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「どんなときも。どんな相手にも。」 (リーグ第11節・セレッソ大阪戦:5-2)

等々力競技場でのセレッソ大阪戦は5-2で勝利。

リーグ最多得点の首位・川崎フロンターレとリーグ最少失点の2位・セレッソ大阪の直接対決ということもあり、拮抗した展開とスコアが予想されてましたが、終わってみれば、3点差をつけての勝利。

「フロンターレ、強し!」を印象付けた勝ち方となりました。そして1シーズンにおける10連勝でJ1リーグ新記録の樹立です。

とはいえ試合内容としては、立ち上がりの先制される苦しい展開でした。その意味でターニングポイントになったのは、同点ゴールを決めた脇坂泰斗のフリーキックだったと思います。

 ゴール前にボールを合わせてくると読んでいたであろうセレッソのGKであるキム・ジンヒョンの逆を突いて、ニアサイドに直接決めました。

 サッカーのうまい選手には、共通点というか、必須な要素があります。それは「性格の悪さ」です。もちろん、プライベートではなく、あくまでもピッチ上で限った話ですが、相手を出し抜くための駆け引きの巧さ、相手の予想の裏をかくような演技力、そうした要素もサッカーでは時に求められます。

それと同時に、技術力も必要です。当たり前ですが、いくら相手の読みを外そうと、それを生かすだけの技術がなくては結果に結びつきませんから。

脇坂泰斗は、キックする直前で判断やコースを変えるプレーができるタイプです。逆にいうと、直前でプレーを変えられるので、相手の状態を蹴る戦前まで観察して、見極めた上で手を繰り出すこともできる。

例えば遠藤保仁がやっていたコロコロPKという技は、キックする寸前まで相手GKの動きを見た上で逆を突くことができるがゆえに成せる技でもあります。家長昭博のPKが上手いのも、同じ理由ですね。相手GKの動きを見てから蹴り分けるので、まず入ります。


「幽☆遊☆白書」や「HUNTER×HUNTER」の作者として知られる冨樫義博先生の作品に「レベルE」という漫画があるじゃないですか。

 宇宙一とも称される天才的な頭脳を持つ一方で、性格がひねくれている主人公であるドグマ星の王子。彼の行動に翻弄され続けてきたクラフト隊長は部下にこう言います。

「あいつの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ!奴は必ずその少し斜め上を行く!!」

 いかに相手の予想上回る・・・というか、その少し斜め上を行けるのか。それができるフットボーラーはだいたい「性格が悪い」ですし、「駆け引きがうまい」と同義でもあると言えますね。

同点ゴールを決めた脇坂泰斗のFKは、そんな彼の魅力が凝縮されていたプレーだったと思います。ここに関しては、本文でも詳しく語っておきました。

では、レビューの本題に。ラインナップはこちらです。

■「前から奪いに行っているけど、うまくはまらない時間帯も多かった」(小林悠)。なぜ立ち上がりは、セレッソの「思う壺」で進んだのか。与えてはいけなかった先制点と、ハマらなかった守備陣形。

■「狙おうと思いましたし、狙うしぐさを出しちゃいけないと思って」(脇坂泰斗)。相手の狙いの「少し斜め上」を行け!脇坂泰斗がピッチで見せた、駆け引きと高い技術力。

■「その形が2点目の山根選手が背後をとることにもつながった」(脇坂泰斗)。鉄壁のセレッソ守備陣に綻びを生み出した「斜めの揺さぶり」と「あそこからヤマネ」。コンパクトな陣形ゆえに効果抜群だった理由とは?

■「結果的に5点取れたのは、自分たちが最後まで攻撃的な姿勢を貫いたから」(小林悠)。「後半にまたクオリティが上がる。そういう相手のディフェンスは簡単ではない」(ロティーナ監督)。圧巻のミトマタイム、そしてチーム全員で戦うとは、どういうことなのか。

■「それがこういう結果につながっていると思います」(鬼木監督)。どんなときも、どんな相手にも。リーグ新記録樹立したチームが向かう先。

■(※追記:8月21日)「選択肢を二つ以上持っている中で、打てています。一つしかない中での選択ではなく、(選択肢を)複数持った中でのプレーは、相手も飛び込めない。そういったプレーが増えているのは良いかなと思います」(三笘薫)。公式戦5試合連続得点中。言語化能力の高いドリブラー・三笘薫が語る、川崎フロンターレだからこそ生きる、自分の良さ。

以上、6つのポイントで冒頭部分も含めると約12000文字ぐらいです。J1リーグ新記録の樹立となった10連勝記念に、どうぞお読みください。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第11節・セレッソ大阪戦)

では、スタート!

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