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新装再編版「スラムダンク」を語る〜第4巻:安西監督による仙道対策。そして仙道彰と遠藤保仁に見る共通点。

新装再編版「スラムダンク」を語る。今回は第4巻のレビューです。

タイトル:初試合・陵南戦2

#32  ゴリのいぬ間にから#49 バッシュの13話が収録。

表紙は湘北ベンチの一コマです。


 この表紙の考察からいきましょう。

ベンチで安西監督が桜木花道に向かってなにやら指示を出しています。周囲には彩子、石井、桑田の1年生、そして2年生の角田がいます。

 この陵南戦の後半の光景だと思われますが、具体的にはどの時間帯でしょうか。

 帯を外してカバーを見ると、花道の左隣には11番(流川)、右隣にはゴリ、安田、木暮がユニフォーム姿で並んでいます。角田の隣には潮崎が練習着姿でいます。この5人が出ていた時間帯ということは、流川が潮崎に変わって投入された、後半ラスト2分からの出来事だと特定できます。

 そして流川が潮崎に代わって入った直後の場面では、安西監督がタイムアウトを取らずに花道と流川に対して指示(ダブルチームでの仙道対策)を出しています。

 これを見た観客や陵南の部員から「湘北の監督が動いた!」、「やっぱり監督だったのか」などと驚かれていることから、前半からベンチでは特に指示を出していなかったと思われます。実際、メンバー交代の指示とかもゴリが出していましたからね。

 このとき、安西監督はタイムアウトを取らずに二人に指示を出している点を審判に注意されています。指示を受けた花道も流川もダブルチームの作戦には納得していなかった様子で、特に花道は「ちょ・・ちょっと待てぃ!!オヤジ・・・コラッ」と反発しています。

 物語では、再開までにスコアボードのコマを挟んで再開です。審判からの注意を受けた際、安西監督は「もう終わったよ」と言っていますが、実際には、そこであらためて正式にタイムアウトを申し出て、残り2分の作戦に関する指示を出していたのかもしません(練習試合なので、進行もさほど厳密ではなく、多少の融通も効いていたと思われます)。

 そう考えると、この4巻の表紙イラストは、仙道対策としてダブルチームをする作戦を、安西監督が桜木に対して説明している光景なのではないかと思っています。経験者の流川よりは初心者の花道にじっくり作戦を説明しますよね。

 もちろん、それ以降の時間帯でタイムアウトをとった可能性もあります。それらしい描写はありませんが、例えば残り1分での攻防で流川が3ポイントを決めて残り30秒になった後か、その後に安田がパスカットしてラインを割ったときとかも、可能性はないわけではありません。

 仙道対策を指示している描写のイラストであるのは、帯カバーのコメントもリンクしています。

帯カバーのコメント:「この1本・・・止めればまだ可能性ありですね」

 これは残り1分ちょっとで4点差。その1本を巡る時間帯での安西先生のコメントです。そして、こういう競った局面でのポイントとして「仙道君です」と述べていることの関係から、やはり残り2分で仙道対策を指示しているときの光景なのではないかと予想しております。

 では、本編のあれこれを。

ゴリがいない間は、花道と流川の意地の張り合いを中心に、この2人で見せ場を作っていく展開です。ゴリ不在で、まだリョータやミッチーもいません。花道が流川にパスを出さないので、木暮くんが活躍します。

 そして残り3分から医務室から戻ってきたゴリが復活。流川がベンチに。

 このときに桜木軍団が「ゴーリ!ゴーリ!」と応援するのだけど、桜木軍団の中でも高宮はゴリを熱烈に応援してますよね・笑。海南との試合でも後半から復帰したゴリの歌を自作して歌ってましたから。なんでそんなにゴリ推しなんだろう。ゴリ押しならぬ、ゴリ推し・・・いや、なんでもありません。復帰したゴリは、大車輪の活躍を見せて魚住を圧倒します。

 試合終盤は、逆転されてから本領を発揮し始めた天才・仙道彰と、仙道の一言でチームが落ち着きを取り戻した陵南の選手達。エースである仙道が、チームの精神的な支柱でもあることが伝わってきます。そして最後の最後まで冷静沈着にプレーし続けて、湘北に勝ち越します。

 なんでしょう。
僕はサッカーライターなので、プレイヤーのタイプをサッカー選手に例えてしまいますが、仙道は元・日本代表のヤットこと遠藤保仁と重なることがあるんですよ。

 試合全体を俯瞰して、緩急をつけながらゲームメークしたり、ペース配分するようなプレースタイルもそうですが、なにより自然体でマイペースな性格が重なります。いつも飄々としてますよね。

昔、NHKのプロフェッショナルで紹介されていましたが、遠藤保仁は、車の運転でもかなりのマイペースで、ガンバの練習場に向かう道では、時速30~40kmしか出さないため、後ろが渋滞してしまうこともしばしばだったほど(「ヤット渋滞」現象と呼ばれているそうです)。練習試合に寝坊で遅刻してきた仙道もそのぐらいマイペースな気がしますね。

 これは、ガンバ大阪時代に国内3冠を経験している阿部浩之(現在は川崎フロンターレ)が言っていたことなのですが、試合中にヤットさんが慌てないから、みんなも落ちついてプレーできる部分はあると。

チームをまとめたり、まわりを言葉で鼓舞したりという意味での強いキャプテンシーがあるわけではないですが、その人が一言だけ言えば場が落ち着く。周囲からの絶対的な信頼感があるタイプです。なんだか、わりと共通点があるような気がします。

 以上、仙道はヤットタイプ説でした・笑。

 なお、この仙道が落ち着かせたシーンで、あわてない仙道を見た彩子さんが落ち着いた取り口の小錦とダブらせますが、彩子さんってちょいちょい相撲ネタを使いますよね。相撲好きなのかしら。

 あとは気になって小ネタを。

ゴリが必殺ハエたたきで植草のシュートをブロックしたとき、桑田、石井、佐々岡の1年生トリオによるリアクション。その後、逆転したときには「俺も、あの5人の中の一人にならなくちゃ・・」と桑田がウズウズし出します。この描写を見ると、1年生の中では桑田が試合に早く絡んでいくのかな・・・と思いましたが、結局、最後まで絡みませんでしたね。

 あとは何と言っても、晴子さんの友達の藤井さん。
彼女は、花道が試合に出た途端、「しょ・・・湘北・・・ガンバレ!湘北!」と湘北の応援を声を出して始めているんですね。

 しかも試合の翌日では、晴子のあとで、花道に「感動しました・・・とっても・・・・」とおそるおそるながら、本人に感想を伝えています。友達その2こと松井さんによると、藤井さんは試合中に泣いてしまったのだとか。「藤井さん、花道に片思いしてる説」と言われた根拠になった場面です。

もしスラムダンクがバスケ漫画一直線ではなく、ラブコメ要素も盛り込んだ展開になっていたら、ここらへんの恋の行方も描かれていたかもしれませんね。

 4巻のレビューは以上です。読んでいただき、ありがとうございました。

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スラムダンクの新装再編版を語る。

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