南とやった45分×4本の練習試合のスコアは6-3でした。1-0、1-2、3-1、1-0という内訳ですが、それまでの3試合で全無失点だったチームが、この湘南戦だけ3失点を喫しています。

 練習試合は全て非公開だったので、実際の試合展開はわからないです。ただ鬼木監督によれば、この練習試合で湘南が使った5枚の交代策が効果的で、良いゲームに持ち込まれたということなのでしょう。

 そう考えると、この湘南との練習試合を通じて、鬼木監督にとっては、5人の選手交代という手札の使い方を考え直す良いきっかけをもらったと言えるかもしれませんね。

もちろん、「交代枠5人の定跡」が確立されていない状態で再開されたわけですから試行錯誤もあったはずです。ただ、そこに対する準備を入念に行ってきたからこそ、ここまでの交代策がより効果的に機能している側面もあると思います。

 ルール変更を生かす交代策にいち早く準備した指揮官と、それを支える選手層の厚みとマネジメント。これを生かしてリーグ奪還に突き進んでいって欲しいと思います。

・・・・とまぁ、長々と書いてしまいましたが、ここからが本番です。等々力での湘南戦についてたっぷり語っております。

ラインナップはこちらです。

■厳しく監視された右サイドと、呼吸が掴み切れなかった左サイド。ハーフコートマッチを展開しながら前半無得点に終わった左右の崩しを検証する。

■「リョウタにしかできないこと。『この選手のこれを見たいんだ』。それをどんどん出して欲しい」(鬼木監督)。山根視来の足元に届いた優しい「キャラメルパス」。試合前の指揮官が「インサイドハーフの大島僚太」に期待していたこととは?

■プロ初ゴールも、試合後の三笘薫が渋い表情を見せた理由。

■誰よりもピッチでボールが集まり続けた登里享平と、爆発的なスプリントでゴールを仕留めた山根視来。川崎の両サイドバックが見せた輝きと存在感。

■90分を16人で戦うために、必要になっていくこと。

■(※追記:7月28日)「基本的に、走る量はインサイドの2人の方が試合中は走っていると思ってます。自分があまりビルドアップに関与しない分、インサイドの選手がきつそうだったり、戻れなかったらリカバーするのが自分の仕事」(守田英正)。チームトップの走行距離を記録したアンカー・守田英正が意識している出力の使い分けとは?

■(※追記:7月29日)「去年は少しボールを持ちたいという意識が、やっていても強かった。今は(ボールを)失ってもいいけど、でもゴールに向かうよ。その意識がすごく強い」(田中碧)。アンカーの言葉から読み解くチームスタイルの変化。

以上、7つのポイントで冒頭部分も含めて全部で16000文字です(※7月28日、29日に追記しました)。どこよりも読み応えたっぷりのボリュームです。

なお、試合のプレビューはこちらです。答え合わせにどうぞ。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第7節・湘南ベルマーレ戦)

では、本文スタート!

ここから先は

14,166字 / 1画像

¥ 300

ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。